島弁日記(8)〜巡回相談活動をなぜ続けられるか〜
今回の法律相談会:神津島村 H20.5. 9(金) 10:00〜17:00
次回の法律相談会:御蔵島村 H20.6.13(金) 13:00〜17:00
八丈町 H20.6.15(日) 9:00〜16:00
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
前日より (二日酔い以外で) めずらしく体調を崩してしまい、早く寝たけど朝起きても具合が悪く、神津島行きお休みしてしまいました。
で、相談会が中止になったかというと、そうではありません。
仲間の弁護士、司法書士にお任せしました。1人で島に行っているかのような雰囲気でこの日記を続けていますが、実は仲間がいます。
僕が初めて離島で法律相談会を行ったのは平成13年2月、小笠原村においてです。そのときより、弁護士、司法書士、税理士中心のグループで活動を行っています。
それぞれの専門分野は異なりますが、いずれの分野の知識も必要となる相談は結構あります。
典型的には相続問題。遺産分割協議の相談を弁護士が受ける場合でも、不動産の名義を誰にするか、その費用はいくらかかるか、また相続税はいくらなのかなど、
隣に司法書士や税理士がいると助かることがよくあります。相談者にとって、一度の機会で様々な相談をすることができるので、ワンストップサービスなんて言われます。
同じ弁護士同士でも、経験や考え方は様々ですから、相談者に伝える解決方針に悩む場合、やはり頼りになります。
我々は一応、特定非営利活動法人司法過疎サポートネットワークというNPOを立ち上げています。
相談活動に参加したことのある弁護士、司法書士、税理士が主な会員です。
まず事前に各島の町役場、村役場にご連絡し、相談会開催の希望日をお伝えし、広報と場所の提供をお願いする。
広報とは、各町村の広報誌と防災無線です。場所は島によって異なりますが、開発総合センターや公民館等公共施設をお借りしています。
その後、我々の中で参加を募り、弁護士、司法書士、税理士合わせて5、6名で訪問し、無料法律税金相談会を開催する。これが通常の流れです。
今回のようなアクシデントがなければ僕はほぼ毎月この相談会に参加していますから、冷静に考えればその労力と費用は相当なもの。
特に費用は、小笠原村など渡航費、宿泊費の援助をいただいているところもありますが、たいていは自費です。
それなのになぜ続けられるか。それは、一つはアウトドアが好きであるという趣味を兼ねているから。
そしてもう一つは、意識を同じくする仲間がいるからです。これからも楽しくこの地道な活動を続けていきます。
2008.5.22
島弁日記(7)〜新島 コーガ石〜
今回の法律相談会:新島村 H20.4.19(土) 10:00〜17:00 (新島)
12:00〜15:30 (式根島)
次回の法律相談会:神津島村 H20.5.9(金) 10:00〜17:00
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
相談会の翌日、海で泳ぐにはまだ寒いということで、同行した仲間とガラス作り体験をしてきました。
新島には世界的にも珍しいコーガ石 (抗火石) があります。「何それ?」 と言う人でも見たことがあると思われるのが、
渋谷駅のモヤイ像 (「モアイ」 ではなく 「モヤイ」)。あれは昭和55年に新島村が渋谷区に寄贈したものなんだそうです。
スポンジのように穴が開いた軽石で、加工しやすく意外と丈夫。渋谷駅のモヤイ像は古いせいか排気ガスのせいか黒いですが、現地のコーガ石は白。
サーフィンのメッカ羽伏浦の白浜のイメージです。
羽伏浦の砂を手に取ってよく見ると、白浜というよりガラスの砂であることが分かります。
コーガ石は主成分が77%の硅酸から成る黒雲母流紋岩で、この硅酸というのがガラスの原料。
そのため、コーガ石は加工しやすい木材として利用できるだけでなく、溶かせばガラスを作ることもできるわけです。
新島ガラスの自然な色は、透明ではなくオリーブ色です。
見ているだけで熱く感じる溶解炉の中から、どろどろの真っ赤なガラスをパイプで巻き取り、息を吹き込んで空洞を作り、さらにガラスを上塗り補強して息を吹き込む。
ガラス作りと聞いて誰もが頭に思い浮かぶあれです。底を整えたり、コップの口の部分を広げたり、少々失敗してもあたため直して調整できるのがおもしろい。
とはいいつつ、作業 (の大半) をインストラクターに補助してもらいながら、わずか10分足らずで思い通りのコップができました。
作成したコップは一晩除冷炉に入れてもらい、後日手元へ。思いのほかよい出来で実用になります。
今回はコップ1点制作のコースでしたが、予想以上に楽しかったので今度は他のものも作ってみたいと思いました。
2008.5.1
島弁日記(6)〜「裁判ざた」〜
今回の法律相談会:新島村 H20.4.19(土) 10:00〜17:00 (新島)
12:00〜15:30 (式根島)
次回の法律相談会:新島村 神津島村 H20.5.9(金) 10:00〜17:00
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
弁護士は裁判を起こす仕事。これが一般の方のイメージかもしれませんが、半分当たっていて半分はずれています。
たしかに訴訟活動は一つの重要な仕事ですが、弁護士に依頼すれば何でも裁判になるというわけではありません。
裁判に至らずとも相手方との間で話し合いが成立する事件はいくらでもありますし、早期解決という意味で基本的にはそれを目指します。
ただし、こちらがそう思っていても、相手方にしてみれば、いきなり弁護士から通知がくれば 「裁判ざたにする気なのか」 と不満を持つ場合もあります。
弁護士が受任挨拶を出す際には、まずこちらの主張をきっちり書いた内容証明郵便を送ることが多いのでなおさらです。
島の相談ではこの点にとても気を遣います。
そもそも、匿名性の低い小さなコミュニティの中で、相談者自体が周りの目を気にして相談場所に訪れることに抵抗を感じる場合があります。
そのため、希望があればこちらから自宅に出向いて相談を受けています。
外で必要以上に目立たないために、また相談者に気軽に話をしてもらうために、僕はいつもスーツを着ていません (内地での通常業務は別ですよ!)。
島でスーツを着ている人自体が少ないですし、弁護士に対する近寄りがたきイメージ、「敷居」みたいなものをできるだけ取り除きたいと思うからです。
ただし、事件受任することになったが紛争の相手方が同じ島に住む人の場合、どのように交渉を進めていくかは依頼者とよく話し合わねばなりません。
会いたくなくても外を歩けば顔を合わせてしまう環境にあるわけですから、例えば強気な内容証明郵便の発送を依頼者が望まないことも多いからです。
司法過疎地では当事者いずれも弁護士へのアクセスに障害があるのですから、
当事者の一方に弁護士が就くことで崩れる当事者間のバランスに気をつけていないと、かえって解決に支障をきたすということもありえます。
「相手方ともめないようにしてください」。弁護士が交渉する上で依頼者からのこのようなリクエストは結構難しいのですが、
文書の言葉遣いを柔らかくするとか、あえて内容証明郵便を利用しないとか、ときには相手方に面会を求めるとか、いろいろ試行錯誤です。
もちろん事案によってはやむを得ない場合もありますが、少なくとも島に裁判所がない以上、「裁判ざた」 を本当に裁判にまでしない努力も必要だと考えています。
2008.4.24
島弁日記(5)〜帰島後の三宅島〜
今回の法律相談会:三宅村 H20.3.21(金)09:00〜17:00
次回の法律相談会:新島村 H20.4.19(土)10:00〜17:00(新島)
12:00〜15:30(式根島)
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
三宅島に上陸するときにはガスマスクを携帯することになっています (船が出発する竹芝桟橋で2520円で購入できます)。
三宅島の火山ガス放出は現在も続いており、島内では定期的に火山ガス情報が防災無線で流れ、
一週道路沿いにはその場の火山ガスのレベルを示す回転灯 (濃度に応じた色の回転灯が光る) が設置されています。
こんなこと聞くと驚いてしまう人がいるかもしれませんが、いざ行ってみると、他の島と変わらずのどかな雰囲気です。
僕自身、まだ一度もガスマスクを使ったことがありません。ガスの噴出量や風向きによっては硫黄臭を感じることもありますが。
雄山の大噴火により全島民が島外に避難することになったのは平成12年の9月1日。
それから4年半を経て平成17年2月1日に避難指示解除となりましたが、当初は 「火山ガスとの共存」、「帰島は村民個人の自己責任に基づく判断」 などと言われ、
本当に帰れるのか疑わずにいられませんでした。あれから3年。人口は統計上2900人と避難前の75%まで回復し、道路沿いには着々と新しい家や店ができています。
もともと三宅島はバードアイランドと呼ばれるほど野鳥の種類と数が豊富でしたが、今でも騒々しいほどに野鳥がさえずっています。
ダイビング客や釣り客も多く訪れています。
と、災害復興は順調のようにみえますが、実はまだまだ悩みを抱える島民はいます。特に難しいのが土地に関する問題でしょうか。
三宅島の土地はもともと地番がなく地図も整備されておらず、登記簿があっても所在不明の土地があったり、
国土調査により筆界未定となってしまった土地があったり、これまでの噴火 (昭和37年、58年)の際には流れ出した溶岩により土地が埋没したりとかなり複雑です。
住んでいたときはそれほど気にならなかったかもしれません。
それが、今回長期避難生活により建物が劣化し、また泥流被害を受けて全半壊し (今回の噴火では溶岩の流出はありませんでしたが、
山の表面に積もった火山灰が雨水等により泥流となってふもとの建物を押しつぶす被害がありました)、
建て替えの必要が生じたときなどに、これら眠っていた問題が浮上しているのです。
年間を通じてガスが流れやすいということで 「高濃度地区」 として今でも居住が禁止されている地域があります。
東の三池地区にあった村役場もそうであり、現在は南西の阿古地区の学校施設を仮庁舎として使用しています。
今回の相談会でもここをお借りしました。長期間帰ることが許されなかった 「島」 での、
現在も火山ガスが放出し居住禁止地区も存在する 「完全には終息していない災害」。帰島後の三宅島に学ぶべき事は多いです。
2008.4.7
島弁日記(4)〜小笠原の時間的距離〜
今回の法律相談会:小笠原村 H20.2.7(木) 19:00〜21:00
2.8(金) 09:00〜17:00
次回の法律相談会:三宅村 H20.3.21(金) 13:00〜17:00
3.22(土) 10:00〜17:00予定
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
東京・浜松町の竹芝桟橋から25時間半の船旅、これが小笠原へ行く唯一の交通手段です。
船旅というと何となく優雅なイメージですが・・・揺れるときは揺れるんです! 今回の帰りの船は、前線の影響で北東の風が強く久々に経験する大揺れ。
ジェットコースターよりも重い強制的縦揺れと横揺れが一晩中です。船が波に当たる音もドガーン、ドガーンと響き眠れたもんじゃありません。
僕は船に強い方で酔い止めも飲まないのですが、夜が明けても続く大揺れ。
起きあがってトイレに行くことすらおっくうで、何もすることもできず、この日記は横になったまま携帯のテキストメモ使って辛うじて書いています。
東京―小笠原間を結ぶ 「おがさわら丸」 (略称 「おが丸」) は1000人乗りの大型船で、約1週間に一度就航する定期船です。
途中の寄港地はありません。例えば今回は、水曜日の午前10時に東京都出て、翌、木曜日の午前11時半に小笠原・父島二見港到着。
そのまま船は金・土と停泊し、日曜日の午後2時に出発して翌月曜日の午後3時半に東京に到着する。
これが小笠原訪問の最短ルートでワンシップと言います。行き帰りで船中2泊、現地3泊の合計5泊6日、途中で帰ることはできません。
島の人が内地に行くときはさらに日数が必要です。午後3時半に東京に着いたおが丸は、大抵の場合翌日午前10時には再び小笠原に向けて出航する。
これでは日中の滞在時間がほとんどありませんから、普通は一度船を見送ることになります。すなわち、9泊10日。島から出張するのも容易ではなさそうです。
数年前までTSL (テクノスーパーライナー) という高速船就航が国家プロジェクトで進められてきましたが、原油高その他の理由から、
船が完成したにもかかわらず一度も就航することなく計画が白紙になってしまいました。
長年議論されている飛行場計画が再浮上する可能性はありますが、いずれにしろ当面はおが丸のままです。
僕にとって島への巡回法律相談は平成13年2月に訪問した小笠原から始まりました。
今回でおそらく17回目。25時間半という時間的距離で言えば、日本どころか世界各国よりも遠い場所です。
究極の場所であるからこそ通いたいと思うし、地道に通い続けることでしか解決できない島の人々の様々な法律問題があります。
結局、揺れに揺れたせいで到着が大幅に遅れ、26時間半の船旅となりました・・・
2008.2.14
島弁日記(3)〜裁判所〜
今回の法律相談会:大島町 H20.1.18(日) 10:00〜17:00
1.19(土) 09:00〜12:00
次回の法律相談会:小笠原村 H20.2.7(木) 19:00〜21:00
2.8(金) 09:00〜17:00
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
伊豆諸島・小笠原には地方裁判所がありません。大島・新島・八丈島に家庭裁判所の出張所と簡易裁判所があるだけです。
では島の人々が裁判所を利用するとなるとどこに行くか? それは東京のど真ん中、霞ヶ関の本庁となります。
多くの方は 「自分は裁判所に行くことはないから関係ない」 と思われるかもしれません。
でも、人が社会の中で他人に接しながら生活する以上、思わぬきっかけで裁判所が必要になります。
例えば、他人にお金を貸したがなかなか返してもらえないとか、他人との間で事故を起こして損害賠償を求められたりとか、
亡くなった親が自筆の遺言を残していて家庭裁判所の検認手続が必要だったりとか、離婚することになったが条件につき当事者の間で話し合いがつかないとか。
もともと裁判所に行くこと自体、そんなに気持ちのいいものじゃありませんが、近くにないとなるとさらに負担が増します。
相手方が東京、自分は島、裁判所は東京ということになると、自分の側の金銭的・時間的負担が一方的に重くなってしまうわけです。
相手方も同じ島民であるとすれば、両者とも。弁護士に依頼すれば代理人として裁判所に出てもらえますが、
それでも和解協議、証人尋問のときなど内地 (島から見て東京のことを 「内地」 といいます) に出向かなければならない場合が生じます。
つまり、いざというときのために、やっぱり裁判所は全国津々浦々にあるべきなんです。
あまり現実味なく聞こえるかもしれませんが、例えば小笠原にも戦前は裁判所がありました。
せめて各島に簡易裁判所や家庭裁判所があれば、必ずしも弁護士に依頼せずとも本人申し立てて調停 (話し合い) ができるようになります。
また、弁護士にとっても裁判所のない地域で独立開業することはかなり困難です。
本人同様、弁護士自身にも金銭的・時間的負担が生じるわけですから。裁判所ができれば弁護士土着の可能性も出てくるわけです。
先に述べたように、大島には簡易裁判所がありますが、島で最も大きい元町にありながら、裁判所はやけに奥まった目立たない場所にあります。
島の濃密な人間関係ではなおさら 「裁判ざた」 を好まないでしょうが、だからこそ裁判所の方から積極的にその存在をアピールしてほしいと思います。
2008.2.4
島弁日記(2)〜神津島 天上山〜
今回の法律相談会:神津島村 H 19.12.7 (金) 10:30〜17:00
次回の法律相談会:大島町 H 20.1.18 (金) 10:00〜17:00
1.19 (土) 09:00〜12:00
マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
神津島村法律相談会の翌日、
天上山に登ってきました。「神津島」 の 「天上山」 とは何とも神話めいた雰囲気が漂いますが、
この島は伊豆諸島9島の真ん中に位置するためか、各島の神々が天上山で会議を開いたという言い伝えが本当にあります。
その昔、事代主命という神様が、島づくりのために、神々を集めて相談をする拠点としたのが 「神集島」 であり、そこから 「神津島」 の名がつけられたのだそうです。
山といっても標高は574メートル。2つある登山道のうち、集落から外れた西側の白島登山道途中まで車で行けば、山登りは30分足らずです。
それでも、最近仕事が忙しくてスポーツクラブさぼり気味の体。前の日にいきなり僕が言い出したことなので、
相談会に同行した仲間の中には仕事用の革靴の人もいて、さらに大変だったようです。ゴメンナサイ……道は整備されてるんですけどね。
息も絶え絶えに山頂にたどり着くと、眼下には足下の白い山肌とさわやかな水色の空の間に、深い青色の海が広がります。
低木である上に、地肌部分も多く、台形状の山頂部はどこに行っても眺めがよい! ゴロゴロした岩場があったり、背丈ほどの低木の林を抜けたり。
不入ガ沢という神々が水を分ける相談をしたと伝えられる窪地があります。
表砂漠とよばれる平坦地には、ガラスのような白砂があり、登ったのに砂浜に来たような不思議な感覚です。
さらに山の東側に行くと、伊豆諸島が一望できるような高台があります。
快晴ながらも水平線はかすんでいたため、今回は遠くの島まで望むことはできませんでしたが、隣の平たーい式根島とその後ろに構える2つの山、
新島とのコントラストは印象的でした。
神も立ち寄る神津島。軽いトレッキングにはお勧めの山です。
「相談会に参加した弁護士3名、司法書士3名、税理士1名」
2007.12.18
島弁日記(1)〜相続問題〜
今回の法律相談会:神津島村 H 19.12.7 (金) 10:30〜17:00
次回の法律相談会:大島町 H 20.1.18 (日) 10:00〜17:00
1.19 (土) 09:00〜12:00
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弁護士 小
海
範
亮
島ってどんな相談が多いの? とよく聞かれます。
弁護士はもともと何でも屋みたいなところがあるし、人の悩みは千差万別ですから、島で受ける相談も様々です。ただ、あえて言うなら 「相続問題」 が多いでしょうか。
中でも、例えば 「島に先祖代々の土地があるが、現在の登記名義はひいおじいさんのままである。すでに亡くなっていて相続が繰り返され、
今では10名以上の相続人がいて、自分もその一人である。」 というような、土地にからむ相談が悩ましいです。
遺産分割協議をしようにも、孫の代、ひ孫の代になってくると相続人間の関係が希薄だし、そもそも誰が相続人でどこに住んでいるかも分からない。
戸籍をたどれば調査はできるけど、会ったことがない人に手紙を出すのもはばかられる。
逆に連絡をとらず、複数の相続人がいても相続に従った登記を入れることは可能だが、多数者の共有となるのでは解決しない。
結局、次の代になると枝分かれして、さらに権利を持つ者が増えていくからです。
ではどうするか。他の相続人より相続分を譲り受ける方法が考えられます。ただし、必ずしも無償でというわけにはいかず、買取り資金が必要です。
土地の他に現金預金の遺産があればこれを利用できるのですが、本件のような何代も続いた相続の場合にはそのような流動資産はないことがむしろ普通です。
しかも、相続財産の一部を第三者に売るなどして (もちろん他の相続人全員の同意の上で) 資金繰りをしようにも、島の土地は必ずしも価値が高くありません。
それどころか、そもそも不動産屋の通常の土地売買の対象となる地域ではないので、市場価格がいくらかかも、本当に売れるのかも分からないのです。
さらに、土地問題の最終手段? たる時効取得も、相続が関係すると簡単ではありません。
でも、このまま放置していいのでしょうか。土地問題の難しさは、放っておくと永遠に解決しないというところにあります。
島に住む相続人の一人が、事実上管理使用していたとしても、その土地に家を建てたりすることは困難です。
島の面積は限られているのに、このような利用しにくい権利関係の複雑な土地が増えていくのはとても耐え難い。
もっと早くに弁護士や司法書士が関与できていたらと思うと、僕は弁護士としての責任のようなものも感じてしまいます。
どこまで何ができるか、自分自身にとっても挑戦です。
2007.12.17
島弁日記 〜ご挨拶〜
次回の法律相談:12/7 (金) 10:30〜17:00 神津島法律相談会
連絡先:マザーシップ法律事務所 TEL 03-5367-5142
弁護士 小
海
範
亮
東京には、伊豆諸島・小笠原諸島含めて全部で11の有人島があります。
人口 9,000人近くの島から数百人の島までその雰囲気は様々ですが、弁護士は一人もいません。
裁判所も、数島に簡易裁判所があるだけで、地方裁判所はありません。我々はこのような地域を司法過疎地と呼んでいます。
人が普通に生活する以上、望むと望まざるとにかかわらず、法律問題に関する困りごとや争いを抱えてしまうことがあります。
いざそうなったときに誰に相談していいか分からない。電話相談という手もありますが、弁護士の立場からすると、
直接、顔を合わせたり資料を見たりしながらお話しを聴かないと、なかなか適切なアドバイスはできないのが正直なところです。
となると、島民は弁護士に相談するにも内地 (東京) まで出かけていかなければならない。その時間的・金銭的負担は相当なものです。
私は5年程前から、東京の島しょ部を定期的に巡回し、島民向けに法律相談会を行っています。
離島であるが故に法的サービスが受けられないというのは不平等であるし、それを解消するためには誰かがやらなくてはならないと思うからです。
全ての島で年1、2回開催していますから、毎月1、2回は島を訪問していることになり、「空弁」 ならぬ 「島弁」? (「弁」 の意味が違う!) 状態です。
もちろん、この活動ばかり行っていては事務所経営できませんから、普段はバリバリ一般事件の処理に没頭していますが・・・
島であるが故に匿名性が低く、すぐに特定されてしまうため、実際に関与した事件をそのままここに書くことが難しい。
ですが、この活動を続ける中で、弁護士として、または、僕なりに感じていることはたくさんあります。
これからは、私が島を訪問するたびに、少しずつそんなことをお話ししていこうと思います。
2007.11.19