2009.4.24 更新

【マスメディアをどう読むか】

関東学院大学教授・日本ジャーナリスト会議
 丸山 重威
目次 連載に当たって

◎「ミサイル防衛」「北朝鮮脅威論」に乗せられたマスコミ
「客観報道」が創り出した「不安」と「緊張」


  北朝鮮の 「人工衛星発射実験」 をめぐって、日本中が大騒ぎした。日本はこれを 「ミサイル実験」 だとして迎撃ミサイルを出動させ、自衛隊に 「破壊措置命令」 を出した。 国連安保理で非難決議をしようとしたが、反対され、安保理は非難を盛り込んだ議長声明を出し、国際社会の姿勢を示した。
  これに対して北朝鮮は、6ヵ国協議からの離脱と核兵器開発を宣言、北朝鮮・寧辺 (ニョンビョン) の核施設で、 監視に当たっていた国際原子力機関 (IAEA) の監視・検証要員は核施設に対する封印を解除、出国した。
  一体この騒ぎ、何だったのか? 浮かび上がってくるのは、「敵」 を創って軍備を強化し、 国民を動員するという相変わらずの冷戦思考から抜けきれない日本政府の姿勢と、「客観報道」 はあったのだろうが、 その結果、不安と緊張を拡大したジャーナリズムの 「貧困」 ではなかっただろうか。

  ▼「危険は少ない」と言いながら迎撃体制
  今回北朝鮮は、この2月、宇宙条約と宇宙物体登録条約に加盟、国際海事機関 (IMO) と国際民間航空機関 (ICAO) に対し、 「4月4日から8日の間に 『通信衛星』 の打ち上げを実施する」と通告。 1段目のロケットが落下する可能性がある地点として、朝鮮半島と日本列島の間の海域、2段目は太平洋を指定した、と発表した。
  これに対し米国は 「北朝鮮の主張する 『人工衛星』 の打ち上げは国連安保理の決議に違反する」 と牽制、国連・潘基文事務総長も 「地域の安定を脅かす」 と述べ、 懸念を示した。しかし米国は、発射に反対はしながらも、据え付けられたロケットの先端部分の形状などから、ミサイルではなく衛星である可能性が大きいとして、 冷静な姿勢を崩さなかった。

  ところが、これに反応したのが日本で、麻生首相は3月2日、首相官邸で 「直接 (日本に) 被害が及ぶのであれば、人工衛星でも迎撃できる」 と語り、 自衛隊法に基づく 「破壊措置命令」 の準備を進めた。麻生派議員は、北朝鮮の動きについて、支持率上昇の 「神風」 になる、 と語り (「朝日」 3月28日付 「時時刻刻」)、石原慎太郎東京都知事も 「変なものが間近に落ちるなんてことがあった方が、 日本人は危機感、緊張感を持つ」 (3月28日付各紙) と語るなど、これを政治的に利用とする姿勢を丸出しにした。
  3月27日、政府は 「安全保障会議」 を開き、落下してきたミサイルを撃ち落とすため 「破壊措置命令」 を発令することを決め、浜田防衛相は27日午前9時、 「万が一、北朝鮮による飛しょう体が事故などによって我が国に落下した場合に備えるため」 として、自衛隊法82条2の第3項に基づく 「破壊措置命令」 を出した。 同項の 「破壊措置命令」 の対象は、「弾道ミサイル、人工衛星打ち上げ用ロケット、人工衛星など、 その落下により人命または財産に対する重大な被害が生じると認められる物体で航空機以外のもの」 となっている。
  これを受けて自衛隊は、弾道ミサイル対処能力を備えたイージス艦2隻を日本海に展開。上空通過が予想される秋田県と岩手県の駐屯地のほか、 東京・市ヶ谷の防衛省に迎撃ミサイル 「PAC−3」 の部隊を出動させた。

  しかし、まず第一に、この 「飛翔体」 が日本の上空を通過するのは、領空外の上空数百キロの宇宙空間で、専門家に言わせれば、まず危険はない上、 失敗した場合には上空で爆破措置が取られるため、大気圏に入って燃え尽きてしまうのが普通。 政府は 「わが国領域内に落下するケースは、通常は起こらない」 「冷静に対応してほしい」 (河村建夫官房長官) としながら、体制整備の状況を刻々発表した。
 
  ▼情報システムと「誤探知」問題
  今回の騒ぎで目立つのは、自治体と住民を巻き込んだ情報システムが稼働し、「全国一丸」 となって対応する態勢がとられたことだ。
  使われたのは、2006年から導入が始まった 「エムネット」 で、地方自治体のコンピュータネットワークを接続して2001年から接続された 「LGWAN」 と呼ばれる広域ネットワークを使って、都道府県や市区町村の庁内ネットワークが接続されている。 3月末時点で全国1800市区町村のうち1287市区町村が参加しているとのことで、秋田と岩手両県内では、今回、全市町村で接続したという。
  同様のシステムとして、武力攻撃などを人工衛星を用いて自治体に送信する 「全国瞬時警報システム」 (Jアラート) というシステムがあるが、 今回は自治体への普及が進んでいないとかで、使われなかった。
  予告された発射日を前に、自衛隊が態勢を取ることが報道され、各自治体も3日夜から警戒態勢を取り、 4日朝には、県から市町村に 「まもなく発射」 のFAXを流したりした。
  ところがこの日、2回にわたって 「発射」 の情報が流れ、訂正される騒ぎになった。

  まず、4日午前10時50分ごろ、秋田県対策本部に詰めている陸上自衛隊東北方面総監部の連絡員が対策本部に口頭で、「10時48分に発射された」 と報告。 それを受け、対策本部は10時54分に県内各市町村にミサイル発射を知らせる警戒を呼びかけるメールを送信した。
  市町村では、「北朝鮮よりロケットが発射されました。テレビやラジオなどの情報に注意してください」 などの防災無線を流したが、直後に、 「先ほど放送しました発射情報は誤りでした」 と訂正放送した。これは秋田だけのことだったようだが、同日午後0時16分、政府が 「飛翔体が発射された模様だ」 と発表、 ほとんどのテレビ局が通常の番組を中断してこれを流し、海外のメディアも速報した。 ところが、5分後、「誤りだった」 とこれを訂正、国際的にも 「世界的な誤報」 と批判された。

  報道を総合すると、この 「誤報」 は、航空自衛隊の地上レーダーFPSSが探知した航跡をミサイルだと勘違いしたためだったという。 本来、米軍の早期警戒衛星の情報をベースにするはずだったが、それより早く1つの航跡を見ただけで、「発射」 と発表、 チェックすべき日本海のイージス艦のSPY1レーダー、航空自衛隊駐屯地4カ所のFPS3改良型レーダー、 米軍のXバンドレーダーなどの情報がないまま 「発射」 と発表した、という。
  国際的にも 「世界的な誤報」 (毎日新聞) と言われたが、実はそういう問題だけではない。この 「誤報」 が何者かに仕組まれていたもので、 それに反応した行動が取られていたとしたら、大変な危機を招きかねない。 ネットでは、政府のシステムについて、「メッセージは、きちんと発信者認証されているのか」 「テレビで見た限り、電子署名されていたように見えなかったが、 自動認証処理しているのだろうか」 などといった疑問が出されている。

  ついでに、もう一つある。朝日新聞の報道によると、「ミサイル」 が発射された5日、鳥取県が県内19市町村に緊急ファクスを送信した際、 「緊急連絡、国内にミサイルが落ちました。被害を確認中です。屋内に避難してください」 とする放送参考文案を記載したまま送るミスがあった、という。 誤った文案を放送した市町村はなかったが、その後、「県内の地上では被害報告はありません。屋内避難を解除します」 と訂正せざるを得なかったという。
  システムは万全ではない。システムを使うのは人間だ。関東軍の 「謀略」 だった柳条湖事件や、「誤報」 だったとされるトンキン湾事件のことを考えると、 実は大変恐ろしいことが起こりかねないことを、国民全体、自覚すべきではないだろうか。

  ▼日本の強硬論と米中提案議長決議
  発射後、北朝鮮は 「我々の科学者、技術者は、国家宇宙開発展望計画に従い、運搬ロケット 『銀河2号』 で人工衛星 『光明星2号』 を軌道に進入させることに成功した」 と発表、「運搬ロケットを午前11時20分に打ち上げ、それから9分2秒後、正確に軌道に進入させた。 衛星に搭載された通信機材からは、金正日総書記を讃える歌のメロディーなどが地上に向けて伝送されている」 と報じた。
  しかし、日米両政府によると、飛翔体の第1段は秋田の西方約280キロの日本海、第2段は日本の東約1270キロの太平洋に落下、ほぼ予定通りだったが、 衛星を軌道に乗せることには失敗した、とし、発射地点からは、3500キロ前後飛び、最高高度は400キロ程度だったということだった。
  発射を受けて日本政府は、国連安保理に非難決議の実現を働きかけた。しかし、中国、ロシアが難色を示したため、米国と中国が話し合い、 議長声明をまとめることを提案した。
  安保理で行われていた日本を含む理事国の協議が、日本の主張が強く、行き詰まった結果、中国が積極的に米国と協議して議長声明でまとめた、という報道がある。 米中の接近を推進したのは日本、ということになるのかもしれない。

  かくして国連安保理は4月13日、北朝鮮の 「発射は、いかなる核実験または弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことなどを求め、 弾道ミサイル計画に関連するすべての活動の停止と計画の放棄を求めた2006年の安保理決議1718に違反したもの」と北朝鮮を非難する声明を採択した。
  これに対し、北朝鮮は 「衛星打ち上げを多く行った国が常任理事国に居座る安保理が平和的衛星打ち上げを論議したこと自体、我が人民に対する冒とくであり、 許し難い」 と反発、「自主権尊重と主権平等は、6カ国協議の基礎だが、参加国が安保理の名でこの精神を否定し、日本が公然と単独制裁まで科した以上、 会議はその存在意義を失った」 と声明を発表、現実に北朝鮮に駐在していた IAEA (国際原子力機関) の監視要員を退去させた。

  ▼日本政府と自民党の対応
  このような対応は、これでよかったのだろうか。数少ないが問題が指摘されている。
  こうした状況を生み出した日本の姿勢を、「笑う北朝鮮、空回りする日米」 と書いたのは 「ニューズウィーク日本版」 4月22日号である。
  「北朝鮮は日米間の 『敵視政策』 を理由に自国の挑発的な行動を正当化している」 「日本は既に全面的な危機が勃発しているかのように振る舞っている。 5日に弾道ミサイルが発射されて間もなく、新聞各紙は号外を発行。テレビ局は通行人に街頭インタビューを行い、 北朝鮮の脅威に対する国民の 『恐怖』 の声を報じようとした」 「慌てふためいた日本政府の対応が北朝鮮を利してしまった可能性があることだ。 日本政府は弾道ミサイル発射の1週間ほど前に、万一の事態に備えて東北と首都圏に地上配備型迎撃ミサイル (PAC3) を大っぴらに配備してしまった。 通行人がカメラでそれを撮影できたほど、最新鋭の兵器が公にさらされた」―。

  また、毎日新聞4月10日付でも、スタンフォード日本センター所長アンドリュー・ホルバート氏が、「対応は洗練されていたとはいえません。 感情的に 『迎撃』 『迎撃』 とこぶしを振り上げ、たった一人で歌舞伎の決めポーズを取っているかのようでした」 「しかし、敵視するだけの外交で、 日本に成果はあったでしょうか」 と指摘した。
  東京新聞4月12日付では、山口二郎北海道大学教授が 「日本では国内政治の材料として消費された感がある。 外国の脅威をあおれば政府の求心力が強まるという期待が政府の対応の根底にあったことは間違いない」 「北朝鮮が本気で戦争する気なら、 ミサイルを撃つ前に迎撃システムの無力化を図るはずである。わざわざこちらの手の内をさらけ出すというのは、今回の迎撃準備が、国防よりも、 国民向けのプロパガンダであることを物語っている」 と書いている。

  果たしてどうだったのだろうか。
  こうした指摘を裏付けるように自民党から出てきたのが、「抑止力強化」 「敵基地攻撃」 論や、「場合によっては国連脱退」 の議論や核武装論までだった。 「悪乗り」 にしても怖い言動である。
  自民党の山本一太議員らは4月9日 「北朝鮮に対する抑止力強化を考える会」 を結成した。趣意書によると、 (1) 「日本が 『敵地 (策源地) 攻撃能力』 を保持する可能性」 を法的、戦略的、軍事的側面から研究、年末の 「防衛大綱」 に反映させる  (2) 「敵地攻撃能力」 に関する記述を盛り込むことを含めて検討する (3) 日米同盟の新たな役割分担を再考、集団的自衛権の議論を再活性化する―などだという。

  また自民党の坂本剛二組織本部長は、役員連絡会で 「国連で日本の主張が通らないなら、国連を脱退するとか、北朝鮮が核保有している限り、 日本も核を持つぐらいのことをいうべきだ」 と述べたという。
  これはさすがに、自民党でも問題だったのだろう。山崎拓元幹事長は、4月7日、「ミサイルが飛んでくるなら発射基地を叩こうとか、 向こうが核武装するならこちらもという意見は人類を破滅に導く議論だ」 と発言した。
  また、11日付 「朝日」 は17面全面を使って、久間章生元防衛相のインタビューを掲載、久間氏はここで 「どんなに考えても今北朝鮮が日本めがけて撃つはずはない。 騒ぎにしたのはおたくら (マスコミ) でしょう」 と述べている。

  ▼メディアの責任は重い
  確かに、この騒ぎを政府だけの責任にすることはできないのではないか。メディアは、この動きについて、いくつかの例外を除き、 全くと言っていいほど無批判だったからだ。
  ミサイルか、衛星か? 迎撃ミサイルによる対応は正しかったのか? 「危険」 はどの程度あったのか? その 「危険」 にはどう対処するのがいいのか?  本当に阻止したかったら、外相でも、特使でも、訪問すればいいし、どこまで本気に止めたかったのか?
  ざっと考えられるこうした疑問に、メディアは十分答えることはなく、政府に質すこともほとんどないまま、部隊の動きが 「客観報道」 され、それが世論を形成した。

  東京新聞4月8日付 「こちら特報部」 は、「『ミサイル』 過剰報道? メディアは 『慌てず』 『騒がず』 のはずが…」 の見出しで、「北朝鮮の 『ミサイル発射』 一色となった、 このところの新聞・テレビ。政治とカネ、年金、雇用、教育と、国民を苦しめる問題が山積なのに、メディアは 『ミサイル、ミサイル』 の大合唱だった。 でも、あれで、にんまりしたのは誰? 『大満足』 とのたまったかという将軍様ではないか」 と書いて、「ミサイル発射報道」 を検証した。

  そこでは、「騒ぎましたな。見出し自体が一種の評論になっていた」 という軍事ジャーナリスト・前田哲男氏の 「日本政府も 『飛翔 (ひしょう) 体』 と言っている段階で 『ミサイル』 と報道したのでは、それ自体が1つの立場を選択したことになる」 ということばを紹介、在京各紙の見解をただしている。
  さらに、「ミサイル騒動の本質は対北朝鮮外交だったはず。結果的に日本の外交は発射を止められなかった」 「日本のメディアは北朝鮮の 『全面対決』 『戦争も辞さず』 といった激しい言葉に安易に反応してミサイルの恐怖感を増幅させ、 結果的に北朝鮮の虚像づくりに手を貸してしまった。金正日のミサイルパフォーマンスを手伝ってしまったといえる」 という情報誌 「リムジンガン」 編集人・石丸次郎氏や、 「メディアは有事さながらに 『お国の一大事だ、頑張らなきゃ』 と、異を唱えるどころか先導した。 特にテレビは過剰報道。どこかの国のアナウンサーとダブってみえるアナもいた」 という田島泰彦上智大教授の指摘を紹介した。

  こうした政府の姿勢と報道の結果として、「ミサイル防衛強化」 と 「北朝鮮には強硬に対応すべきだ」 という世論が形成された。
  読売新聞が4月3日午後から5日夜にかけて実施した電話による全国世論調査によると、北朝鮮のミサイル開発に不安を感じるかどうかでは、 「感じる」 と答えた人は88%、「感じない」 は11%だった。そして、発射に 「日本政府は制裁を強めるべきだ」 と思う人は78%、「その必要はない」 は16%だった。
  また、4月10−12日実施のNHKの電話世論調査によると、今回のミサイル問題の政府の対応について 「大いに評価する」 は23%、 「ある程度評価する」 は45%、「あまり評価しない」 20%、「全く評価しない」 は7%だった。 「ミサイルについて」 という質問自体、既に誘導されているわけだが、それにしても、どこまで 「事実」 が報じられたのか、問題を残している。
  メディアは 「事実」 を報道しなければならない。しかし、それは常に、その影響を考え、何のために報じるかを検討し、考えて報じることが大切だ。

  もともと、政治体制も、政治的価値観も、民族的習慣も全く違う隣国。北朝鮮の問題を考えるとき、こうした基礎的なことを避けて通るわけにはいかない。 問題を解決し、平和を進めていくためには、緊張をあおる報道を広げるのではなく、事実を知りあい、交流を深める中で、 同時代に生きる人間としての共感を創っていく以外にない。
  北朝鮮は既に国連加盟国であり、国交がない方が不自然だ。今回国民の中に、北朝鮮についての不安が生まれるのも、 きちんとした直接対話のルートが持たないためだ。拉致問題も、相手と直接交渉して初めて解決できることで、「力」 で解決できることではない。
  そうした場や雰囲気を作るのも、メディアの本来の仕事である。
  それを考えると、今回、政府のキャンペーンにあまり疑問を差し挟まず、客観報道という名の事実報道によって、 翼賛的になってしまったメディアの責任は大きいのではないだろうか。
2009.4.20

追記:

  ▼外務省が意図的に「インチキ翻訳」
  前述のように、国連安保理は13日、「発射」 を非難する議長声明を出したが、その後日本政府は、 これを 「北朝鮮によるミサイル発射に関する国連安保理議長声明の発出」 とした文書を配布したことが明らかになった。

  これは、外務省総合政策局国連政策課が作成したもので、「4月13日(月)午後、(NY時間、日本時間14日(火)未明)、 国連安保理は、北朝鮮によるミサイル発射を安保理決議第1718号に対する違反として非難し、北朝鮮に対して決議1718号の完全履行を求め、 また、決議1718号の履行を徹底するための具体的手続等を盛り込んだ議長声明を発出した」 とし、「議長声明の主要点は次の通り」 として、 次のように4項目を 「要約」 している。

  「・ 決議1718号違反 (in cintravention of) として、発射を非難 (condemns)。
  ・ 北朝鮮が決議1718号を完全に遵守しなければならないことを改めて述べ、北朝鮮に対し更なる発射を行わないことを要求し (demands)、 すべての加盟国が決議1718号を完全に遵守することを要請。
  ・ 団体及び品目の指定を通じて決議1718号の本文8により課された措置を調整することに合意し (agrees)、対北朝鮮制裁委員会に対し、 このために実施した任務の結果を2009年4月24日までに安保理に報告するよう指示し、さらに、委員会が行動しない場合は、 安保理が2009年4月30日までに措置の調整のための行動を完了することに合意。
  ・ 安保理は、6者会合を支持し、その早期の再開を要請し、2005年9月19日の共同声明の完全な実施を求める。」

  この議長声明に、「ミサイル」 の言葉がないことは、案の段階で既に報道されていたが、実際に発表された英文にも、確かに 「launch」(発射) とあるだけで、 「ミサイル」 の言葉はどこにもなかった。
  ところが、外務省国連政策課が発表した文書は、この 「発射」 を、「ミサイル発射」 と 「翻訳」 していたわけだ。

  これを見た議員からの問い合わせにも、「なお、お問い合わせありました 『ミサイル発射』 の議長声明における英語での表現は “launch” となっております」 と平然と答えた、という。

  問題なのはメディアだ。14日付各社は、この 「インチキ翻訳」 を指摘することなく、「北朝鮮のミサイル発射を…非難し」(読売、東京、産経=15日付朝刊) 「ミサイル発射問題で、…発射を…非難する…」(朝日、毎日) などと報道した。
  日本政府は確かに、「飛翔体」 を 「ミサイル」 に変更し、発射されたのは 「ミサイル」 だと断定した。 しかし、国連安保理議長声明はあくまで 「発射」 への非難であって、「ミサイル」 と断定してはいない。
  どうしてこんなつまらないことをするのだろうか? 「事実」 は 「事実」 である。日本政府も、マスコミも、問題だ。
2009.4.24