「脱原発の灯 国会包囲」 の市民運動

ジャーナリスト 池田龍夫 2012.8.1
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  「脱原発の灯 国会包囲」――7月29日午後、「原発再稼動反対の抗議行動」 は最大規模の市民運動に発展。 霞が関から国会議事堂、首相官邸周辺は喧騒に包まれた。とにかく物凄い人並みで 主催者発表では延べ20万人が参加したそうだ。

  夕方からは蝋燭やペンライトをかざしてシュプレヒコールを挙げる場面が 「ユーストリーム」 によって動画配信され、リアルな映像に舌を巻いた。 市民13団体の協力が実ったもので、特定の政治色や団体色を排除した市民運動と言えるだろう。

  国会議員多数とドイツ 「緑の党首」 も参加
  7月16日の 「脱原発・10万人大集会」 について7月18日付本紙ウオッチ欄で取り上げたが、 在京6紙の報道が真っ二つに分かれている実態が変わらなかったので、「ニュース価値」 の観点から再度問題を提起したい。

  29日の集会には、民主党の川内博史議員ら数人、河野太郎・自民党議員ほか志位和夫共産党議員、福島瑞穂社民党議員らも参加。 亀井静香、田中康夫両議員らも駆けつけて、「再稼動反対」 を口々に訴えていた。ドイツの 「緑の党」 党首が演壇で訴えた姿に感銘を受けた。 このような場面が動画によって全国に一斉配信され、視聴者からはツイッターで反響が続々寄せられていた。

  朝日・東京新聞が1面トップ、読売など3紙は社会面ベタ扱い
  この現象は、好むと好まざるとにかかわらず、日本社会の一断面をリアルに捕らえている。そこで7月30日付朝刊6紙を点検した。 朝日新聞と東京新聞が1面トップ扱い。朝日は2面に詳報、東京は社会面トップに扱っていた。毎日新聞は社会面2番手扱いだった。 他の3紙の扱いや如何に? 読売新聞が第2社会面、日経新聞社会面、産経新聞が第3社会面に、すべてベタ扱いだった。

  市民運動について、これほど鮮明に評価が分かれたことに驚かざるを得ない。 NHKなどのテレビ放映も冷淡であるため、世の中の情報を遮断された一般国民が多いのではないか。

  日本にも 「緑の党」 誕生
  7月28日、日本にも 「緑の党」 が結成された。ドイツの 「緑の党」 に触発されたもので、クリーンエネルギーを目指す 「脱原発依存」 の市民運動は、 今後も高まるであろう。

  「原発再稼動に反対する何万人もの波が国会を包囲した。震災前の日本には戻さないという強い意志が、戻そうとする既得権益者たちと激しくぶつかり合う。 変えられない社会を変える。日本の将来を左右する闘いは続く」 との東京新聞30日付 「筆洗」 の指摘に、共感する。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。