2011.10.12

シリーズ 原発


[報告] 10月3日
「区域外(自主的)避難に賠償を求める院内集会」
井桁大介(弁護士)

  10月3日月曜日13時から、参議院議員会館の最大の会議室(定員200名)で、「区域外(自主的)避難に賠償を求める院内集会」 が開催された。
  「国際環境 NGO FoE Japan」 ら5団体の共催によるもので、 政府による避難等の指示等がなされた区域以外の地域(避難指示等区域)の外の区域から自発的に避難することの正当性を訴え、 避難にかかる費用の賠償を求めた。
  短期間の告知であったにもかかわらず開始30分後には30席ほど追加しなければならないほどの盛況となった。

  まず 「FoE Japan」 の満田氏より避難指示等区域外の現状について報告があり、 次に「福島老朽原発を考える会」 の阪上氏より区域外避難についての論点整理があった。 続いて 「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク(SAFLAN)」 の福田弁護士より、 区域外避難についての賠償範囲の指針作りが行われている原子力損害賠償紛争審査会の議論の問題点の指摘が行われた。 参加者は現状と論点整理について熱心に情報を収集していたが、 ハイライトは続いて行われた区域外避難者・避難希望者の方々が生の声を伝えるセッションであった。

  実際に避難された方や家族だけを避難させて自身は残られている方が、福島市・郡山市で起きている現状、避難に際しての苦悩、 今後の生活に対する不安などを実名で語る様子に、会場の参加者は真剣に聞き入り時にすすり泣く様子も見受けられた。

  いずれの区域外避難者の声も悩みと苦しみが伝わってくるものであったが、今回の原発事故の残酷さをとりわけ印象づけたのが、 郡山市から8月に静岡県に避難した長谷川さんのお話である。長谷川さんは、現在、奥さんと5歳の子どもの3人家族であるが、 3か月前に奥さんが妊娠していることが発覚した。エコーの写真を見た医師から連結性双生児という障がいの可能性を指摘されたとのことである。
  仮にこの障がいの可能性が現実となったとしても、将来において医学上その障がいが原発事故による放射線に起因することが判明するかもしれないし、 起因するとは判断されないかもしれない。問題は、どのような判断が将来判断されるかに拘わらず、 現在において原発事故によるものではないかとは思わざるを得ないことにある。 原発事故のせいかもしれない、と思わざるを得ないということは、事故後すぐに避難しなかった自分のせいかもしれないという自責の念につながりかねない。 十分な情報が得られない状況で避難をするべきかどうかを判断しなければならないという苦悩に加えて、 自分の判断が正しかったかどうかをこのような形で将来において問われることになりかねないことは、 子の健やかな成長を願う親として極めて辛く残酷なことであろう。

  福島市・郡山市をはじめとする高線量地域の子どもを持つ多くの方々は、それぞれ日々このような残酷な状況におかれ、悩み、苦しんでいる。

  院内集会後には原子力損害賠償紛争審査会を運営する原子力損害賠償対策室事務局担当者との意見交換が行われたが、 避難者の実情を知るために公聴会を開催して欲しいとの避難者及び各団体からの要望に対して 「公聴会が必要とは必ずしも思わない」 と回答するなど、 避難者との議論に後ろ向きな発言が多く、会場からは批判の声が飛び交った。

  その後に行われた記者会見では、各主催者からの発言とともに数人の避難者の声が伝えられた。 それぞれの避難者の報告は、震災までの生活では想像もしなかった苦悩に直面し声を上げなければならない状況に陥ったことがありありと伝わるものであった。