いぜん打開策がない、日・韓政府の反目
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.7.12
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  安倍晋三政権発足から半年過ぎたが、対韓、対中外交打開の道はいぜん閉ざされたままだ。安倍首相は就任以来、米国、ロシア、欧州、東南アジア、 中東などの13カ国を歴訪。積極的な首脳外交は結構だが、中国と韓国訪問にはブレーキがかかりっ放し。 歴史問題、領土問題について政府の関係修復の動きが止まっており、北東アジアの安定を望む同盟国・米国の苛立ちも募っている。
  韓国の朴槿恵大統領は7月10日、日韓首脳会談について、「今も日本は独島(竹島の韓国名)や従軍慰安婦問題で、国民の傷に触れることを続けている。 未来志向で行こうという雰囲気の中でやらなければならない」 と述べ、時期尚早との考えを、またも表明した。

  慰安婦問題、米国での韓国ロビー活動が心配
  毎日新聞7月7日付朝刊は 「勢い増す韓国系ロビー」 の見出しを掲げ、1面2番手と4面全段で扱っていた。 米政府要人に対する韓国系のロビー活動の凄まじさを報じたもので、ニューヨーク郊外、ニュージャージー州東部バリセイズパーク市の中心部に、 「記憶にとどめる」 と銅版に刻まれた御影石像が注目を集めているという。 そこには 「大日本帝国政府の軍によって誘拐された20万人以上の女性と少女のために、人道に対する罪を忘れずにいよう」 と英文で書き込まれていた。 同紙特派員電によると、「建てられたのは2010年10月。人口約2万人の同市は韓国系の人が52%と全米で最も多く、今や全米各地で建立の動きがある。 ……そして今、新しい計画を進めている。ナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を記念するナッソー郡のホロコースト記念館で、慰安婦の特別展を開くというのだ。 今までだったら実現は疑われたろうが、実現へ向けた韓国系のロビー活動は米社会に大きな影響力を持ちつつあるというから、 等閑視できない大問題である。… …ワシントンにも、ホロコースト記念博物館がある。1993年の開館以来、3000万人以上が訪れたという。 無数に展示されている幸せだった頃の犠牲者たちの写真は、彼らの運命を知っている私に圧倒的な存在感を持って迫ってきた。 それだからこそ、『慰安婦問題は、アジアのホロコースト』 と言われると次元が違うのではないかという戸惑いを覚える。 対日批判で知られる民主党系の非政府組織アジア・ポリシー・ポイント理事長のミンディー・コトラー氏も 『ホロコーストと慰安婦を結びつけるというのは一部の人の考え』 と否定的だった」 と報じていた。

  安倍政権は反省を込め、世界に「日本の立場」発信を
  慰安婦問題に関し執拗な韓国のロビー活動は腹立たしいが、米国内でも日本の立場は厳しい。 米国では制度そのものが女性の人権無視だとの考え方が支配的で、国連をはじめ西欧先進国の批判も広がっている。 最近でも、安倍首相の歴史認識の不見識発言に続き、日本維新の会の橋下徹共同代表の慰安婦問題に関する発言が、内外で物議を醸している。
  安倍内閣は形成傍観の姿勢を改め、過去の日本の暴虐を反省、前向きな方策を世界に向け発信すべきである。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。