「すき家」未払い残業代事件での
ゼンショーからの刑事告訴についての声明

首都圏青年ユニオン
同すき家組合員事件弁護団


1、 株式会社ゼンショー (以下、「ゼンショー」 という。) は、「すき家」 で働く東京公務公共一般労働組合青年一般支部 (以下、「首都圏青年ユニオン」 という。) の組合員2名に対し、1名については仙台地方検察庁に対し詐欺罪、窃盗罪にて仙台地方検察庁に対し刑事告訴し、 1名については岡谷区検察庁に対し虚偽告訴罪にて刑事告訴をする予定と伝えられている。
  前者については、@ 組合員が就労していない日に就労したかのように勤怠報告書を提出して賃金を詐取した  A 組合員が店舗の食品を勝手に飲食して窃取したとの内容である。 後者については、平成20年12月26日付で組合員がゼンショーを労働基準法違反で刑事告訴したことが虚偽告訴であるとの内容である。
  このたび、このうち前者について、3月末日までに、仙台地方検察庁は不起訴処分の決定を下した。
  首都圏青年ユニオン及び当該組合員の代理人でもある同すき家組合員弁護団は、上記決定を歓迎するものである。

2、 そもそもこのゼンショーの2件の刑事告訴は、首都圏青年ユニオンの組合員たちが、ゼンショーを刑事告訴した事件に対するいわば報復、 あるいは恫喝の道具として活用されている。

(1) 2008年4月8日、首都圏青年ユニオンの組合員3名が、仙台労働基準監督署に対して、 労働基準法の定める時間外割増賃金 (以下、この賃金のことを 「残業代」 という。) の未払いがあるとして、ゼンショー、 及びゼンショーの代表取締役小川賢太郎氏を労働基準法違反で刑事告訴した。 同年12月26日、やはり首都圏青年ユニオンの組合員1名が、岡谷労働基準監督署に対して、個別の賃金未払いについて刑事告訴を行った。
  首都圏青年ユニオンは、組合員たちの要求である残業代等の支払いなどの点についてゼンショーに対し団体交渉を要求したが、 ゼンショーは、2007年2月以降、団体交渉を拒否している。やむを得ず、東京公務公共一般労働組合が行った東京都労働委員会に対する救済申し立てにおいても、 ゼンショーは、直接雇用が明確にもかかわらず 「組合員たちとの間で委託契約を行っているのだから団体交渉をする前提がない」 などの不誠実な対応に終始している。
  組合員たちは、以上の経緯を経て、刑事告訴に踏み切ったのであった。

(2) この組合員たちの動きに対し、ゼンショーは、刑事告訴という対抗手段を講じることにしたものである。
  前者の刑事告訴は、賃金支給のもととなるデイリー勤怠報告書の記載についてこれまで問題視せずこれに基づいて賃金支給を行っているのに、 これが信用できないとして詐欺罪とするもの、社内で認められている飲食の範囲内の飲食をことさらに窃盗罪として指摘するものである。
  後者については、ゼンショーより岡谷労働基準監督署の担当官に対して 「刑事告訴されたこと自体が誣告罪であるから、 誣告罪ということで検察庁に刑事告訴する予定で準備を進めている。その覚悟で会社も対応しているということを本人に伝えてもらいたい」 と言った事実が判明した。 これは組合員の刑事告訴そのものを、虚偽の刑事告訴と指摘して、労働基準監督署を介して組合員に伝えさせ、 組合員を恫喝し告訴の取り下げや請求の断念に追い込もうとするものである。
  いずれの場合も、刑事告訴として全く成り立つ余地のない事項を取り上げて、ことさらに刑事事件化しようとすることで、組合員に対する威嚇、 威迫していることは明確であって不当極まりない。

3、 12月10日、仙台労働基準監督署は、「すき家」 で働くアルバイト従業員2名につき、2005年12月から06年9月に対する残業代の未払いがあるとして、 労働基準法違反 (賃金未払い)で、ゼンショーと、ゼンショーの給与担当幹部を仙台地方検察庁に対し書類送検したが、 仙台地方検察庁は、1月19日までにこの件を不起訴処分とした。この処分自体は不当ではあるが、給与担当幹部に対してはあくまで 「起訴猶予処分」 であり、 ゼンショーが犯罪を行ったこと自体は検察庁でも明確になったのである。

  以上からすれば、今回ゼンショーの刑事告訴のうち1件がすでに不起訴処分となったことは、当然のことである。 これは違法行為に対する報復は許されないということが検察庁の判断としても確認されたという意味で当然である。

4、 岡谷労基署に組合員が告訴した事件は、現在も同労基署において捜査中である。
  労働契約を締結したら、労働時間を管理把握し、実際に従事した労働時間に対する賃金を支給するのは、労働契約を締結した使用者の法令上の義務である。 しかし、ゼンショーは、この義務に単に違反しただけではなく、法を守るように発言した従業員に対して刑事告訴をほのめかすことで恫喝しているのである。 このようにゼンショーは、法令違反を認めるどころか、これをただし是正する意思を全く持たない極めて悪質な態度を取っている。

  岡谷労基署及び岡谷区検察庁は、かかる悪質な企業に対し、持てる権限を駆使して、毅然たる措置を執るべきである。 そうでなければ、「派遣切り」 「非正規切り」 などの雇用不安に国が対処するといくら言明しても、それは空疎なかけ声にしかならないことを深く自覚すべきである。 この観点から、首都圏青年ユニオンの組合員が刑事告訴した件についてこそ立件し、ゼンショーが行う卑劣な行為について毅然に対応することを期待するものである。
以 上  

2009年4月15日
首都圏青年ユニオン
同すき家組合員事件弁護団