高速増殖炉 「もんじゅ」 は破綻している

ジャーナリスト 池田龍夫 2013.10.14
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  文部科学省の作業部会(主査・山名元京大名誉教授)は9月25日、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅ(福井県)の研究計画案をまとめた。 高速増殖炉の技術確立に向けた研究を続け、運転再開から約6年後に継続の可否を判断するとしている。
  もんじゅは原発の使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクルの要となる施設だ。 それが1995年のナトリウム漏れ事故以降トラブル続きで、稼働できずに行き詰まっている。

  政府は 「延命ありき」 の政策を改めよ
  福井の隣県に位置する京都新聞は10月4日付朝刊に 「もんじゅ計画案 『延命ありき』 を改めよ」 との社説を掲げ厳しく批判している。
  「もんじゅとともに核燃料サイクルのもう一つの柱である青森県六カ所村の核燃料再処理工場もトラブル続きで、実用化のメドは立っていない。 核兵器に転用できるプルトニウムも海外での再処理で増え続け、世界の懸念が高まっている」 と主張。

  役に立たないのに、維持費だけで年間200億円
  さらに 「もんじゅに投じられた費用は1兆円を超える。停止していても維持費は年間200億円もかかる。 (政府は)もんじゅを 『中核的な研究開発の場』 と位置づけるが、もはや核燃料サイクルに見切りをつけ、廃炉こそ検討すべきだ」 との警告を発していたが、 共感する人は多い。電力供給に何ら役立っていないもんじゅに何時までも執着する姿勢こそ問題で、国費の無駄遣いそのものである。

  最優先課題は福島第1原発の汚染水対策だ
  一方、福島第1原発からの汚染水流出はますます深刻な事態になっており、各国も海洋汚染を心配している。 10月9日には新たな汚染水漏れが見つかり、水しぶきを浴びた作業員6人が被ばくしていたことが明らかになった。 このほか汚染水処理の切り札となる多核種除去装置 「ALPS」 もトラブル続き。 試運転を再開した9月27日以降、タンク内にゴム製シートを置き忘れたり、作業員の操作ミスによって停止を繰り返している。 7日には作業員が誤って原盤の停止ボタンを押し、1号機の炉心を冷やす注水ポンプが一時停止する事態まで引き起こしている。
  今後何十年と続くであろう、汚水処理と廃炉作業にとって、作業員の量と質の確保、士気の維持管理がカギを握っている。 東電はこの期に及んでも、▽責任の所在が不明確 ▽緊急的な口頭指示で作業予定表などのなどの改定が未実施  ▽東電と協力企業間の情報共有不足――などと分析するだけで、当事者意識≠ェ欠落していることに呆れる。
  いずれにせよ、当面の最優先課題は汚染水対策だ。安倍政権は口先の対応ではなく、もっと積極的な姿勢を示すべきである。 日本への国際信用を取り戻すために、真剣な対応を要望したい。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。