マララさん、オバマ大統領に訴える

ジャーナリスト 池田龍夫 2013.10.18
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  「世界一勇敢な少女」 と呼ばれるパキスタンのマララ・ユスフザイさん(16歳)が10月11日、オバマ米大統領夫妻とホワイトハウスで面談した。

  パキスタンへの無人機攻撃に抗議
  CNN13日配信によると、マララさんは大統領に無人機を使ったイスラム武装勢力タリバーン掃討作戦への懸念を表明、 「罪のない人々が殺され、パキスタン国民は反感を募らせている。代わりに教育に重点を置けば大きな影響を与えることができる」 と主張した。 ホワイトハウスは、女子教育の推進を訴え続けるマララさんの努力に敬意を表するとのコメントを発表したが、 無人機攻撃についての米側の反応は全くなかったのだろうか。
  遠隔操作による無人機の無差別爆撃、化学兵器の残忍さと同様恐るべき兵器である。直ちに 「無人機禁止」 に乗り出すべきである。

  タリバーンの銃弾を浴びる
  マララさんの父親ジアウディンさんは私立学校を経営する教育者で、マララさんもこの学校に進み医者を目指していた。 2009年1月、当時11歳だったマララさんは英BBC放送ウルドゥー語ブログにタリバーンの強権支配と女性の人権抑圧を告発する 「パキスタン女子学生日記」 を投稿、一躍有名になった。2012年10月9日、スクールバスで下校途中、タリバーンに襲撃され重傷を負った。 現地で弾丸摘出す術を受けたあと、英国の病院に移され、一命を取り止めたが、15歳の女子学生へのテロ事件は世界に衝撃を与えた。 そのマリアさんが、2013年7月12日国連総会で演説、多くの感銘を呼んでいる。

  ガンディーなど 「非暴力の哲学」 に学ぶ
  「2012年タリバーンは私の額の横側を銃で撃ちました。私の友人も撃たれました。でも、テロは失敗しました。 これによって、私に強さ、力、勇気が湧いて来ました。私は自分を撃ったタリバーン兵を憎んでいません。 これは、私が預言者モハメッド、キリスト、ブッダから学んだ慈悲の心です。 これは私がガンディー、バシャ・カーン、そしてマザーテレサから学んだ非暴力という哲学なのです。 そして、それは私の父と母から学んだ 「許しの心」 です。私の魂が私に訴えて来ます。「穏やかでいなさい。すべての人を愛しなさい」 と。 私たちはすべての子どもたちの明るい未来のために、学校と教育を求めます。私たちは目標のために一つとなり、連帯できるからです」 ――。 マララさんはCNNのインタビューに答え 「パキスタンの首相になりたい。政治を通して国家に貢献したい」 とも語っている。
  珠玉の言葉を散りばめた感動的な訴えが,胸に迫る。 インターネットで、長文の 「マララの文章」 を読んで、16歳の少女とは思えぬ 「哲学者・思想家の教え」 に、世界の人々は学んだに違いない。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。