声明:「福島原発避難者訴訟」 の提訴にあたって
(福島原発避難者損害賠償請求事件)



2012年(平成24年)12月3日
福島原発避難者訴訟原告団
福島原発避難者訴訟弁護団

  本日、東京電力福島原発事故によりふるさとを奪われ、過酷な避難生活を強いられている被害者である避難者40名(18世帯)が、 加害者である東京電力株式会社(以下、「東京電力」といいます。)を被告として、 福島地方裁判所いわき支部に 「福島原発避難者損害賠償請求訴訟」 を提起しました。

  2011年(平成23年)3月11日に発生した福島原発事故は、未曾有の放射能汚染被害をもたらし、 現在も政府指示に基づいて約16万人ともいわれる広範な人々がふるさとを奪われ過酷な避難生活を強いられています。

  東京電力は、福島原発において、巨大地震の発生と津波が到来する危険性及び、 それにより全電源が喪失し冷却機能を失って過酷事故に至ることを十分に認識していながら、住民の安全よりも利潤追求を優先し、 原発の地震・津波対策やシビア・アクシデント対策などを怠っていました。 その結果、今回の福島原発事故を引き起こし、かつて日本国民が経験したことのない未曾有の被害を発生させた東京電力の加害責任は、 厳しく断罪されてしかるべきです。

  多くの避難者たちは、原発事故による放射線被ばくを避けるために避難を強いられ、それまで住んでいた地域のコミュニティーを奪われ、 見知らぬ土地の仮設住宅などでの不自由な暮らしを強いられ、それまでの仕事と生活や生き甲斐をも奪われました。 そして今もなお、今後の見通しも立たないまま長引く避難生活によって、生活の本拠地や仕事の見通しも立たず、絶望感や焦燥感に苛まれながら、 語り尽くせぬ様々な被害に今も苦しみ続けています。

  本件事故における被害発生においては、被害者である避難者らには何の責任もありません。 そして加害者である東京電力には、被害の原状回復を実現するための、損害賠償の責任があります。 ところが、そのような立場にあるはずの東京電力は、自らの加害責任をあいまいにしたまま被害者に対する損害賠償の基準を、 被害者の要求を一切聴くことなく一方的に決めつけ、被害者との交渉等においてその基準以上の賠償には応じない姿勢を鮮明にしています。 しかも、東京電力が定める損害賠償の基準は、到底上記避難者たちの被害を償うに十分なものではありません。 避難者には、奪われた生活の再建を実現し、再出発するために必要な完全賠償、すなわち原状を回復するに足りる賠償を求める権利があります。

  私たちは、このような東京電力の不当な対応に強く抗議し、本日、東京電力を被告として以下の目的をもって提訴することを決意したものです。


  第1に、本件事故のもたらした被害の実相とともに、原告らが強いられた過酷な被害をもたらした被告による加害の構造を事実にもとづいて明らかにし、 そのうえで、被告の加害責任を明確にする司法判断を得て、原告らに対し、被告をして真の謝罪を行わせること。
  第2に、原告らの失った生活を取り戻し、 人間の尊厳を回復し新たな人生を確立するにふさわしい損害賠償を被告に命ずる司法判断を可能な限り早期に得ること。
  第3に、今日なお原発公害の過酷な被害とその後この国に生じた不正義に苦しんでいる全ての被害者たちの 「自分たちが体験している悲惨な被害をもたらす原発公害を再び繰り返してはならない。」 との思いと 「加害者である被告が定立した不当な賠償基準を克服し、被害者の権利救済にふさわしい損害賠償基準を司法によって確立する」 との痛切な要求を実現すること。

  私たちは、この国に正義を去り戻すために本日提訴した訴訟を 「福島原発避難者第1陣1次訴訟」 と位置づけ、全ての被害者・市民と団結し、 完全賠償と原発のない社会の実現を目指してたたかい抜く決意です。

  この裁判に対する、国民の皆さんのご理解と大きなご支援を心からお願いいたします。
以上