病める米国≠ナまたまた銃乱射事件
ジャーナリスト 池田龍夫 2012.12.17
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  米国でまたまた凄惨な銃乱射事件が起きた。12月4日コネチカット州の小学校に20歳の男が銃を持って乱入、児童20人を含む計26人を射殺して犯人も自殺。 2007年バージニア工科大学での32人射殺事件に次いで犠牲者が多い銃乱射事件となった。 犯行前に自宅で母親を殺害しており、錯乱した男の犯行とみられる。
  イラク、アフガン戦争に喘いでいる米国だが、内政の経済危機に次ぐ銃乱射事件の続発は病めるアメリカ≠象徴するもので、 「民主主義の旗手」 の旗を降ろさねばならない危機的状況といえよう。
  全米ライフル協会によると、人口約3億1500万人の米国で、民間人が所有する銃は約3億丁。 建国当初から銃による自衛の権利を重んじる気風があり、憲法修正第2条は 「武器を保持、携帯する人民の権利は侵害されない」 と定めている。 ライフル協会はこれを根拠に、銃規制反対の圧力団体になっている。
  オバマ大統領は 「胸が張り裂けるような事件だ。意味のある行動を」 と訴えたものの、具体策に触れなかった。 この背景には、ライフル協会を中心とした米議会へのロビー活動を無視できないためという。 2007年の調査によると「100人当たり米国の銃の数は88・8丁で、2位のイエメンの54・8丁を大きく上回って世界一だ。 連邦最高裁は08年の判決で 「銃を自宅での自己防衛になどに使う」 と認定し、自宅での銃所持を禁止した法律は違憲と判断しており、 オバマ大統領には悩まし銃規制問題である。これらの背景を探れば探るほど、規制の早急な具体化は難しそうだ。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。