「廃炉回避」 のため狂奔する日本原電
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.7.15
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  原発だけに頼ってきた 「日本原子力発電所」 は、企業生き残りのため、血迷った方針を打ち出した。浜田康男社長が7月11日、 敦賀原発1、2号機(福井県)と東海第2原発(茨城県)の3基について、原子力規制委員会への再稼働申請を目指す意向を表明したことに、驚愕させられた。

  制委は敦賀原発直下に 「活断層」 と断定
  先に本欄で指摘したように、敦賀2号機は規制委が5月に行った調査で、原子炉建屋直下に活断層があると断定、遠からず廃炉の運命とみられていた。 運転開始から40年を超えている敦賀原発、東海村が反対を表明している東海第2原発再稼働を目論んでいるのは、 廃炉による企業負担を食い止めたいとの一念からだ。日本原電は 「断層は途中で消滅している」 との再調査報告を規制委に提出したが、 規制委の 「活断層」 判断を覆せるとは思えない。
  朝日新聞7月12日付朝刊は 「敦賀原発など3基の廃炉が決まれば、合わせて約2600億円もの企業損失となる。 その場合、純資産の約1600億円では損失をまかなえない。日本原電は4月に約1000億円の借金返済のため、電力業界に保証してもらって借り変えた。 電力業界が再稼働にこだわる背景には、廃炉を促す政府の取り組みの遅れもある」 と指摘している。

  国は廃炉基準を明確にすべきだ
  日経も7月13日付社説で 「自民党に、原子力規制委員会の新基準施行を受けた次の手立てを問いたい。 規制委が建屋直下に活断層があると断定した原発について,廃炉の判断を電力会社任せにするのか。 原発を国策民営で進めてきた以上、国が廃炉の手順を示すべきだ。使用済み核燃料の再処理や、 プルトニウムを原発で燃やす計画をどうするのかも説明不足だ」 と、政府に踏み込んだ対策を求めている。
  政府自民党は成長戦略の一環に 「原発再稼働と輸出」 を掲げたものの、参院選挙戦では、論議を避けている。 また憲法改正の花火≠打ち上げたが、世論の反対が選挙に不利とみて、逃げまくっている。 歴代自民党政権が 「安全神話」 を吹聴して、電力業界を動かし続けた責任大きい。 電力業界の腹のうちには、「国の政策に全面協力したのに、政府が救済の姿勢を示さないのは怪しからん」 との憤懣が溜まっているに違いない。 その背景には、「国の財政援助」 を引き出して、業界立て直しを図る深謀遠慮が潜んでいると思われる。
  場違いな話かも知れないが、朝日新聞6月29日付朝刊に、「日本憲法を改悪する人に、私の1票は預けません」 ――というパンチの効いた全面広告が人目を引いた。3600人を超す賛同者名を掲げた迫力は凄い。若い有権者の投票行動にも影響を与える気がする。
  既に計12原発の再稼働申請を受けた原子力規制委の作業は大変だ。政府や自治体からの有形無形の圧力≠ェ強まることも予想される。 田中俊一委員長のもと、初心を曲げずに再稼動の是非を判断してもらいたい。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。