【 メ デ ィ ア 傍 見 】 25
「中国の現状に心痛める」 補遺
本欄の前回(24) 「『もてなしの国』 から 『混沌の国』 へ―中国の現状に心痛める」 に対して、Kさんから、
直ちに 「偏見ではないでしょうか」 という厳しい反論をいただいた。
Kさんの反論にうなずかれる読者も多いかと思うので、本人の許諾(匿名希望)を得て、以下に紹介します。
それに対する小生の再論、さらにKさんの再々論も併せて掲載します。
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@ Kさんから(前澤へ)
前澤猛さんの記事は個人的な偏見ではないでしょうか?
私は大陸駐在2年、その後6年間30回くらいビジネス出張し、その後も毎年2回以上旅行に行って、欧米諸国に比べ見劣りするものではありません。
米国・豪州の入出国は中国どころの比ではありませんよ!!! 又中国では税関は全く検査がないといってよいくらい。
つまり比較をきちんとしないと差別的偏見となります。
次に問題が起きた時ですが、これは日本の航空各社も似たようなものでしょう(乱気流とか悪天候とか)。
十分な説明が事前になされることは不可能。中国での問題は、こうしたことについて、航空各社または飛行場の担当者も情報を持っていないことです。
でもこれも、他の国と比べると決してひどい状況ではありません。
去年息子が、米国航空会社の勝手な遅延(説明なく)のせいで、自費でホテルを緊急に探し、翌日ようやく帰ってきました。
他人を非難するときには、充分比較をして下さい。しかも、その国全体を批判するなら、なおさらですよ!
A Kさんへ(前澤から)
貴兄の反論は、それなりに真実です。小生は体験した事実を紹介したのですが、偏見が覗いていたとしたら、その部分は除外していただきたいです。
ただ、小生はこれまで、数十回海外に出て、数十か国を回り、それなりに各国の状況は把握している積もりです。
中国は30年前の広州が初めてで、以来、主に個人旅行で各地を回り、今回は、2002年の雲南→ベトナム国境越えから10年ぶりの訪中です。
それだけに、この10年の間の中国の物心両面の変化を敏感に受け取りました。
国民一人ひとり(といっても主に中心の漢民族についてですが)の振る舞いが自然で、自信溢れる様になっていたのが、何よりの印象でした。
それに反して、行政部門(国有企業を含め)の管理に当たっている人々の硬直性が対照的に目立ちました。
最後、北京で缶詰になった一流ホテルが、外部との通信手段を一切シャットアウトし、マネジャーが 「あす空港で電話しろ」 と言った態度が典型的です。
しかし、5月にクロアチアなど旧ユーゴ諸国を回ったときには、頻繁な国境越えに2〜3時間かかったときもありましたし、
中国ばかりを批判するのは妥当ではないでしょう。とくに少数民族との軋轢を抱えた西域であれば、中国の苦衷をくみ上げるのが 「礼」 でしょう。
空模様も人為では操れません。
帰国から一週間経って、やっと血圧も下がった感じです。中国専門の友人は、小生の話に少しも驚いていないのですから、
「マンマンデー(慢慢的)」 大人気風は、まだ一部に残っているのでしょう。
2年前に四川を訪れた知人は、「最近状況が急変したのでしょうか」 といぶかしがっていましたが、そうではないでしょう。
かつての中国を振り返りつつ、先進国入りし、世界への影響力を増した当今の中国に対して高まった評価・期待とのギャップが、大きかったようです。
期待水準を勝手に上げた小生の一方的な失望落胆の感があります。
貸切りバスの運転手は礼儀正しく、運転は巧みで安全でした。これは特筆大書に値します。エアと空港にはひとつ希望があります。
運行掲示ボードには 「ナンバー」 の次に 「ボーディング時間」 が載り、次いで全く実体のない 「離陸予定時間」 で終ります。
それには 「正規離陸時間」 が現れません。直接職員に聞いたら、答えられませんでした。これは、旅行者にとって困惑の元です。
機会があったらお伝え願います。
Kさんの率直なご意見に感謝しつつ、妄言多謝。
B Kさんから(前澤へ)
ご返事ありがとうございました。いつもチェックさせて頂いています。参考になります。
現代日本社会では、特に中国に対して右も左も理性を失う論調が多いので、書かせてもらったまでです。
現代社会はどこでも複雑であり、「日本」 とくくって論議することも不可能(原発推進派もいれば私のように反対派もいる)。「中国」 も同じでしょう。
大江健三郎さんが述べる、想像力を欠いた議論が横行する現代日本社会が恐ろしいということです。
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前澤の所感
中国は人口も領土も大きく、そして政治・経済・社会体制も複雑だ。少数民族の自治区域に入れば、国境並みの検閲がある。
国内航空便では、空港でボタン電池に至るまで、一切の電池が検査の対象になる。一方、大都会では高層ビルが林立し、高級車が疾走する傍らで、
懐かしいリヤカーが悠然と引かれている。中国の現況を、こうだ、と簡単に括るわけにはいかない。
そして、本当の国際化を、長い眼で見守らなければならないだろう。
〈梅雨晴れやベンツとリヤカー並び行く 猛〉 (成都で)