チベットにおける人権状況に関する声明

2008年3月27日


                          ヒューマンライツ・ナウ
理事長   阿部浩己
事務局長  伊藤和子

  国際人権団体ヒューマンライツ・ナウ (本部・東京) は、チベット自治区および隣接するチベット人居住地における人権状況につき、深刻な懸念を表する。

  報道によれば、首都ラサにおいて、3月10日、僧侶により、平和的なデモンストレーションが行われ、 これに対し、中国当局は、デモに参加した僧侶約60名の身体拘束に及んだ。

  翌日、身体拘束された僧侶らの釈放を求めるデモを600人規模で行ったのに対し、中国当局は催涙弾等を使用して弾圧し、参加者を拘束したという。 その後、ラサを中心に流血の事態に発展した。

  中国当局は、住民18人と警官1人が死亡し、600人以上が負傷したと述べ、抵抗運動を明らかな犯罪行為だとして、制圧の正当性を強調する。   一方、チベットからの亡命者らグループは、当局の武力弾圧によって130人もの市民・僧侶が殺害された、と発表している。
死傷者数はさだかでないが、公表されているチベットの僧侶・市民らが殺害されている写真や、中国当局が市民を強制的に連行している映像によれば、 当局による人権侵害によって、相当数の死傷者が発生したこと、デモ参加者が強制的に連行されたことが認められる。

  また、この事態に関連して多くのチベット人がいまも拘束され続けている。   ヒューマンライツ・ナウは、チベット人による暴力行為に遺憾の意を表明するが、 中国当局が抗議行動に対して死傷者を出す武力鎮圧に至ったことは生命・身体の自由に対する重大な侵害といわざるを得ない。 また、集会・表現の自由は尊重されなければならず、平和的なデモ参加者に対する拘禁は恣意的なものとして許されない。そして、拷問は絶対に許されない。

  現在開会中の国連人権理事会は、この事態に対処すべきである。

私たちは、国連人権理事会に対し、
1  チベットの事態に関する緊急会合をただちに開催すること

2  関連する国連特別報告者も含む、独立した調査団の派遣を行うこと

を求める。

私たちは中国政府に対し、
1  世界人権宣言、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」 などに定められた国際人権基準に従い、集会・表現の自由を尊重すること

2  平和的なデモへの弾圧を行わないこと

3  上記国際人権基準に従い、恣意的拘禁をただちにやめること

4  拘束している者すべての氏名と拘束場所を公開すること、拷問を絶対に行わないこと

5  国連の 「法執行官のための行動綱領」 および 「法執行官による有形力および火器の使用に関する基本原則」 を堅持すること

6  チベットの人権状況に関する国連の調査を受け入れ、ラサをメディアに対し全面的に公開すること

を求める。

また、隣国である日本政府に対しては、
  今後予想される首脳会談をふくむあらゆる機会に、チベットの人権問題改善について中国政府に申し入れを行うなど、事態の改善に努めることを求める。