「第2の国会事故調」 を作れ
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.2.22
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  東日本大震災から間もなく2年。破壊された福島第1原発1〜4号機は未だに無惨な姿をとどめたままだ。 高放射能に阻まれて、作業は遅々として進まず、16万人にも及ぶ住民は故郷へ帰ることもできない。

  東電、国会事故調にウソをついて調査を拒む
  朝日新聞2月7日付朝刊は、「原子炉内部調査を求めた国会事故調に対して、 東京電力が 『建物内は真っ暗で調査できない』 と虚偽の説明をして調査を拒んだ」 事実をスッパ抜いた。 国会事故調は当初から、東電の津波原因説に対し、地震直後に非常用覆水器が破壊されたとの複合的要因を挙げていた。 原因究明のカギを握る重大ポイントであり、特に田中三彦委員(当時)は原子炉設計技術者として再三再四調査を求めていた。 東電が虚偽説明で隠蔽、炉内調査をさせないとは、犯罪的行為ではないか。

  原発事故の原因究明のため、民間事故調・東電事故調・政府事故調・国会事故調4つの組織ができた。 その中で国会事故調のみ立法府に設置され、行政府から独立した機関だ。民間人によって構成され、黒川清委員長のもと徹底した情報公開に基づき会を運営。 私も参員議員会館に足繁く通い、熱心な討議を傍聴させてもらった。

  調査報告書を審議しない国会の怠慢
  昨年、膨大な報告書が衆参両院議長に提出されたので、それに基づいた原子力政策論議を期待していたが、国会の反応が冷ややかなのに失望した。 政局の駆け引きに明け暮れる国会は、未だに報告書の趣旨を真剣に討議していない。

  こんな折、毎日新聞2月18日付朝刊オピニオン面に、黒川清・前国会事故調委員長のインタビューが掲載された。 示唆に富む発言の数々を興味深く読んだが、日本社会の構造的劣化を指摘していた一部を紹介しておきたい。

  黒川清前委員長が怒りの指摘
  ▼原子炉内の立ち入り調査、エンジニア出身の田中三彦前委員は、自分で4号機の原子炉圧力容器を設計したこともあり、どうしても確かめたいことがあった。 我々は放射線が高いぞと心配したが、田中氏は 「自分の身を守るのは自分でするから」 と東電に掛け合った。 ところが、中に入れないのは放射線のためじゃなく、「暗くて何も見えないからだ」 と断られた。それがウソだというのだから。
  ▼原発政策には、政・官・財・メディアが一体となって同じ方向へ進む 「規制の虜」 と言われる現象があった。 本来は規制しチェックすべき側が、規制される側に取り込まれるねじれた関係。責任ある立場の人が責任を果たさない構図だ。
  ▼除染から廃炉まで事故の後始末どう収束させるか、使用済み核燃料をどうするか、今後のエネルギー政策はいかにあるべきか、 国会に第2、第3の独立委員会を作って、調査すべきことはたくさんある。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。