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  「ビラ配布の自由を守る7・9集会」で、
高橋事務局長が映画「靖国」政治介入問題を報告


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  ビラ配布への弾圧事件が相次いでいる中で7月9日、「あぶない!言論の自由が! ビラ配布の自由を守る7・9集会」 が、 東京・日本教育会館一ツ橋ホールで開かれ、会場いっぱいの約950人が参加しました。
  一橋大学大学院の渡辺治教授が 「ビラ配布の自由と日本国憲法」 と題して記念講演したほか、 映演労連委員長の高橋邦夫さん (映画人九条の会事務局長) が映画 「靖国」 への政治介入問題を訴えました。高橋事務局長の訴えの要旨は以下の通りです。


  映画 「靖国」 の事件は、様々な問題を内包した事件だが、私が一番の問題だと思うのは、映画への公的助成を口実に、 与党の国会議員によって政治介入が行われたことだ。

  これは、安倍晋三らによる政治介入で内容が改ざんされたNHKのETV番組 「問われる戦時性暴力」 と同じ構図であり、 また自民党の礒崎陽輔議員が今年5月20日の参議院総務委員会でNHKスペシャル 「セーフティーネット・クライシス」 を攻撃したのも、同じ構図だ。

  そしてこの自民党議員の政治介入から、上映の 「自粛」 も、右翼団体などによる妨害運動も起こっている。

  まず、週刊新潮が昨年12月に 「反日映画に日本の助成金」 という記事を書いたが、これに触発された自民党の稲田朋美議員が2月12日、 「靖国」 への公的助成が適切だったかどうかを検証したい、映画も見たい、と文化庁に要請した。これが事の発端だ。

  すると文化庁はこれを拒絶するどころか、直ちに製作会社や配給会社に対して圧力をかけ、3月12日に検閲に等しい事前試写会をやらせた。 官僚は本当に与党議員に弱いが、それにしても与党の政治介入に手を貸した文化庁は情けないし、責任は重大だ。

  映演労連は4月7日、この問題で文化庁と交渉を持ったが、文化庁は 「今回の対応に間違いはなかった」 「助成が適正に行われたかどうか検証したい、 と議員に言われれば、断ることは難しい」 と開き直る始末だった。

  映画 「靖国」 に介入してきたのは、稲田議員だけではない。3月25日の参議院文教科学委員会では、 自民党の水落敏栄議員が 「政治的なものを意図する映画に助成金が出ていることは大問題だ」 などと文化庁を追及している。

  また3月27日には、同じく自民党の有村治子議員が参議院内閣委員会で、 こともあろうに 「靖国」 の助成承認にかかわった審査員が 「映画人九条の会」 のメンバーであることを問題にした。 有村議員は、「映画人九条の会のメンバーであることを知らないで審査員選んだのか」 とか、 「その審査員の政治的、思想的活動が 『靖国』 への助成決定に影響を与えたのではないか」 などと執拗に文化庁に迫ったのである。 まるで一昔前の 「赤狩り」 のようだった。

  さらに有村議員は、「靖国」 の中心的な登場人物である刀匠の刈谷直治さんに直接電話をして、 刈谷さんから 「出演シーンを全部外してほしい」 という発言を引き出すことまでしている。国会議員にこんなことをされたら、ドキュメンタリー映画は作れなくなる。

  しかし今回の 「靖国」 事件では、特筆すべき状況が生まれた。上映中止という異常事態に、映演労連をはじめ数多くの団体や映画人、言論人、 ジャーナリストなどが、相次いで上映中止と政治圧力に抗議する声明や談話を発表したのだ。 こうした抗議声明の機敏な広がりは、稲田議員や有村議員の思惑を一定打ち砕いた。

  また、こうした動きと連動するように、全国各地で 「靖国」 を上映しようという映画館が次々に現れた。 現在全国の上映、または上映予定館数は約40館以上に上っている。自主上映の計画も各地で進んでいる。

  ただ、これで問題は終わったわけではない。政治的、社会的テーマを持った映画ほど、大企業などのスポンサーが付きにくく、 こうした映画こそ公的な助成が必要だが、こうした映画がまた与党議員によって攻撃され、それに文化庁が追随したら、こうした映画への助成決定は難しくなる。 製作側も公的助成を受けようとすれば、こうしたテーマの映画を自粛することになる。映画の多様性が失われる。 芸術文化振興会の審査員の選任では、これから映画人九条の会の会員などが排除されかねない。

  今回の 「靖国」 事件は、こういう重大問題を産み落とした。問題は終わっていない。公的助成を口実にした政治介入を排して映画への公正な助成を取り戻し、 表現の自由を守ること、そして多様な映画文化の発展を目指して、映演労連は微力ながら今後も力を尽くしたい。