ニューヨークより、弁護士の猿田佐世です。


目次  2007.7.19

国際刑事裁判所への日本政府加入書の寄託


  NY時間 7月17日午後4時半、NYの国連本部で、大島賢三国際連合日本政府代表部大使が、Annebeth Rosenboom 国連法務局条約課長に、 加入書を渡しました。国連のミシェル法律顧問が立ち会いました。
左の大島大使から右の女性、Annebeth Rosenboom 国連法務局条約課長に、加入書を渡しているところです。 真ん中の立ち会いが、国連のミッシェル法律顧問です。
  寄託後、記者からの質問に対しての大島大使の発言は概ね以下の通りでした (文責:猿田)。

  「(日本の批准に時間がかかったことについて) 少し時間がかかったが、日本は、当初からローマ規定作成当初から ICCに対しては積極的に関与してきた。」
  「日本の批准でアジアの国々にいい影響が与えられるとよい」
  「(アメリカは入っていないがとの質問に対して) アメリカはアメリカ自身で独自の判断をしている。」
  「本年12月に行われる ICC裁判官選挙で、日本人をぜひ選出したい。」

  ミシェル法律顧問が大島大使と握手をしながら、「日本は少し時間がかかったけど、日本みたいに批准までに時間をかけて国内法を整備する国と、 全く何も国内整備をしないですぐ批准する国とあるけど、日本はしっかりと用意をする国だからこのくらい時間がかかったんだね。」 と、 仕方ないね、というか、日本はしっかり準備をするちゃんとした国だね、というのか、少しばかり皮肉なのか、、、自分で納得するように? 話をしていたのが印象的でした。

  会場にはNGOからも、CICC (Coalition for the International Criminal Court) の方、PGA (Parliamentarians for Global Action) の方などがいらっしゃっており、 記者もちゃんとそろっており、狭い署名室 (「signature」 という部屋) が、人でいっぱいでした。 大島大使は、こんなに人が集まっているとは思っていなかったようで、びっくりしておられました。
  大島大使や国連の方々も、NGOの力も大きく今回の発展に寄与をしたと言っていたように記憶しています。

  近年、国連と国際刑事裁判所をつなぐオフィスが国連に出来 (Liaison Office to the United Office)、 そこの長のSocorro Flores Lieraさんという方が来ておられて、とても感慨深そうにしておられたのも、印象的でした。

  もっとも、その場にいて一番うれしそうにしていたのは、やはりずっと頑張ってきたNGOの方々でした! 私も、遠い昔、アムネスティ日本の国際人権法チームで、 「国際刑事裁判所って何?」 という冊子を作ったことを思い出しました。また、イラクやアフガンの国際民衆法廷の活動も、 少しくらいは今日の日を迎えるのに役立ったかなあ、と思ったりしていました。

  NYはやっぱり、国際関係に取り組むには絶好の環境ですね。こういう重大な局面を目撃することが、 (各方面にお手伝いいただき、ご迷惑もおかけしながらですが) 頻繁に出来ますので。 これからが勝負の、国連のPBC (Peace Building Commission:世界の紛争国の紛争後の処理が適切になされるように提言・調整を行う機関) の議長国に日本が選出されたその委員会も、先日偶然目撃することが出来ましたし。
  日本の国連でのプレゼンスが、平和と、そして少しでも多くの人の人権状況改善のために役立ちますように!

  もし、みなさまも、NYで何か、私に出来ることがあればご連絡ください。

猿田


CICCのHP http://www.iccnow.org/

外務省ホームページより
*「国際刑事裁判所(ICC)に関するローマ規程」の加入書の寄託について
  http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/h19/7/1174498_808.html

1 我が国政府は、「国際刑事裁判所に関するローマ規程」の加入書を7日17日(火曜日)(日本時間18日(水曜日))、国際連合本部(ニューヨーク)において、 我が方大島賢三国際連合日本政府代表部大使より国際連合事務総長宛に寄託した。我が国は、本年10月1日より正式にこの規程の加盟国となる予定である。 我が国による ICCへの加盟は、我が国が掲げる「価値の外交」の一環である国際社会における「法の支配」の推進に寄与するとの観点から有意義である。 なお、本件寄託日である7月17日は、1998年の同日に同規程が作成されたことを記念し、「国際司法の日」とされている。

2 ICCは、集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪等の国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した個人を国際法に基づき訴追・ 処罰するための初の常設国際刑事法廷である。

3 我が国はICC設立当初より、重大な犯罪行為の撲滅と予防、「法の支配」の徹底のため、ICCの活動を一貫して支持してきた。 我が国は、ICCへの加盟後、財政的貢献のみならず、 日本人裁判官をはじめとする日本人職員の輩出を通じた人的貢献等を通じて ICCの活動を一層積極的に支持していく考えである。 その一環として、先般、本年12月に行われるICC裁判官補欠選挙への候補者として、 我が国の人権・ジェンダー問題の第一人者である齋賀富美子(さいが ふみこ)人権担当大使・国連女子差別撤廃委員会委員を指名することを決定し、 その当選に向け活動を行っている。

4 同規程は、2002年7月1日に効力が発生しており、7月16日現在、104か国が締結している