憲法改正手続法案の参議院における慎重審議を求める会長声明

山梨県弁護士会

  2007年4月13日、日本国憲法の改正手続に関する法律案 (以下 「憲法改正手続法案」 という。) が衆議院において与党単独で強行採決され、 16日から参議院で審議が開始された。その後、23日に参議院憲法調査特別委員会で参考人質疑が行われ、24日に仙台、名古屋両市で地方公聴会が開かれた。

  憲法は国家の根本規範であり、その改正手続には、主権者である国民の意思が十分に反映されなければならず、 国民の多数の賛成がなければ改正の効力は発生しないよう定めるべきである。憲法改正について規定する憲法96粂もその趣旨をあらわすものである。

  しかしながら、憲法改正手続法案においては、最低投票率の定めがなく、有効投票総数の2分の1を超える賛成で憲法改正が成立するとされることから、 仮に投票率40%であれば20%を超える賛成をもって憲法が改正されることになる。このことは、国民主権や硬性憲法の趣旨からも問題であり、 最低投票率の定めは必要である。

  また、国民投票運動については、罰則はないものの公務員及び教育者の地位を利用した活動が規制されており、 憲法改正に関する自由な議論が萎縮されること、テレビ・ラジオ・新聞等の有料広告の規制が不十分であること、 憲法改正案の発議から投票までの期間が短いこと、さらに関連条文の一括投票等、国民の意思形成に関して多くの問題がある。

  衆議院憲法調査特別委員会での審議がわずか55時間であり、中央公聴会、地方公聴会が合わせて4回しか開かれず、 衆議院においては、国民の十分な議論を経たものとは言えない。 当会は、参議院においては、形式的な公聴会の開催等に終わることなく、憲法改正手続法案の必要性も含めて、 広く国民の間で合意が得られるよう慎重審議を求めるものである。

2007年4月27日
                山梨県弁護士会  会長  小 澤 義 彦