憲法改正国民投票法案について
参議院における十分な審議を求める会長声明

大阪弁護士会

  与党は、4月13日に野党の反対を押し切って憲法改正に関する国民投票法案を衆議院本会議で可決し参議院に送付した。 憲法改正の手続に関する国民投票は国民の重要な直接の主権行使である。大阪弁護士会はすでに、2回にわたって与党案に重大な問題があることを指摘して、 反対あるいは慎重な審議を要望する会長声明を出してきた。この立場から、当会としては今回の与党側の採決強行はまことに遺憾であり、 改めて同法案についての十分な審議を求める。

  当会は、与党案および民主党の提出した法案(その各修正案を含む)には、一括投票の余地が残されていること、最低投票率の定めがないこと、 与党案ではテレビ、ラジオの有料広告の規制が弱く、資金力のあるものが広報手段を独占してしまう危険があること、 とりわけ与党案では公務員・教育者について広汎な運動規制がかかり、自由であるべき憲法改正問題についての論議の萎縮が起こることなどの問題点を指摘してきた。 しかしながら可決された法案には、これらの点がなんら反映されていない。

  一方、3月の末から衆議院憲法問題調査特別委員会の中央公聴会が2回、地方公聴会が新潟、大阪で開かれたが、 最初の中央公聴会では公募した公述人を採用しなかったこと、地方公聴会は3月28日一日で新潟と大阪でわずか2時間ずつもたれたのみであり、 これも公述人を公募せず政党推薦の公述人のみであったことなど、採決時期を予定したうえで審議日程を組み、広く国民的議論を尽くそうとする姿勢に欠けていた。 このように性急に設定された公聴会であるが、与党推薦の公述人からも憲法改正国民投票法案を政争の具にせず、十分時間をかけるべきであるとの意見がだされた。 各種の世論調査でも、今国会における成立を急ぐことなく、慎重な審議を求める声が多いことが示されている。

  いうまでもなく、憲法改正は国のあり方を決定する重大問題である。法案の審議手続についても拙速をさけ、広く国民的論議を尽くすことが必要である。 当会は、参議院においては、とりわけ最低投票率の定めがないことを含め上記問題点を広く国民に周知し、十分な審議を尽くすよう求める。

  2007年(平成19年)4月16日
                             大 阪 弁 護 士 会                  
会 長  山 田 庸 男