≪声明≫
アウンサンスーチー氏への不当判決に抗議し、
同氏とすべての政治犯の即時・無条件釈放、
民主化対話の開始を求める。

  8月11日、ビルマ軍事政権は、ノーベル平和賞受賞者であるビルマ民主化指導者アウンサンスーチー氏に対し、禁固三年の刑を言い渡し、 その直後に自宅軟禁一年半に減刑する旨発表した。

  東京を本拠とする国際人権NGOヒューマンライツ・ナウは、この不当極まりない判決に対し強く抗議するとともに、軍政に対し、 アウンサンスーチー氏およびすべての政治犯の即時・無条件釈放、そして民主化勢力、少数民族との対話による政治プロセスの開始を強く求める。

  今回、アウンサンスーチー氏が有罪とされた根拠は、5月初旬に同氏宅に忍び込んだアメリカ人男性との接触が、 自宅軟禁の条件に違反したというものである。しかし、同氏に対する自宅軟禁は、そもそも何らの正統な根拠もない違法な民主化弾圧・恣意的拘禁であり、 国際社会は一致して、同氏の即時釈放を求めてきた (国連総会決議 2009年1月23日等)。

  軍政はこれに応じず、昨年5月27日にアウンサンスーチー氏の軟禁期限が切れたにも関わらず、何らの根拠もなく軟禁を一年延長すると宣言した。 このような違法な自宅軟禁の条件に違反したことを理由とする訴追はそもそも不当であり、有罪判決は何らの正当性も認められない。

  軍政は、2010年に総選挙を実施するとしているが、アウンサンスーチー氏が前科を科され (2008年に軍政が強行した憲法は、 刑事犯前科のある者の被選挙権を認めていない)、自宅軟禁が1年半継続されれば、同氏の総選挙への参加は不可能となる。 軍政が実施しようとする総選挙が、アウンサンスーチー氏を排除した、民主化の名に到底値いしないものであることはいよいよ明瞭となった。

  世界各国は、この判決に対する非難の声明を次々に表明している。バンキムン国連事務総長は、アウンサンスーチー氏の「即時・無条件」釈放を求め、 「アウンサンスーチー氏とすべての政治犯が釈放され、彼らが自由かつ公正な選挙に参加出来ない限り、 政治プロセスの信用性は問われる」 と指摘している (8月12日付声明)。

  軍政は今こそ、国際社会の非難に耳を傾けなければならない。

  インドネシア、ジャカルタに集ったビルマ民主化勢力・少数民族グループは8月13日、「国民和解の提案」 (Proposal forNational Reconciliation) を発表し、 民主化に向けた一致した提案を示し、軍政に対して民主化プロセスのテーブルにつくよう呼びかけた。

  今こそ国際社会は、ビルマ民主化勢力・少数民族グループが一致して呼びかける、民主化への交渉提案を現実のものとするため、軍政への説得をはかり、 交渉のテーブルにつかせる最大限の外交努力をすべきである。

  軍政が強行しようとする2010年の総選挙は迫ろうとしており、ビルマ国内における国際人権法・人道法に対する重大な違反は日に日に深刻さを増している。 日本政府を含む国際社会には、単なる言葉だけの批判を越え、一致した行動が求められている。
ヒューマンライツ・ナウ (2009年8月15日)