2009.12.9

憲法9条と日本の安全を考える

弁護士 井上正信
目次  プロフィール

私たちが目指すもの(実憲のすすめ)

、私はこのシリーズで、北朝鮮の核開発を含む北朝鮮問題を包括的に解決する上で、日米同盟そのものを変えてゆかなければならないことを述べました。 6者協議の共同声明、合意文書を履行する上で、このことは避けて通れないことだとも述べました。 また、このような受け身の姿勢ではなく、我が国がイニシャチブを取れるチャンスであることも主張しました。 これまでの日本政府の北朝鮮政策と安全保障政策は、イニシャチブを取るどころか、足を引っ張る役割を果たしてきたことも説明しました。 日本政府の政策の変更を促すとすれば、私たちが永年慣れ親しんできた冷戦時代の思考を変えなければならないでしょう。 そのためには、固定観念(日米同盟は日本の安全を守るもの、北朝鮮脅威論、核の傘政策、軍事力で平和を維持するなど)を根本から疑ってかかり、 現実を偏見のない澄んだ目で冷静に見つめることが必要だと思います。日米同盟が基軸という固定観念により、思考停止になってはならないと思います。
  北朝鮮問題はそのための恰好の素材でもあります。私たちの憲法9条に対する姿勢が試されるリトマス試験紙ともいえます。

、北朝鮮の核開発問題を解決するためには、日朝国交正常化が重要であることは、6者協議での一致した合意です。 拉致問題解決を理由に先送りすべきではありません。また、我が国の非核化(「核の傘」 政策からの脱却)も重要です。 北朝鮮の非核化を促進させるし、そのための条件にもなりうるからです。 我が国が北朝鮮の脅威に備えて、米国の核抑止力に依存するという政策を採る意味は、北朝鮮にとっては、 いざというときには我が国が米国に対して北朝鮮を核攻撃することを要求する政策なのです。これでは、北朝鮮に核開発を辞めろとは言えないはずです。

  北朝鮮非核化のためには、米国が北朝鮮に対して核攻撃を行わないという消極的安全保障の法的(条約による)誓約が必要です。 これは我が国の 「核の傘」 に大きな穴を開けるものです。米国は、北朝鮮を標的にした核兵器が不要になり、核軍縮がやりやすくなります。

  米国が保有する核兵器の種類や数は、無原則的に増やしたり減したりするものではなく、 明確な核戦略とターゲッティング(標的化と訳するのでしょうか)政策があるのです。 核攻撃の標的の種類(ソフトターゲットかハードターゲットか、都市、産業施設、軍事基地など)で、 使用される核兵器の種類や数(ハードターゲットであれば複数の核兵器で攻撃する、カウンタシティーなら爆発威力が大きいもの、 カウンタフォースであれば爆発威力が小さく命中精度が高いものなど)を決めるのです。 冷戦時代の 「相互確証破壊戦略」 のもとで核兵器の数が増加し、米ソ双方で約7万発に達した理由は、 相手の第一撃で核兵器が破壊されても生き残った核兵器で相手を壊滅させるという戦略であることから、核兵器の数を増やす必要があったからです。 また、全面的な報復核攻撃ですから、標的の数も極めて多くなります。

  米国が大幅な核軍縮を行おうとすれば、核攻撃しうる標的の数を大幅に減らさなければなりません。そのためには核戦略も大きく変えなければなりません。 同盟国を護るための核兵器の数が減少すれば、「核の傘」 の信頼性はなくなるのは当然です。 麻生内閣は、オバマ政権に対してある種の戦術核兵器(海上発射核巡航ミサイル)の退役に反対したり、小型地中貫通核爆弾を要求しましたが、 その理由は、オバマ政権の核軍縮政策で日本を護るための核兵器が無くなり、「核の傘」 の信頼性が無くなると怯えたからです。 我が国のこの懸念を利用して、米国内のオバマ政権の核軍縮に反対する勢力が巻き返しを図っています。 米国が北朝鮮に対して消極的安全保障の法的誓約をしようとすれば、我が国が 「核の傘」 政策を放棄することが決定的に重要なことはお解りいただけると思います。

、米国が北朝鮮に対して消極的安全保障の法的誓約を与えることを決断すれば、北東アジア非核地帯条約の実現が現実味を帯びてきます。 私はこれからのわが国の安全保障政策の中で、北東アジア非核地帯条約実現は大変大きな意義があると思っています。 北東アジア地域の地域的安全保障の枠組みは、それを構成すると思われる6カ国+αの国の間の領土問題や国益の衝突など困難な条件が色々ありますが、 北東アジア非核地帯条約は、非核化という限定された政治課題であることや、6者協議の積み重ねなどから実現の可能性が高いと考えています。 日本政府は北東アジア非核地帯条約に反対していますが、その理由は、何かあったら米国の 「核の傘」 に依存するという政策があるからです。 日本政府がこの態度を改めれば、実現に大きく貢献するはずです。

、9月24日安保理は史上初めての首脳会議を開き、決議1887号を採択しました。オバマの米国は安保理議長国として、 この決議案を作成して安保理構成国へ提案して決議採択のイニシャチブを取りました。 「核兵器のない世界」 と題するこの決議の中で、「非核兵器地帯条約締結のために取られる措置を歓迎・支援し、 非核兵器地帯が核不拡散体制を強化し核軍縮に貢献するとの確信を再確認」 しています。極めて正当な指摘です。 日本政府も理事国として賛成しました。これで日本政府が北東アジア非核地帯条約に反対する理由はありません。 反対するなら、国際的に二枚舌を使ったと批判されるべきです。私たちは日本政府に、北東アジア非核地帯実現をもっと要求しなければなりません。

、日韓の反核平和運動が作成した 「モデル北東アジア非核地帯条約(案)」 が公表されています。 何度か改訂され、現在のものは2008年12月13日改訂草案5です(核兵器・核実験モニター誌第318号に全文と解説が掲載されています)。

  条約案の内容は、非核地帯を南北朝鮮半島と日本の領域に限定していること、 締約国を日・韓・北朝鮮3カ国(地帯内国家)と米・中・露の3カ国(近隣核兵器国)としています。 現在存在する非核地帯条約と比べた大きな特徴は、近隣核兵器国による地帯内国家(非核兵器国)への核兵器攻撃だけではなく、通常兵器攻撃も禁止していることです。 これは、北東アジア地域の国際関係が強く反映されていると思います。大規模地域紛争の可能性があるこの地域では、 通常兵器攻撃も核兵器使用へと容易にエスカレートするおそれがあるため、通常兵器攻撃も禁止しようというのです。 その点では他の非核地帯条約と比べて、少しハードルが高いように思えます。しかし、ここでも6者協議の積み重ねがあります。 2005年9月共同声明で、米国は北朝鮮に対して、核兵器或いは通常兵器による攻撃又は侵略の意図がないことを確認しているからです。 或いは米朝間で不可侵条約が締結されるかもしれません。このような積み重ねの中で、我が国だけが 「敵基地攻撃論」 で北朝鮮脅威論に対処しようとすることは、 滑稽なことでしょう。

、北東アジア非核地帯条約の実現自体が極めて大きな意義があることですが、それを実現するためのプロセス、 則ち多国間協議自体に大変大きな意味があると思います。 なぜならこの多国間協議では、北朝鮮問題に象徴されるように、北東アジアに残っている冷戦時代の遺構である分断と対立の構図、 根深い不信と相互の脅威感に終止符を打たなければならないからです。 軍事同盟こそ分断と対立の根っこです。北東アジア非核地帯条約の締結協議は、分断と対立の関係から協調的関係に転換を始める重要な契機になるはずです。 北東アジアの地域的安全保障の枠組みを目指す関係国の努力を促進することは間違いありません。

、我が国は北東アジアにおける大国です。解釈改憲でぼろぼろになりながら、世論から支持を受け、未だしっかり政治過程に根を下ろしている9条があり、 人類の歴史上、大国=軍事大国という常識を否定しているのです。「核の傘」 から脱却して、ハゲかかった非核三原則の看板をリニューアルすれば、 我が国は北東アジア非核地帯条約実現のイニシャチブを取ることができます。

、1982年 「軍縮と安全保障問題に関する独立委員会」 通称パルメ委員会が 「共通の安全保障」 と題する報告書を発表しました。 パルメはスゥエーデンの首相を務めた政治家です。この報告書は日本でも翻訳されて同じ表題で出版されています(古いので図書館でしか読めないかもしれません)。 パルメ委員会は、新しい安全保障の概念として 「共通の安全保障」 を提唱しました。それは、
  他国の犠牲において自国の国益や安全を図るという安全保障観ではなく、全ての国は安全への正当な権利があることを認める、 軍事力は国家間の論争を解決するための正当な道具ではないことを認める、安全保障は軍事的優位によっては達成されないこと、 「共通の安全保障」 のためには軍備の削減と質的制限が必要であることなどを原理とし、安全保障と協力に関する地域会議、平和地帯、 非核地帯などの地域的アプローチを国連の活動を補い補強するものとして提唱します。

  この概念の中に、人間の安全保障という考え方を入れると、憲法の平和的生存権の考え方とほとんど同じではないかと思えます。

  冷戦時代のヨーロッパで東西の軍事同盟が対立し、ヨーロッパを戦場とした限定核戦争すら想定されていた中で、 戦争を防ぐため、東西両陣営を含むヨーロッパ全域をカバーする、欧州安全保障協力会議(CSCE)が作られ(1972年)、 1995年には協議機関から欧州安全保障協力機構(OSCE)という地域的安全保障機構へと発展させます。 この、バンクーバーからウラジオストックまでカバーする地域機関の設立で、冷戦終結後の欧州ではもはや大規模な戦争は考えられなくなったのです。 この認識は既に1991年NATOローマサミットで採択された 「同盟の新戦略概念」 に書き込まれています。 「共通の安全保障」 観は、CSCE、OSCEの指導理念になりました。「共通の安全保障」 観は、現実政治の過程で生かされている概念なのです。 東南アジア友好協力条約(TAC)により設立されているASEANも、「共通の安全保障」 観を実践していると考えてよいでしょう。 09年7月には米国もこの条約に調印しました。この概念は、憲法の恒久平和主義と共通するものです。 6者協議が目指す北東アジア地域での安全保障の枠組み協議、北東アジア非核地帯条約は、 いずれも 「共通の安全保障」 観を北東アジア地域に当てはめるものと考えてよいでしょう。

、地域的安全保障の枠組みと軍事同盟が共存することが不可能かといえば、NATO同盟とOSCEとが重なっているように、現実政治では十分あり得ます。 しかしながら、軍事同盟と地域的安全保障の枠組みとは、理念的には相反するものです。国連の集団安全保障システムと軍事同盟が相反すると同じ問題です。 昨年8月に発生したグルジアとロシアの軍事紛争は、NATOの東方への拡大(旧ソ連の構成国の加盟)の流れの中で、グルジアがNATOへの加盟申請をし、 米国がそれを後押ししたことが背景にあります。 また、その前年ロシアは、米国がイランの弾道ミサイル防衛を理由にした東欧(ポーランドとチェコ)へのミサイル防衛システム配備計画に強く反対し、 欧州通常戦力条約(CFE)の履行停止を表明しました。それ以降米ロ新冷戦とまで称される事態になりました。欧州通常兵器条約はOSCEを補完する重要な軍縮条約です。 NATOの拡大強化がOSCEの基礎を掘り崩しかねない危うさを持っていることを私たちに示した出来事でした。

10、私は、わが国の安全保障政策は日米同盟基軸路線から、 北東アジア地域の多国間安全保障の枠組みを目指す協調的安全保障政策を採用すべきであると考えています。 日米同盟基軸論とこの協調的安全保障政策とは理念的にも、現実政治においても矛盾することは、既に論じたところです。 これは決して非現実的な政策ではありません。かつて一度だけ日本政府が取り組みかけたことがあるのです。 細川内閣が設置した 「防衛問題懇談会」 が、 村山内閣になって答申した 報告書 (1994年8月 懇談会の座長がアサヒビール会長の樋口廣太郎氏であったので、 樋口レポートと呼ばれています)がそれです。 「防衛問題懇談会」 とは、防衛計画の大綱を策定しようとする際に、必ず設置されてきた首相の諮問機関です。
  この報告書は、次期防衛計画大綱が定める日本の安全保障政策として、 北東アジア・西太平洋地域での多国間安全保障の枠組みを日米安保条約に優先させようとしたのです。 さらに報告書は、この多国間安全保障の枠組みを、国連憲章第2条3項、4項(国際紛争の平和的解決義務、武力の行使・威嚇の禁止原則)に根拠を求め、 憲法9条の精神にも合致するとしています。この当時、冷戦終結後の欧州では、EU統合・拡大と西欧同盟(WEU)を、統合されたEUの軍事機構化する動き、 フランスの核戦力を 「欧州の核」 と位置づけようとするフランスの提案もあり、米国から見れば、 同盟国は米国を盟主とする軍事同盟から離反しようとしていると見えたかもしれません。 冷戦時代のソ連という敵を失い、米国を盟主とした軍事同盟の役割が低下することをおそれた米国は、軍事同盟の再編成に乗り出すのです。 このプロセスが欧州ではNATO再定義、日米間では日米安保再定義と呼ばれるものでした。 樋口レポートの内容に衝撃を受けた米国は、日米安保再定義で強い圧力をかけたといわれています。

  結局、樋口レポートは米国からの強い圧力により、防衛計画大綱へは反映されなかったのです。 その結果、日米安保体制は日米同盟と称されるようになり、アジア太平洋地域へと拡大されたのです。 この行き着く先が日米同盟のグローバル化と憲法9条改正であることは、その後の日米関係を巡る動きから明白です。

11、今私たちを取り巻く政治状況は、わが国の安全保障政策を日米同盟基軸路線から、 北東アジア地域での多国間安全保障の枠組みへと転換する歴史的なチャンスが来ていることを示している、といってよいでしょう。 日米同盟のグローバル化と憲法9条改正はそのチャンスを潰します。来年は日米安保条約締結50周年です。 日米同盟基軸路線から決別して、「共通の安全保障」 観にたった新しい安全保障政策を選択できるかどうかは、私たち一人ひとりの選択にかかっています。 憲法9条の改正を許さない運動は、同時にこの新しい安全保障政策を実現させるために力を入れなければならないと思います。
  この選択は決して二項選択という単純なものではありません。私は、一気に日米安保条約を廃棄するということを提案しているのではありません。 私たちの平和と安全、周辺諸国の平和と安全、私たちと諸国民の平和的生存権の実現のために、現実的な政策を選択することが必要です。
  まず、「核の傘」 政策からの脱却から始め、北東アジア非核地帯実現の政策を打ち出すこと、非核三原則を法制化することが求められます。 なぜ法制化なのか。我が国の有力な政治家や言論界の一部には、米国の 「核の傘」 の信頼性が無くなるようであれば、日本は核武装すべきだという、 私から見れば与太話のような議論が根強くあります。国会における政府答弁は、純粋に防御的な核兵器であれば保有することは憲法で禁止されないというものです。 また大量のプルトニュームを備蓄しています。我が国の核政策に周辺諸国から不信の目が注がれるかもしれません。 そうなれば、北東アジア非核地帯条約実現の障害になります。「核の傘」 政策を放棄しても核兵器を開発・保有しないことを確固とした政策とするために、 非核三原則の法制化が必用でしょう。北東アジア非核地帯条約を履行するための国内法制としても必要です。

12、この政策と合わせて、北朝鮮との国交正常化交渉を実現しなければなりません。 平壌宣言の路線を実行するのです。そうすれば拉致問題は解決に向けて大きく前進するはずです。 平壌宣言に基づく日朝国交正常化交渉は、2005年9月6者協議共同声明で、北朝鮮の非核化実現の不可欠な一部として位置づけられ、 2007年2月6者協議合意文書では、共同声明完全実施のため五つの作業部会設置を合意しましたが、その一つが、日朝国交正常化作業部会でした。 我が国は北朝鮮の非核化と国交正常化のためにイニシャチブを発揮しなければなりません。 6者協議は、北東アジアの地域的安全保障の枠組み協議へと進展させる見通しを持っています。 五つの作業部会の一つに 「北東アジアの平和及び安全メカニズム」 部会があるのです。 これは単に北朝鮮の非核化や朝鮮半島の平和と安定に止まるものではないはずです。台湾海峡問題(台湾帰属問題)、 領土問題などより幅広い安全保障問題が協議される可能性があります。6カ国の閣僚会議を開くことも合意されています。朝鮮半島の平和的統一も重要な課題です。

13、我が国は、このような安全保障の枠組み構築へ積極的に参加しなければ、北東アジアという狭い地域で見ても、 時代の趨勢から取り残される可能性があります。北東アジアは中国の経済発展の中で、国際関係がダイナミックに変動しています。 米国と中国がそのイニシャチブを取り、我が国は旧態然とした日米同盟基軸論にしがみつき、ひょっとすると米国に梯子を外されかねません。 我が国の将来にとってもこれは悪夢ではないでしょうか。中長期的な北東アジアの国際関係を展望しながら(遠からず必ず地域統合へ向け歩むはずです)、 今現在は米国との摩擦は覚悟しても、わが国の安全保障政策を、日米同盟基軸論から北東アジアの多国間安全保障システムへ大きく転換させなければなりません。

  そのためには日米同盟の役割を低めてゆく必要があります。まず米軍再編への協力を中止し、普天間基地を撤去させること、米軍再編予算を凍結すること、 沖縄の海兵隊を引き上げさせること、空母母港化を止めること、日米安保条約を本来の姿(日本防衛と基地貸与)に戻すこと、 日米間の密約を破棄して、非核三原則を厳格に実施し、事前協議を有効な仕組みにすること、思いやり予算を止めること、 ミサイル防衛の共同研究と配備を中止することなどが考えられます。 北東アジアの安全保障の枠組みが有効に機能するようになれば、米国のアジア戦略も必ず大きく変わるはずです。 米国のアジア戦略が変わるのを待ってから我が国の政策を変更するのではなく、我が国が率先してその変更を促すという政策選択を取ることが必要です。

14、このような新しい安全保障政策を実行する指導理念が、戦争放棄、戦力不保持と交戦権否定、平和的生存権の保障を内容とする恒久平和主義です。 この安全保障政策を実行するプロセスが、恒久平和主義を実現するプロセスですが、自衛隊をどうするかというやっかいな問題がまだあります。 今の自衛隊は専守防衛の制約を外され、海外での武力行使ができる軍隊になりつつあります(自衛軍化)。 且つ、自衛隊と米軍の一体化が進んでいます。米軍再編を含む日米同盟の再編強化の政策のもとで進められてきたことです。 新しい安全保障政策のもとでの自衛隊は、まず装備や編成、予算を含め専守防衛の枠に止まるよう軍縮を図らなければなりません。 北朝鮮問題の解決を図るプロセスと、北東アジア非核地帯条約の実現、北東アジアの安全保障の枠組み協議の進展の中から、 私たちの中にある北朝鮮脅威論や中国脅威論が次第に克服されてゆけば、安保条約の役割の低下と自衛隊の軍縮について、国民的コンセンサスが形成されるでしょう。 長期的には安保条約の解消と自衛隊の非軍事化です。

15、これをお読みになって皆さんどのようにお考えですか。9条を実現するためにこんな悠長で長期的な見通しではだめだといわれるかもしれません。 私は確かに長期的な目標として掲げていますが、それは現時点での私なりの見通しに立ってのことです。 しかし、我が国を取り巻く北東アジア情勢はどのように変化するか、なかなか予測はできません。急激な変化があるかもしれません。 それに伴い、国民のコンセンサスが急速に形成されるかもしれません。案外中短期的な政策目標になるかもしれないのです。 大事なことは、いかなる情勢の変化に対しても、私たちが9条を実行する安全保障政策に対する確信を持ち、 情勢の変化に対応できるだけの内容を準備することだと思うのです。 私は、我が国が平和と安全で、基本的人権が尊重され、民主主義の国として発展するためには、この路線しかないと考えるのです。 私たちを取り巻く様々な状況を冷静に見つめると、今がチャンスなのです。

  最後に 「実憲のすすめ」 とした理由は、既にお解りのように憲法9条を実行(実践)し、実現するため、という意味です。 運動論の立場から何か目新しい標語が必要だと思ったのです。改憲論は 「論憲」 とか 「創憲」 とか 「加憲」 と称していました。 「実憲」 とはセンスのない標語ですが、皆様も考えてみてください。