人材派遣会社の再雇用拒否事件〜派遣可能期間の脱法行為をゆるすな
事件名:労働者であることの地位確認等請求事件
内 容:人材派遣会社に対して、組合活動を理由に解雇された
日系ブラジル人労働者と、派遣先に直接雇用された後
派遣元に採用されなかった日系ブラジル人労働者が、
それぞれ地位確認と賃金の支払いを求めた訴訟
当事者:人材派遣会社ラポールサービスVS労働者
係属機関:名古屋高裁
次回期日:11月16日勝訴。その後、会社側は上告を断念し、確定
紹介者:NPJ記者
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【事件の概要】
原告らは、共に豊橋市にある人材派遣会社ラポールサービスと派遣労働契約を結んでおり、2004年9月から1年間 (当時派遣労働法の制限期間)、
同社からホンダの下請け会社に派遣された。その後、期間制限を経過したのを受けて、3ヶ月間、同下請け会社との間で直接雇用契約を結んだものの、
その後、他の社員は再びラポールサービスに再雇用された。
ところが、原告らのうち、日系ブラジル人は組合運動を理由に解雇されたり、派遣元であるラポールサービスに再雇用されなかった。
そこで、原告らが、それぞれ地位保全の仮処分と本訴を提起した事件である。
【第一審の判決】
2007年6月4日、ラポールサービスに再雇用されなかった日系ブラジル人の訴訟については、名古屋地裁は、原告らの主張をほぼ全面的に認め、
地位確認と賃金の支払いを命じた。
判決理由の中では、3ヶ月間の派遣先との直接雇用期間は在籍出向にあたり、派遣元であるラポールサービスとの期間の定めのない雇用契約は存続すると認定した。
そして、ラポールサービスの 「再雇用」 拒否は、不当解雇に当たるとしたのである。
他方、日系ブラジル人の訴訟も、上司に 「バカヤロウ」 といったことだけを理由とする解雇は不当解雇に当たるとして、原告が勝訴した。
【本判決の意義】
現在、労働者派遣法では、製造業については、派遣先に労働者を派遣できる期間 (派遣可能期間:事件当時は1年、現在は3年に伸長) が決まっている。
この期間を過ぎる場合には、派遣先の企業は派遣労働者を直接雇用しなければならないことになっている (派遣労働法40条の3)。
そうしないと、一時的臨時的労働であるという派遣法の趣旨に反するし、労働者の直接雇用を妨げる可能性があるからだ。
ところが、近時、派遣可能期間経過後、派遣先との短期間の直接雇用を形式的に結んで、再び派遣元との契約に戻して、
同一業務 (もちろん派遣先) に従事させるという脱法行為が横行している。
本件も、まさにそうで、1年間の派遣可能期間経過後、形式的に3ヶ月間派遣先に直接雇用する形をとり、再度派遣会社との雇用関係に切り替えて、
派遣先での就業を継続させていたのである。
本判決は、第1にこの形式的な3ヶ月間の直接雇用を在籍出向だと構成してその期間も派遣元との労働契約の継続を認めて労働者を救済した点、
第2に派遣先からの受け入れ拒否 (「再雇用」 拒否) を不当解雇と判断した点で、派遣労働者にとって意義のある判決である。
【今後の予定】
使用者側が名古屋高裁に控訴。
11月16日判決、勝訴。
その後、会社側は上告を断念し、判決確定。
文責 NPJ編集部
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