猿田佐世のNYだより+ワシントンDC


目次  2009.10.3

■■■首都ワシントンで、日本の政権交代を体験して■■■


  8月にNYからアメリカの首都ワシントンDCに引っ越した。NY便りもまだ書きためたものがあるため随時掲載したいが、これからワシントンの情報も書いていきたい。

  ワシントンは、NYとは全然違って緑豊かなこじんまりした町。政治の町であり、ここで米国政治のバトルが行われている。 この町のキーワードは 「ネットワーキング」。どこに行っても名刺交換。ワシントンに来て1ヶ月だが、既にNYにいた2年間と同じくらい名刺を交換した気がする。

  日本の政権交代をワシントンから見たのは、とても貴重な体験だった。ここには、米国政府はもちろんのこと、 その政府のブレインとなっているシンクタンクが山のようにあるが、各シンクタンクが、日本の選挙後、 次々 「日本、政権交代! 日米関係どうなる?」 というシンポジウムを開催した。



連邦議会議事堂……国民保険で紛糾中

  ■日本報道陣が頼っている米国政府情報
  日本関係のイベントは人が集まらなくなったと聞くが、このときばかりは 100人、200人もの人が、連日、どのイベントにも集まっていた。 いくつか参加したが、当然、パネリストは今までの対日外交を担当してきた人たち (でなきゃ、語るほど対日外交について知識がない)。 つまりパネリストは、自民党を得意としてきて、日本に伝わってくる 「アメリカ政府の声」 を作ってきた人たち (「憲法変えろ」 とか、 「イラクに自衛隊を派兵せよ」 とか言ってきた人たち。)。 基本的に 「対米政策について不安がある」 「今までと同じ路線を採ると信じるしかない」 「情報がない」 といったところか。「期待したい」 という声もあった。

  そりゃ不安に決まっている、これまであなた方がつきあってきた相手とは違う相手 (であるはずの相手) なんだから。 …しかし、話を聞いていると、「大変なことになってしまった。」 という 「懸念」 ではなく、「情報がなくてわからん。」 という 「懸念」 が大きそうである。
  …しかし、このパネリストの 「懸念発言」 が、数時間後、日本の新聞を飾る。

  とある日本のテレビ局が、ネオコンの正に牙城であるシンクタンクのシンポ会場で 「鳩山政権になって日米関係はどうなると思いますか」 という投票アンケートをやっていた (回答者はボードにシールを貼る。良くなる・悪くなるの回答欄あり。両者の真ん中にも貼れる)。
  しかし、この会場でやれば 「悪くなる」 という回答が多くなるに決まっている (実際、私が見た時点ではそうなっていた。)。 ここでやるなら、バランスをとるため、私の働いているヒューマン・ライツ・ウォッチあたりでも聞いてくれ、と思ったが、言う機会を逃した。 でも、これまた、これが日本で 「アメリカの声」 として堂々と報道されるのである。

  そんなシンポジウムからの発言やアンケート調査によって、「米国政府関係者から懸念が提示!!!」 などと報道がなされ、 日本がビビり、動かされるのだとすると…、こんな私でも、ワシントンにいて何かできるかもしれない、と思う。


ホワイトハウス

  ■わずかな人によって決められる対日外交
  私自身はまだワシントン初心者だが、ワシントン在住の日本人は口を揃えて、「ごくわずかな人によって対日政策が決定されている」 と話す。 確かに、シンポジウムに行っても日米関係の実質・具体的な政策の話ができるのは5人くらい、多くても10人くらい。 その10人で、アメリカの対日政策を決めてきただけなら、アメリカが勝手にやることだから構わないけれど、その5人だか10人だかによって、 実際には日本の国内政治もほぼ動かされてきたということを考えると、本当に許しがたい。
  「アーミテージ・レポートは、ほぼ全て実現させた。憲法改正だけが残った課題だが。」
  という言葉などを聴くと大変いらいらする。(アーミテージ・レポートは前ブッシュ政権における対日政策の要となる文章)。

  ■さて、ワシントン。
  あと2年間滞在予定のワシントンで、何がどこまでできるか、どこまで食い込めるか、全く分からないが、あいもかわらず、ジタバタしてみようと思う。
  これをお読みくださった方。具体的に、ワシントンで私にお手伝いできることがあれば、いつでもアドバイスください!



  半年ぶりに帰国しました。アメリカ大統領選挙の体験や人種差別の状況等について、講演の機会をいただきました。 写真やオバマ選挙グッズなどもご覧いただきながら、生き生きした現場の様子をお伝えしたく、楽しみにしています。 大阪になりますが、是非皆様おいでください。
  私の回だけではなく他の回も、アムネスティのお仲間 (軽々しくお呼びしてすみません) の方の大変興味深いテーマです。 そちらも是非どうぞ。
猿田

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第20回 城北・東人権啓発連続講座
〜 人権をめぐる現状と課題 〜
テーマ:世界の人権
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 ※ 台風のため中止になりました。
1.肌感覚でのアメリカ民主主義と人権意識
      〜米国大統領選挙を体験して〜
講師:猿田 佐世さん(弁護士)
日時:10月8日(木)午後6時30分〜
場所:城東会館 (定員200名:当日先着順)
所在地 大阪市城東区中央3-5-11

2.人権問題としての死刑
講師:田森洋樹さん
   (アムネスティ・インターナショナル日本 死刑廃止ネットワークセンター)
日時:10月15日(木)午後6時30分〜
場所:旭区民センター 小ホール (定員180名:当日先着順)
所在地 大阪市旭区中宮1-11-14

3.イスラエルと被占領パレスチナ地域における人権
講師:野間伸次(アムネスティ・インターナショナル日本 ひろしまグループ)
日時:10月22日(木) 午後6時30分〜
場所:旭区民センター 小ホール (定員180名:当日先着順)
所在地 大阪市旭区中宮1-11-14

4.人権ってなんだろう?
講師:イーデス ハンソンさん
   (アムネスティ・インターナショナル日本支部 特別顧問)
日時:10月29日(木) 午後6時30分〜
所在地 城東会館 (定員200名:当日先着順)
大阪市城東区中央3-5-11

    (以上、開場はいずれも開演の30分前)

講師プロフィール

第1講:猿田佐世さん
弁護士 (日本および米国NY州登録)
大学時代からアムネスティ等で人権活動を開始。タンザニアの難民キャンプでの救援活動などを経て、弁護士登録後は、名古屋刑務所事件、 イラク 「人質」 事件などを取扱い、また国民投票法等の憲法問題についても積極的に発言。2007年から米国に留学中。 米国では2008年大統領選挙の際オバマ陣営ボランティアに参加。

第2講:田森洋樹さん
(アムネスティ・インターナショナル日本・死刑廃止ネットワークセンター)
1950年生まれ
明治大学政治経済学部卒業。
奈良県庁職員となり、2009年3月退職。
1990年より、死刑廃止ネットワークセンターのメンバーとして死刑廃止運動に携わる。 他に、陪審制度を復活する会、当番弁護士を支援し司法への市民参加をすすめる会・奈良、東住吉えん罪事件を考える会、 Ocean−被害者と加害者との出会いを考える会−、等の運動に参加。

第3講:野間伸次さん
1962年生まれ。1988年大阪大学大学院文学研究科前期課程修了。同年、家業を継ぐために広島に戻った後、アムネスティに入会。 獄中にいたイスラエルの核兵器の内部告発者、モルデハイ・バヌヌ氏と1999年から文通を始める。2004年の出所時には現地に行き、海外からの支援者と共に出迎えた。
現在、ひろしまグループ運営担当。同時に日本支部の国際協議委員を務め、イスラエル/被占領パレスチナ地域の国別行動担当。

第4講:イーデス ハンソンさん
1939年 北インド生まれ。父はメソジストの米国宣教師。1949年米国へ。
1960年 大阪大学の交換教授だった兄と来日。
1979年 アムネスティ・インターナショナル日本支部会員。
1981年  日本支部副支部長、1986年日本支部長を歴任。
2001年 特別顧問に就任。
来日以来、大阪弁の流暢な日本語を駆使し、マスコミで活躍中。和歌山県在住。

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主催:世界人権宣言大阪東地区連絡会議
連絡先:旭区人権啓発推進会 (TEL 957-9743)
事務局:大阪市旭区大宮1-1-17 (旭区役所 人権生涯学習担当)
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