2010.2.9更新

大学生70日間世界旅日記
〜中央アジア番外編 (2) ウズベキスタン〜
相川 和真
目次

  2009年8月25日、旅2日目は午前9時に起床。まず僕たちにはやらなければならないことがありました。それは帰国便が出るカザフスタンのビザをとることです。 これをとらないと日本に帰ることが出来ません。ということでこの日は早速カザフスタン大使館へ向かいました。 運がいいことに宿からタクシーで10分くらいのところにあったので、すぐ着きました。到着するや否やなんと突然雨が降ってきました。 ウズベキスタンの8月の平均年間降雨量は2mmということを知っていたので、なんとついてないのかと思いました。 しかし、むしろこの地で雨に降られることが稀有なことなので、祝福の雨と捉えることにしました。
  そんな雨の中、大使館前には既に行列ができていました。何をどうしたらいいのか全く分からないまま行ったので、とりあえず行列に並んでいました。 そして約1時間後、ようやく中に入ることが出来ました。金とパスポートさえあれば取れるだろうと思っていましたが、なんとパスポートコピーが必要とのことでした。 宿に置いてきたバッグにはあったのですが、持ち歩いていなかったためこの日はビザをとることが出来ませんでした。 このときは少し焦りました。というのも、ビザ取得にどれくらい時間がかかるかもわからず、ウズベキスタンの滞在のリミットはビザの関係上、 入国した日を含めても10日間しかなかったからです。


タシケントの大通り

  その後は気を取り直して、街を観光することにしました。お腹もすいていたので近くにあった屋台で飯を食べました。 軽く食べるつもりが、いざ料理が運ばれてくるとがつがつ食べました。適当に頼んだので何がくるかわからなかったのですが、 出てきたのはなんと鶏をまるまる一匹焼いたものでした。二人分頼まないで正解でした。大きさにして大体ケンタッキーが10本くらいの量でした。 こっちに来て初めて食べた食事のせいか、とてもおいしかったことを覚えています。調子に乗って食後にデザートなんかも食べたりして、会計は一人800円くらいでした。 ぼられたか食い過ぎたかは分かりませんが、さすがに一食800円もかけていたら旅の途中で金が尽きてしまうので、これ以降 「贅沢は敵だ!」 と思い込むことにしました。


バザールの賑わい

  食後はバザールや博物館などに行き、夕方頃にスーパーで買い出しをしてから宿に戻りました。昼食の反省を踏まえて、夕食は安いビールとカップ麺で済ませました。 ぐだぐだしながら酒を飲んでいると、突然部屋をノックする音が聞こえました。警戒しながらもあけると、なんとまあ美しいロシア系の顔立ちをした女性がたっていました。 鶴の恩返し的な話かと思いましたが、善行をした覚えはありません。何かと思っていると、タバコをくわえながらライターを貸してくれというようなジェスチャーをしていました。 なんだと思って火を貸したら 「ラフマット」 (ありがとう)と言ってさっさと行ってしまいました。僕がパンツ一丁でドアがあけたのが間違いだったのかもしれません。 その後風呂に入りあがると、連れがドーナツを持って興奮していました。
  話を聞くに、どうやらさっきの女性が火を貸してくれたお礼にとわざわざ部屋にまできてドーナツをくれたというのです。誰がどう考えても怪しい展開です。 基本的に外国に行ったら、自分で買った物以外は色々とリスクがあるので口にしません。 睡眠薬を入れるのが常套手段ですが、青酸カリなんか入れられた日には即死です。連れも怪しんでいたので僕が風呂から出るまで食べませんでした。 相談した結果、大丈夫だろうという結論に達しました。あまり人を怪しんでいても旅を楽しめないし、せっかくのお礼を台無しにするのは気が引けたからです (こういう考えが危ないこともあるんですけど…)。何しろ火を貸したときは僕しかその人を見ていないし、僕が風呂に入っていたときは連れしかその人を見ていないので、 ドーナツをくれた人が火を貸した人と同じであるという保証はありません。 しかし、本当においしそうなドーナツだった上にろくなものも食べていなかったので僕たちは食べるという結論に達しました。
  恐る恐る食べてみると、いきなり腹痛と眠気が襲ってきて、その場に倒れ込んだ…ということもなく、とてもおいしいドーナツでした。 このような、日本では決して味わえない刺激的で非日常的な事を体験できるということも旅の醍醐味かもしれません。 この日は人の優しさに触れ、彼女の虜になったまま眠りにつきました。(薬の効果はありませんでした。)


サーカス劇場

  旅3日目の26日、ビザをとるためにまたもや早めに起床。早速大使館へ向かうが、前日より長い行列ができていました。 2時間ほど待ってようやく中に入れると思ったら、なんと12時30分で受付業務終了と言われ、茫然自失…。 「これだけ待ってそれはないだろ! 俺らは今日ビザ申請して明日カザフスタンに行かなきゃ日本に帰れないんだ!(ウソ)」 みたいなニュアンスのことを、 連れが持っていたロシア語の指さし会話帳を使って必死に交渉しました。その甲斐あってか、粘り強く交渉していると中に入れてくれることになりました。 大使館という公的な機関に属する人間が、その場の判断で臨機応変に対応してくれるというのは日本では考えられないことなので、 何事もやってみるもんだなとこのとき思いました。中に入り、出された書類に必要事項を記入して提出しようとしたところでまたもや問題発生。

  大使館員 「ウズベキスタンビザのコピーは?」
  僕 「持ってないよ」
  大使館員 「じゃあだめだね」
  僕 「ちょっと待ってよ! この辺でコピーできるとこない?」
  大使館員 「となりのネットカフェで出来るよ」
  僕 「よし! 一回出るけどもう一回入れるよね?」
  大使館員 「ああ」
ということで、僕は大使館のすぐ隣にあったネットカフェに行きました。店の前には店番している同年代くらいの若い兄ちゃんが4〜5人いました。

  僕 「ちょっとこれコピーして欲しいんだけど」
  青年 「今は昼休憩中だから無理だね」
  僕 「いや、頼むよ! すげー急いでるんだ!」
  青年 「いや、今はやってないからダメだね」
  僕 「ほんとお願い!(ここで賄賂をちらつかせる)」
  青年 「(顔がにやけて)…う〜ん、わかった。でもお金はいらないよ」

  こんなやりとりをした後、店の中に入れてもらいパソコンでスキャンをしてもらうことになりました。さっきのやりとりのおかげか、かなりフレンドリーに接してくれました。 スキャンしている間もパソコンに大量に入ってるかわいい女の子の画像を見せられて、「こいつかわいいだろ?」 と言われたので、 「いや、俺はこっちだね!」 みたいなことを話していました。そんなことをしてるうちにスキャンが終わったので、礼を言って無理矢理お金を渡して急いで大使館に戻りました。 ようやく書類を提出できましたが、受取りはどんなに早くても明日の17時だと言われたので、そこはそのまま受け入れて大使館を出ました (ここでも賄賂をちらつかせて交渉しましたが、全くききませんでした)。 ちなみに賄賂という考えは今まで海外に行った経験から大体の場所で通じるだろうと思っていて、 今回初めて実践に移してみました。金にものをいわすつもりはないのですが、今回は崖っぷちに追い込まれていたので仕方なく使いました。。。

  次は初日に両替した現金がなくなりかけていたので銀行へ向かうことにしました。いざ両替をしようと行員に聞くと、パスポートを出せと言われました。 しかし、このときカザフビザを申請したときにパスポートも預けなければならなかったので当然持っていませんでした。 仕方なく両替は諦め、相当お腹がすいていたので昼食を食べるため、近くにあった大衆食堂に入ることしました。 色々と疲れていたので調子に乗って頼んでいたら一人700円くらいの金額になってしまいました。 店を出た後、二日続けてなんという失態…と思いましたが、その時はビザが無事取れそうだという喜びの方が大きかったので、何も考えないことにしました (人はこうやって身を滅ぼしていくのかということが分かった瞬間でもありました・・・)。

  お金がさらに少なくなったので、街の数少ない高級ホテル内にあるATMでお金をおろすことにしました (高級ホテルにATMがあるという情報は銀行に行った際に聞きました。)。僕はATMが使えることを見越して、あまり現金を持っていませんでした。 そしていざおろそうとしたら、引き出せず。いままで同じカード、同じ方法で何回も海外で現金を引き出せているのにおかしいと思いましたが、 どうやってもできないので仕方なく保険のために持っていた日本円の現金1万円を現地通貨に両替しました。 この瞬間から僕たちの貧困生活が始まりました。二人分あわせた手持ちの現金の足した数を残りの旅行日数で割ると、 一人一日約800円で生活しなければなりませんでした。もちろん観光費用、移動費、宿代全て含めてです。このときはかなり絶望しました。 出費を控えるため、夜食はコーラ一本とスニッカーズで済まして宿に戻りさっさと寝ました。


タシケント市2200年記念

  4日目の27日、9時過ぎに起床しました。このホテルはバイキング形式の朝食がついてきたので、それはもう嫌と言うほど食べておきました。 そしてこの日は運命のカザフスタンビザを受け取る日でした。チェックアウトする際、連れがたまたま持っていたクレジットカードで宿代を支払えるか試したところなんとOK。 この瞬間わずかな望みが出てきました。これからは宿代は全てこのカードで切って、他の現金出費を最大限抑えるという作戦でこの旅を乗り切ることにしました。 ビザの受取が17時だったので、それまで時間をつぶすことにしました。ネットをやりにいって今後の情報収集をしたり、 博物館に行ったり、カフェでだらだらしたりしているうちに17時になり、すぐ大使館へ行き無事にビザを取得。
  これで帰れる。そして、ヌクス(Nukus)という街へいくためのフライトを予約するために、ウズベキスタン航空のオフィスへ向かいました。 一人約57ドルの出費をしてチケットを無事手に入れました。もちろん支払いはカードでした。 次の日の夕方発の便だったので、この街にさらに一泊しなければなりませんでした。安宿を探しましたが、探しても中々ないので一人一泊60ドルの宿に決めました。 もちろんカードが切れるところです。荷物を置き、さすがにこの日くらいはと、夕食を食べに行きました。宿の近くにあった大衆食堂に入り一人約300円の出費。 そしてこの街での最後の晩餐ということで、帰り際にビールを買い、乾杯してから寝ました。


宿の人と

  5日目の28日、夕方の便でヌクスに向かうまで暇だったので、チェックアウトぎりぎりの11時頃まで寝て、12時頃に宿を出ました。 ちなみにタシケントで観光らしい観光はほとんどしませんでした。というのは、もちろんお金がなかったというのもあるのですが、あまり見所がなかったからです。 この町では、バザールにいってふらふらしたり、あてもなく歩いていました。バザールでは所狭しと出店が並んでいて、とても活気がありました (この二日後にここで銃撃戦が起きましたけど 笑)。カオスな香りが程よくあって僕はすごく好きでした。 またしても手持ちの現金がなくなりかけていたので、残りの日本円を全てUSドルに両替することにしました。 両替を済まし、フライト時間までカフェでだらだらして、何事もなく無事フライトへ。ちょっとびっくりしたことはフライトが自由席だったこと。 僕らが乗った便だけだったかもしれませんが、飛行機で自由席という初めての体験にドキドキしました。 そして僕たちはこの旅2つめの都市であるヌクスという街に到着しました。