「武器輸出3原則」 緩和を危惧

ジャーナリスト 池田龍夫 2011.12.26
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  一川保夫防衛相は12月24日の記者会見で、武器輸出3原則について 「従来の基本理念を崩すわけではないが、 新しい基準による枠組を作って対処したい」 と語った。野田佳彦政権が、戦闘機などの国際共同開発・生産を 「例外」 とする方針に踏み切ったことで、 「武器輸出3原則」 の国是が形骸化する恐れなしとしない。

  武器・国際共同開発のあおり
  武器輸出3原則は、敗戦後の日本が選択した抑制的な防衛政策の一つだ。 佐藤栄作政権(1967年)の意向を受け継いだ三木武夫政権が76年、 共産圏以外の国にも武器輸出を認めないと明記した 「政府統一見解」 と位置づけられてきた。 その後、83年に対米武器技術供与を例外扱いにしたことを皮切りに、緩和論議が浮上。 2004年(小泉純一郎政権)には、ミサイル防衛(MD)の米国との共同開発・生産を3原則の例外にするなどの動きが目立ってきた。 11年6月21日の日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)では、共同開発中の海上配備型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」 について、 一定の条件で第三国移転を認めることで合意している。

  野田政権は、航空自衛隊の次期主力戦闘機(FX)について、米国など9カ国が開発中のF35導入を決定したばかり。 最新鋭武器の国際共同開発はますます進んでおり、今回の 「3原則緩和」 もこの潮流に応じた判断に違いない。 決定に当たって、@ 装備品の海外移転は平和構築や人道目的に限定  A 国際共同開発・生産の対象国は同盟国の米国とNATO加盟国などの友好国に限定  B 共同開発の相手国との間で第三国移転の基準と体制の整備――を条件に 「武器輸出3原則の例外」 を認めるとしている。 武器輸出3原則自体は堅持すると政府は強調しているが、共同開発した武器や日本の技術が紛争当事国などに流出する恐れはないだろうか。

  平和・軍縮外交に重大な支障
  「今回の緩和は、一定の基準を満たすものは、一律に例外扱いする方針のようだ。要するに例外を設け易くする 『例外の普遍化』 を図ろうというのだ。 だが、手がけた武器が、なし崩し的に第三国に輸出される可能性があり、日本として有効な歯止めがかけられなくなる。 いま、アジア・太平洋地域では軍拡が進んでいる。 日本の3原則緩和に関係国の疑心を招けば、この流れを助長しかねない」 と、朝日新聞12月25日付社説が指摘。 琉球新報24日付社説では 「紛争当事国に武器が流れ出ない仕組みが保証されていない。 …武器輸出3原則は、非核3原則などとともに、日本の平和・軍縮外交の発言力の根拠となってきた。 今回の3原則見直しは『日本は武器輸出国になる』 というメッセージとなり、国際社会からの信用を失ってしまう。 当然ながら日本が推進してきた軍縮外交も説得力がなくなる。 国際社会で果たすべき日本の役割や安全保障に関わる国民的な議論、合意もないまま 『憲法の精神』 がなし崩し的に変更される事態は、 国民主権にも反する」との警鐘を鳴らしていたが、もっともな指摘である。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。