国民投票法案の慎重審議を求める会長声明

茨城県弁護士会

  衆議院本会議は、4月18日、憲法改正の手続きを定める国民投票法案の与党修正案を可決し、参議院に送付した。

  しかし、同法案の内容については、様々な問題点が指摘されており、充分な審議が尽くされたとは書い難い。

  同法案は、国家の根幹をなす重要な問題であり、慎重かつ幅広い角度から審議が尽くされるべきものであって、日本弁護士連合会が指摘した多くの問題は、 依然として残されており、良識の府たる参議院においては、とりわけ慎重な審議を求めるものである。

  国民投票法は、主権者たる国民が国の最高法規である憲法について意思を表明するという、いわば国の根幹に関わる重要な手続法である。 その日的に添うには、国民の意思が正確に反映される手続法でなければならず、同法案は、以下のような重要な問題を含んでいる。

  まず、この法案には、最低投票率に関する規定がなく、さらに「有効投票数の過半数」を超えれば、国民の承認があったものとされる。 しかし、この方法では少数で改正が承認されてしまう危険性をはらんでおり、民意が正確に反映するかどうかについて疑問が残る。 また文理上も積極的に憲法を変えることの意思を問うものであるから、少なくとも「投票総数の過半数」とするべきである。

  次に、国民の意思を正確に反映するには、投票対象は、できる限り個別的に審査されるべきであるが、同法案においては、 「内容において関連する事項ごと」 としており、複数の事項が一括して投票に付される余地が残されているため、国民の意思を正確に反映できるのか問題である。

  また、公務員や教育者がその地位の影響力、便益を利用して国民投票運動をすることはできないとしているが、本来、憲法改正という重要な国民の権利において、制限は必要最小限にとどめられるべきであり、自由な言論こそが保障されるべきである。この漠然とした規定によって、国民的議論を萎縮させてはならない。

  さらに、国民が賛否を自由に自主的に判断するにほ、改正案及びそれに対する意見について公正・公平な情報が提供されなければならない。 しかし、憲法改正案の広報に関して国民投票広報協議金が設置されるが、その構成員は原則として各会派の議員数の比率によるものとされる。 これでは反対意見の議員の意見は反映されないおそれがあり、公平な機会が期待できないのである。

  上記以外にも、国会発議から投票までの期間、メディア規制の問題、国民投票無効訴訟の管轄・提訴期間等の重要な点においても問題を数多く残しており、 国の根幹をなす重要な問題であるが故に、拙速に手続を進めることは、将来に多大な禍根を残すことになるのであって、 慎重かつ幅広い角度から審議が尽くされて然るべきである。

  以上の通り、本声明を発するものである。

                 平成19年4月18日
                     茨城県弁護士会 会長 足立勇人