2011.11.1
シリーズ 原発


   「恐怖の内部被曝」(練馬文化の会・武蔵大学制作)上映会と
現地報告 「チェルノブイリ原発事故は何を遺したか」   
(チェルノブイリ子ども基金事務局長・佐々木真理さん)

  福島原発事故が終息を見せないままに時間がたち、子を持つ親はもとより、多くの人たちは放射能汚染に憤りと不安をつのらせています。 練馬・文化の会では反原発や放射能汚染の問題について、これまで講演や映像などを通して実情を鋭く告発する活動に取り組んできています。
  今回は10月25日(火)に石神井庁舎で文化の会が作成した標記の作品を、 その作成に当たった本会の共同代表でもある加藤久晴さんの解説によって上映しました。 同時に、今チェルノブイリに何が起きているのか、その現地報告を 「チェルノブイリ子ども基金」 事務局長の佐々木真理さんから、 衝撃的でむごいことになっている現地の最新状況について詳細にお聞きする事が出来ました。



  最初に開会あいさつかたがた加藤さんから、日本のマスコミが、こと原発事故やそれに関わる国民のデモ等に対する取り上げ方が極めて弱いことについて、 アメリカのマスコミによるウォール街でのデモ等の取り上げ方と対比して、何故弱いのか、その原因はどこにあるのかという観点から問題提起がありました。
  またチェルノブイリ事故報道に比してスリーマイル島事故報道が何故少ないか、その背景にはかつてのロシアという 「敵性国家」 観や、 現在の日米関係が反映されていることが考えられるとの指摘がありました。 またNHKなどは一定程度取り上げるが、肝心なことにはなかなか触れず、批判する立場の人たちには取材もまともにはしていない、との指摘もありました。

  この映画の主人公である肥田医師は、被団協の原告団の一人であり、また日本共産党の議員(埼玉県川口市)でもあったこともあって、 極めて重要なことを指摘されているのにも関わらず、事実上黙殺されているような状況にあります。

  挨拶の最後に加藤さんは、「文化の会では、マスメディアでは取り上げない人やテーマを取り上げ、 たとえ小さな範囲からでもメッセージを送り続けたい」 と結びます。

  この映画は15分の小作品です。現在94歳になられる肥田医師は広島で被爆し、 6,000人を超える同じ被爆者の診療に当たる中で経験したことを意識の根底に据えて、 この映像で今もなお放射能の怖さと平和の尊さを訴えている姿を映し出しています。
  肥田医師は言います。広島・長崎の被爆者の細胞からは今もなお放射線が出ています。放射能は半減期が大変長く、人体への影響も永続的です。 従って今、発病しなくとも晩発障害といって、食べ物や飲み物を通して遅くに放射線の影響が甲状腺異常などの障害を引き起こす可能性が大です。


放射能被害…晩発障害について語る肥田舜太郎さん

  放射能で発病した場合、現在の医学で治療する方法はありません。薬もなく、手術でも治療は出来ません。 爆弾が一回きりであるのに対して、放射線は24時間、何年も何年もと永続します、と。

  次にチェルノブイリの子どもたちに温かい救援の手を差し延べる 「基金」 を作って活動されている佐々木さんから、 現地の状況や活動について写真を交えて生々しく、かつ憤りと悲しみに胸を打つような報告がありました。


チェルノブイリの子どもたちの被害について語る佐々木真理さん

  先ずチェルノブイリ原発事故はどのような事故であったのかの概略が説明されました。 1986年4月26日、チェルノブイリの原子炉の爆発炎上により大量の放射能がまき散らされました。 それはセシュウム換算で広島原爆の 8,000発分にあたり、800キロ圏のベラルーシ、ウクライナ、ロシア、更には上昇気流に乗って世界へと広がり、 日本でも1週間後に観測されました。そのために汚染された家屋等は廃屋になって放置されています。
  当地では事故の当初から、子どもの甲状線異常が(癌)が急増していて、現在ではその時の子どもたちが親になり妊娠・出産年齢となって、 その子どもたちの間でリ病している状況が述べられました。 例えば甲状線癌、肝臓癌、骨髄癌、小頭症、染色体異常、発育障害など明らかに放射能の影響によるものである考えられる病気が、 今なお多発していることが紹介されました。


母親が罹災し、娘も体内被曝のべラルーシの一家
(佐々木真理さん撮影による映像)

  映し出された写真には、そのような病気で苦しむ子どもや親たちの姿が現れて、本当に胸の詰まる思いでした。

  その後、参加者との質疑応答の時間です。次から次へと手が挙がり、チェルノブイリ事故と福島原発事故と重ね合わせて、 現状を更に詳しく教えて欲しい、汚染地域の子どもたちに対する健康回復施設の現状はどのようになっているのか、「子ども基金」 に協力したい、 肥田医師の映画とチェルノブイリの現状についてお話をセットにして会を設けてはどうか等の意見や要望が出されました。 また活動に対する励ましの声も多く寄せられました。

  そして最後に佐々木さんから、「日本の子どもたちが自分たちのような病気にかかりませんように」 との現地の人からのメッセージを伝えていただきました。

  ☆チェルノブイリ子ども基金
       〒162-0816 新宿区白銀町25 メゾンド原207号室
       電話・ファックス 03-5228-2680
    郵便振替 00160-4-98316 口座名 チェルノブイリ子ども基金
    募金はいくらからでも結構ですとのことです

(練馬・文化の会共同代表 古賀義弘)