朝日訴訟 1957年 (昭和32年)、当時、国立岡山療養所に入所していた原告が厚生大臣を相手に、 日本国憲法第25条に規定する健康で文化的な最低限度の生活を営む権利 (生存権) と生活保護法の内容について争った行政訴訟。原告の姓から朝日訴訟と称される。 原告は、日用品費月額600円といった当時の生活保護支給基準は、低すぎ、原告の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を侵害していると主張した。 第一審は請求認容(原告の勝訴)、第二審は、請求棄却 (原告の敗訴)。 上告審の途中で原告が死亡し、養子夫妻が訴訟を続けたことから、最高裁判所は、保護を受ける権利は相続できないとし、 本人の死亡により訴訟は終了したとの判決を下した。(最大判昭和42.5.24 民集21.5.1043)。 ただし、最高裁判所は、「なお、念のため」 として、憲法25条1項は、 国民に健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、 直接個々の国民に具体的権利を付与したものではなく、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、 厚生大臣の合目的的な裁量に委ねられている旨判断した。 違法 法律に違反すること。行為が社会的に不相当であるという範囲を越えて、実質的に法秩序に反し、何らかの不利益な法的効果を伴うもの。 違憲 成文憲法の規定に違反すること。 可罰的違法性 ある行為が、一見、犯罪の構成要件を満たし、犯罪が成立するようにみえるが、その行為に、その犯罪の構成要件が要求する程度の強い違法性がないため、 犯罪の構成要件を満たさず、犯罪が成立しないこと。 例 未使用のコピー用紙1枚を盗むことは、窃盗罪の可罰的違法性に欠け、窃盗罪は成立しない。 仮処分 仮差押えと並ぶ保全手続の一種。なお、保全手続とは、権利を保護するために権利を主張する者に暫定的に一定の権能や地位を認める手続。 仮処分は、係争物に関する仮処分と、仮の地位を定める仮処分に分かれる。 ・係争物に関する仮処分 →金銭債権以外の特定物の給付請求権の保全を目的とする 例:処分禁止の仮処分 (不動産の引渡請求権の実現を確保する場合) ・仮の地位を定める仮処分 →権利関係について現実に生じている著しい損害を避け、権利関係を暫定的に定めるもの 例:賃金仮払いの仮処分 (不当解雇で解雇無効確認請求をする場合に、暫定的に賃金支払いを確保する場合) 棄却 (※類語−却下) 裁判所が、申立てを理由無しとしてしりぞける裁判。 却下 裁判所が、申立てを不適法であるとして、理由の有無を判断しないとしてしりぞける裁判。 禁錮 刑法の規定する自由刑(受刑者の社会生活の自由を奪って監獄に拘束する刑)の一種。 監獄に受刑者を拘束して執行する。 懲役と異なり、定役 (作業) を科されることなく、請願により作業に従事するだけ。 係属 訴訟が特定の裁判所で取り扱い中であること。 控訴 第一審の終局判決に対する上訴 (未確定の裁判に対して上級裁判所にその再審査を求める不服申立制度)。 民事訴訟:第一審 地方裁判所 →控訴審 高等裁判所 第一審 簡易裁判所 →控訴審 地方裁判所 刑事訴訟:第一審 地方裁判所 →控訴審 高等裁判所 第一審 簡易裁判所 →控訴審 高等裁判所 公訴 (類語 起訴) 刑事事件について、検察官が裁判所に起訴状を提出して裁判を求めること。 控訴審 第一審判決に対する上訴を審判する審級である第二審の裁判所 口頭弁論 民事訴訟において、その裁判を扱っている裁判所の面前で口頭で行われる当事者の弁論 公判 刑事訴訟において、裁判所、検察官、被告人 (弁護人) が訴訟行為を行うために法廷で行われる手続。 公判における訴訟行為を行うために設定される期日のことを公判期日、公判のために開かれる法廷のことを公判廷という。 拘留 自由刑 (受刑者の身体を拘束する刑) の一種であり、受刑者を刑事施設に拘置する刑罰。同音の勾留とは別である。 1日以上30日未満 (つまり最長29日) の範囲で科される。同種の刑罰である禁錮より短期間である。身柄拘束を伴うが、刑法の規定上は罰金より軽い刑である。 懲役と違って刑務作業は課されないが、禁錮と同様、受刑者が希望すれば刑務作業に就くことができる。 勾留 被疑者もしくは被告人を刑事施設に拘禁する旨の裁判官もしくは裁判所の裁判、または、当該決定に基づき被疑者もしくは被告人を拘禁すること。 報道機関の中には、拘置と表現するものもある。 国選弁護 被告人及び一定の要件を満たす被疑者は、貧困などの理由で弁護人を選任することができないとき、 裁判所は弁護人の選任を請求する権利があるが (憲法37条3項、刑事訴訟法36条、37条の2)、その際、裁判所が選任する弁護人を国選弁護人といい、 国選弁護人による弁護活動一般を国選弁護という。被疑者が直接選任する私選弁護の場合と、役割は同じである。 裁可 明治憲法下において、帝国議会が議決 (協賛) した法律案または予算を承認する天皇の行為。法律または予算は、 この天皇の承認の行為によって確定的に成立した。天皇が統治権の総覧者であったこと (明治憲法6条参照) の1つの現れである。 そのほか、天皇を補弼 (天皇の大権行使につき助言すること) する機関が提出した案に対する天皇の承認も、一般に裁可と呼ばれていた。 現行憲法下においては、国会の議決によって法律または予算は確定的に成立する (日本国憲法59条1項) のであって、天皇に裁可権はない。 裁量 自分の意見によって判断し処置すること。法律用語としては、法律で定められた、行政権の一定の範囲内での判断、あるいは行為の選択の自由 (行政裁量)。 執行猶予 刑の言渡しはするが、情状 (刑の量定や刑事訴追の要否の判断に際し考慮される諸事情) によって刑の執行を一定期間猶予し、 猶予期間を無事経過したときは刑罰権を消滅させることとする制度。施設収容を避け短期自由刑に伴う弊害を防止し、 猶予期間内に再犯すれば刑を執行するという威嚇の下に再犯を防止し、猶予期間を無事経過したときは刑の言渡しを消滅させて、 前科に伴う不利益をなくし更生に役立たせることを目的とする。 司法修習生 日本において、司法試験合格後に法曹資格を得るために必要な裁判所法に定められた研修を司法修習といい、司法修習を行っている者を司法修習生と呼ぶ。 司法試験合格者は、最高裁判所に司法修習生として採用され、公務員に準じた身分で司法修習を行う。 司法修習は裁判官・検察官・弁護士のいずれを志望する場合であっても、原則として同一のカリキュラムに沿って行い、 修了後、裁判官であれば判事補 (又は簡易裁判所判事) として任官、検察官であれば検事 (2級) として任官(これを 「任検」 と呼ぶ。)、 弁護士であれば弁護士会への登録を行い、法曹として活動することとなる (もちろん、研究者等、それ以外の進路を選ぶ者もいる)。 上告 裁判過程における上訴の一つ。日本において、第二審の終局判決若しくは高等裁判所が第一審としてした終局判決 (原判決) に対して不服がある場合、 または、飛越上告の合意がある場合において第一審のした終局判決に対して不服がある場合に、 上級の裁判所に対し、原判決の取消し又は変更を求める申立てをいう。 上告審となる裁判所は、原則として最高裁判所であるが、民事訴訟において第一審の裁判所が簡易裁判所の場合、高等裁判所が審理を行う。 上申書 自分より地位が上の者に対する意見を書いた書面。 生存権 人間が人たるに値する生活に必要な一定の待遇を要求する権利。1919年の現在のドイツのヴァイマル憲法が生存権の具現化の先駆けとされる。 日本国憲法も25条において、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」 として、生存権を保障している。 セーフティーネット 経済的な危機に陥っても、最低限の安全を保障してくれる社会的な制度や対策。 訴訟 紛争の当事者以外の第三者を関与させ、その判断を仰ぐことで紛争を解決すること、またはそのための手続のこと。 反義語に自力救済がある。現代においては、国家の司法権の行使によって、その権力を背景に紛争を強制的に解決するための手続のことを訴訟といい、 調停、仲裁、和解などと区別される。さらに狭い意味では広義の訴訟のうち判決手続のことのみを訴訟とよび、強制執行手続等と区別される。 懲役 刑法の規定する自由型の一種で、監獄に拘束して定役に服させる。 提訴 裁判所に訴状を提出し,訴訟を提起すること。主に民事裁判を起こすことさす。 刑事裁判の場合は起訴という。 嫡出子 法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子。 当番弁護 弁護士会に毎日、当番の弁護士を配置し、身体を拘束されている (=警察署・拘置所に捕まっている) 被疑者・被告人やその家族から接見の依頼があった場合に、 1回だけ無料で接見に赴き、被疑者・被告人の相談に応ずる制度。 被疑者 犯罪の嫌疑があるとして捜査の対象になっている者。 被告人 犯罪の嫌疑があるとして起訴され裁判にかけられている者。 非嫡出子 法律上の婚姻関係にない男女を父母として生まれた子。 保釈 保証金を納付することを条件として、勾留中の被告人を釈放すること。