憲法9条と日本の安全を考える
北朝鮮核施設先制攻撃
1、 李 明博政権になってから、朝鮮半島南北の緊張が高まっています。二代続いた韓国大統領の北朝鮮太陽政策が、李 明博政権になって変更されようとしているため、
北朝鮮はいらだっているはずです。私は、時間の経過と共に李 明博政権の対北朝鮮政策は前政権の太陽政策に近づくと思っています。
ウェイトの置き方の違いがあるにせよ、韓国の世論が支持してきた政策だからです。
2、 しかし、先日の韓国国会での韓国軍合同参謀本部議長の証言に対しては、北朝鮮は極めて強い反応をとりました。
軍事的対抗措置をとるというのです。この発言は、北朝鮮に核攻撃の動きがあれば、韓国は北朝鮮の核施設を先制攻撃するというものです。
北朝鮮の強い反応に対して、李 明博大統領は、こんなの当たり前だ、という趣旨の発言しました。
これは軽率な発言ですが、これは日本の安全保障政策、改憲問題にも深く関わってくるのです。
3、 北朝鮮の核施設への先制攻撃は、今に始まったことではありません。94年第一次北朝鮮核危機の際、クリントン政権が計画していたことなのです。
この攻撃計画は、米韓連合作戦計画5027 (OPLAN5027) に含まれるものです。
OPLAN5027は、作戦を5段階に分けます。第一ステージは動員・集中、第二ステージは阻止、従深打撃、第三ステージは攻撃転移、
第四ステージはピョンヤン占領、第五ステージは南北統一というもので、朝鮮半島を武力統一しようというものです。94年にその存在が明らかにされます。
4、 米国の研究機関グローバル・セキュリティーが詳しい内容をホームページに掲載したことあり、私もすぐに読みました。
それによると、2年に一度改訂されていること、97年の新ガイドラインで大幅に見直されたこと (北朝鮮との戦争になれば、
日本が後方支援することが合意されたからでしょう。周辺事態法にも言及しています。)、98年版ではより攻勢的な内容になり、先制攻撃を含み、
北朝鮮の体制を粉々に破壊する作戦であること、2000年版では、90日以内に米国から朝鮮半島へ69万人の兵員と160隻の艦船、1600隻の作戦機を集中する、
2002年版は9・11後に改訂され、ブッシュ政権の新しい戦略を反映し、韓国と事前協議なく北朝鮮攻撃を行うという内容であることなどが分かりました。
2002年版では韓国と米国の間で大きな問題にもなりました。
5、 OPLAN5027では、日本の後方支援が不可欠です。自衛隊が全面的に協力することになりますが、自衛隊の基地は自分たちの使用で手一杯なため、
日本の民間港湾、空港、鉄道、道路、病院などが動員されます。
新ガイドラインでは、周辺事態と日本有事が同時又は波及的に生じることを想定した日米共同作戦計画を作ることを合意しました。
99年周辺事態法や2003年6月有事法制三法、2004年6月有事関連7法の成立はそのためでした。
6、 他方で自衛隊と米軍の間では、共同作戦計画の策定作業が進んでいました。2001年9月、日米の制服組の間でCONPLAN5055という共同作戦計画が調印されます。
これは、周辺事態と日本有事をセットにした計画です。この共同作戦計画は、2002年12月にワシントンで開かれた日米安保協議委員会で承認されます。
日米安保協議委員会とは、日本の外務防衛両大臣と米国の国務国防両長官の会議で、日米の安全保障・防衛問題での最高の協議機関です。
7、 新聞報道によると、CONPLAN5055は2007年秋にはOPLAN5055に格上げされる予定とのことでしたが、現在までその情報はありません。
「OPLAN5055に格上げ」 とはどういうことかといえば、OPLANは、完全な作戦計画で、時系列戦力展開データーを伴うものですが、
CONPLAN (日本語では概念計画) には、これがないため、完全な計画ではないとされています。
時系列戦力展開データーを作るためには、日本の有事法制の完成を待たなければならなかったのです。
周辺事態法は、地方公共団体や民間団体を強制的に動員できる仕組みではなく、自衛隊もいざ危なくなれば支援を中止したり、撤退しなければならなかったからです。
自衛隊は集団的自衛権行使ができないし、個別的自衛権の場合以外には武力行使ができないからです。
しかし、武力攻撃事態法は危なくなっても踏みとどまって闘えという法制です。
8、 このことについては、日米防衛政策見直し協議 (米軍再編と称されるものです) で合意された 「日米同盟:未来のための変革と再編」
(中間報告と称されるものです) では、次のように率直に書かれています。
「この検討作業 (日米共同作戦計画を作る作業) は、
空港及び港湾を含む日本の施設を自衛隊及び米軍が緊急時に使用するための基礎が強化された日本の有事法制を反映するものとなる。
双方は、この検討作業を拡大することとし、そのために、検討作業により具体性を持たせ、関連政府機関及び地方当局と緊密に調整し、
二国間の枠組みや計画手法を向上させ、一般及び自衛隊の飛行場及び港湾の詳細な調査を実施し、二国間演習プログラムを強化することを通じて検討作業を確認する。」
9、 つまり、日本の有事法制や周辺事態法は、朝鮮半島での戦争のための国内動員のためであるということがいえます。
CONPLAN5055もOPLAN5027も、米軍から見れば全体で一つの作戦計画にすぎないからです。その戦争とは、米軍による先制攻撃で始まるかもしれないのです。
李 明博大統領が、合同参謀本部議長の発言を、そんなの当たり前だと (正確には 「当然の答えであり、この程度は一般的な発言だ」) と述べて擁護したのは、
ある意味では、OPLAN5027についての当然の認識であったということを意味しているようです。
10、 日本がこの様な戦争に動員されようとしているだけではすみません。憲法9条を改悪しようとしているのも、一つにはこの戦争計画のためです。
「日米同盟:未来のための変革と再編」 には、日本が 「切れ目のない支援」 をするという記載があります。
これまでは 「切れ目」 があったという認識なのです。周辺事態法で米軍支援を行っている自衛隊が、危なくなったら支援活動を中止し、
場合によっては現場から離れるというのでは 「切れ目」 があるのです。「切れ目」 をなくするためには、危なくなっても米軍と一体の活動ができなければなりません。
海外での武力行使、集団的自衛権行使となります。「切れ目」 とは個別的自衛権と集団的自衛権とを分ける憲法の壁です。
さらに 「国際的な安全保障環境を改善する上での二国間協力は、同盟の重要な要素となった。
この目的のため、日本及び米国は、それぞれの能力に基づいて適切な貢献を行うと共に、実効的な態勢を確立するための必要な措置をとる。」 という記載もあります。
私は、「必要な措置」 とは何か考えました。立法を伴う措置を含むのは当然ですから、先ほどの 「切れ目のない支援」 と共に考えると、
自衛隊の海外活動の本来任務化、海外派遣恒久 (一般) 法、集団的自衛権行使容認と思われます。
自衛隊海外活動の本来任務化は、既に自衛隊法第3条改正で実現しています。
これらの 「実効的な措置」 は、究極の立法改憲か、9条改憲で完璧なものになるのでしょう。
11、朝鮮半島でのいろんな動きは、日本の憲法改正問題に直結していますので、これからもこの視点で注目してゆかなければならないと思います。
2008.4.11
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