「東電の利益、家庭から91%」 に愕然
ジャーナリスト 池田龍夫 2012.5.25
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  電気料金値上げ圧力が強まっているが、果たして納得できるだろうか。 電力各社の値上げ申請の妥当性を検証する経済産業省の審議会 「電気料金審査専門委員会」 (委員長・安念潤司中大法科大学院教授)は5月23日、 全国10電力会社の収益構造を明らかにしたが、企業より一般家庭からの料金徴収が多すぎる実態に驚かされた。

  電力消費の多い企業を優遇、庶民にシワ寄せ
  2006〜10年度の販売電力量と利益の比率をまとめたものだ。全国平均では、企業向け販売量は62%、家庭向け38%だったのに対し、 利益は家庭向けが69%を占め、企業向けは31%にとどまった。
  その中でも、東電管内のアンバランスはひどすぎないか。 東電の企業向け年度平均電力量は1801億キロワット時で全体の62%。残り38%の1095億キロワット時が家庭向け。 ところが、利益は家庭向けが1394億円と全体の91%も占め、企業向けは143億円とわずか9%。ビックリする差別的料金≠ナはないか。

  「総括原価方式」 で自由自在の料金設定
  公表された数字によると、企業向け電気料金は1キロワット時平均11円80銭、家庭向けは23円34銭で、大口の企業への優遇措置が明らかだ。 家庭向けは、発電費用を上乗せする 「総括原価方式」 を操って、安定的利益を得るという殿様商売≠フような商法。 まさに 「電力独占」 の弊害を物語るものである。

  企業からの収益減少につき東電の責任者は、「中越沖地震で柏崎刈羽原発の全機停止や燃料価格高騰で、 燃料費の比率が相対的に高い(企業向け)自由化部門の収支が悪化したため」 と弁明するが、一般家庭の納得、協力は得られまい。
 
  「原発再稼動」前提の試算にも疑問
  東電の発表によると2013年度からの原発再稼動を前提に、現在家庭向け1キロワット時の料金23円34銭から25円74銭と10・28%の値上げを求めている。 さらに東電は、管内の原発が今後も再稼動しなかった場合、家庭向け料金の値上げ幅が15・87%になるとの見通しまで発表している。

  電力会社の構造的変革こそ肝要
  野田佳彦政権は、「大飯原発再稼動」 を模索しているようだが、福井県の一部を除き拙速稼動≠ヨの反対が強まっている。 「大飯」 打開の道も示せないのに、刈羽原発再稼動を前提にした数字を示されても空しい。 電気料金値上げの前に 「電力会社の構造的変革」 を打ち出さなければ、社会的混乱がさらに強まることが予想される。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。