「全原発停止」 へカウントダウン
最後の 「泊原発」 3号機が5日にストップ
北海道電力 「泊原発」 3号機が定期検査入りする5月5日夜を最後に、国内50基の全原発が完全にストップする事態に追い込まれる。
好むと好まざるとにかかわらず、全国の集会やデモを反映して、全原発停止のカウントダウンが進んでいる。
政府は当面、大飯原発(福井県おおい町)再稼動の意向だが、周辺自治体との調整に難航して、打開の前途は極めて険しい。
瀬戸内寂聴さんらが 「再稼動反対」 のハンスト
原発再稼動に対する不安が各地に広がっている証拠で、その象徴的な現象が、
4月17日から座り込みが続いている 「経済産業省前テントひろば」 (東京千代区霞ヶ関)である。
「原発ゼロまであと×日」 の標識を掲げて、経産省前でハンストを敢行。全国から有志が入れ替わり立ち代り参加するイベントの様相を呈している。
5月2には瀬戸内寂聴さん、澤地久枝さん、鎌田慧さんらがハンストに加わって、「再稼動反対」 を訴えていた。
今月15日90歳になる寂聴さんは、戦時中を振り返って 「当時は大本営発表を信じていて愚かだった。ニュースは真実ではない。疑ってかかりなさい」 と話し、
「福島原発事故のような恐ろしいことは戦争以外に一度もなかった。原発事故は人災であり、
同じことを繰り返しては子供や若い人たちがかわいそうだ」 と道行く人に呼びかけていた。
全国に広がる市民運動
市民運動の高揚ぶりを示した社会現象として捉えるべきだったが、その期待に応える紙面を提供したのは、東京新聞2日付夕刊1面(トップ扱い)だけ。
毎日新聞が同夕刊第2社会面ベタ扱い、朝日新聞の3日朝刊第3社会面ベタ扱いを見て、市民サイドの視点の欠落を感じて愕然とした。
霞ヶ関の官庁街に各社記者クラブが置かれているのに、足で街ダネ≠探し回る記者魂を失ってしまったのだろうか。
一部のテレビやインターネット動画が、かなり詳しく 「ハンスト」 の模様を報じていたのに、新聞の問題意識の欠如が嘆かわしい。
福島原発事故から1年余、東北現地の放射能汚染対策が遅々として進まない現状に国民は苛立っている。
全国各地で自然発生的に市民運動が高まってきており、福井県おおい町、敦賀市などでも連日のように市民集会や勉強会が開催されている。
ところが、各紙県版のみの報道にとどまっているため、全国ニュースに発展しないネックがある。
今回の 「経産省前テント村」 での市民集会の社会的意味を重く受け止め、市民目線での報道に目を注ぐよう望みたい。
(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。


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