人権のつどい 「足利事件の真実」 に参加して

藤宗正志 山梨学院大学法科大学院生

  2009年12月5日、国分寺において人権のつどい 「足利事件の真実」 に参加した。 足利事件の当事者である菅家さんと再審請求を勝ち取った佐藤弁護士の講演ということもあり、会場は満席で多くの人の関心が寄せられているという雰囲気があった。

  そして、まず菅家さんの講演が始まる。進行者の質問に沿って菅家さんから生の情動が伴った事実が語られる。
  警察官が家に上がりこんできて逮捕状もなしに半ば強制的に連れていかれる。
  やったというまで 「お前が犯人だ」 という取り調べが延々続く。
  捜査官には足を蹴られるなどの暴行をうける。
  恐怖からやってもない自白をしてしまう。
  一審の弁護士には無実を訴えても相手にされない。そればかりか無実の主張の撤回を求められる。味方が一人もいなくなることを恐れて撤回してしまう。
  家族に無実を訴えた手紙も、極刑になるのが怖かったから家族にウソをついたという上申書を書かされてしまう。
  自分の無実を誰にもわかってもらえないという絶望感。
  怖くてしかたなかった刑事。
  刑務所での過酷な日々。
  体験した者しか伝えられない事実が語られていく。

  次に佐藤弁護士の講演が始まる。パワーポイントを使いわかりやすく足利事件の説明をしていただいた。
  菅家さんの自白の矛盾、犯人性を疑わせる事情が説明される。なぜ菅家さんが犯人ではないという疑問を持たなかったのかという思いに駆られる。 怒りが会場に充満する。
  やってもいない犯行の実況見聞をさせられる菅家さんの姿が映し出される。無実であるのに犯人であることの証拠作成に協力する菅家さんの姿。 無念さを感じずにはいられなかった。
  さらに、DNA鑑定は技術によるミスではなく、そもそもデタラメであったのではないかという疑問が呈示される。 真実に迫ろうとする佐藤弁護士の気迫を感じずにはいられなかった。

  あっという間に講演会は終了した。

  話はかわるが、私は法科大学院生であり弁護士を目指している。そして、来年司法試験の受験をする。
  しかし、虚偽の自白の強要、冤罪に腹が立たなくなったら司法試験を受けるのをやめようと思う。 無実を信じ、粘り強く弁護活動を続け再審を勝ち取った佐藤弁護士に憧れを感じなくなったら弁護士になるのをやめようと思う。 理不尽に怒りを感じなくなったら法律家になるのをやめようと思う。

  私にとって新たな決意をさせてくれる講演になった。
2009.12.6