普天間飛行場の辺野古移設問題とケネディー米大使の姿勢

ジャーナリスト 池田龍夫 2013.12.2
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  普天間飛行場(沖縄宜野湾市)の辺野古(名護市)移設問題が、にわかに慌しくなってきた。 仲井真弘多知事に政府が要請した 「辺野古沖埋め立て」 の回答が今月末か来春に迫っている。 また1月18日には名護市長選挙が実施されるが、保革一騎打ちの様相である。

  自民国会議員5人、党本部の圧力で 「辺野古容認」 に転換
  このため政府自民党幹部が沖縄に出向き、「県外移設」 を主張する沖縄県自民党が翻意するよう説得に乗り出した。 その結果、自民国会議員5人に続き、県議団(議員15人)も県外移設の公約をあっさり撤回した。 報道によると、保守系の2人が立候補を表明、三つどもえの様相。自民党は保守系候補の一本化を目指している。 この裏切りに怒った自民那覇1区市議団支部役員14人が辞任するなど、再び騒然となってきた。

  衆参多数を占めた自民党政権の驕り
  東京新聞11月28日付社説は、「自民沖縄県連が普天間飛行場の 『県内移設』 容認に転換するとは、どうしたことか。 『県外移設』 を独自に掲げていたが、撤回を求める首相官邸や自民党本部の圧力に屈したもので、有権者への裏切り行為だ。 ……沖縄県には在日米軍基地の約74%が集中している。 (池田注=日本全土のわずか6%の沖縄に肩代わりされっ放し)基地負担を負う県民は、これ以上の負担を望んでいない。 普天間は県外へ、という県民多数の願いを、政府や党中央がねじ伏せるのはいかがなものか。 衆参両院で多数を制した安倍自民党の 『数の驕り』 だ」 と一連の暴挙を糾弾している。

  米大使が沖縄の現状を見て、代替案を提示できるか?
  新任のキャロリン・ケネディー駐日米大使は11月27日、東京の大使公邸で沖縄県知事と初の会談を行った。 まず県知事が 「米軍基地の過剰な負担が県内にある。きちんと汲みとって解決に向け頑張ってもらいたい」 と要請。 大使は 「解決に努力したい」 と語ったのみで、普天間飛行場移設問題については、双方とも何も語らなかった。 沖縄早期訪問の問いに 「県民の声を聞きたい」 と応じた米大使の姿勢が問われる。

  かつてブッシュ政権時代、ラムルフェルド国防長官が普天間を視察した際 「世界一危険な飛行場」 と述べたが、 その後も普天間は米軍機墜落や騒音に悩み続けている。 米国には海兵隊のグアム移転、オーストラリア基地拡大、統合して太平洋の安定の計画が報じられており、米国も 「県外移出」 に腐心しているようだ。

  1月の名護市長選挙が大きな山場
  ケネディー大使が普天間や県民の訴えを聞き、踏み込んだ打開策を提示できるだろうか。 1月の名護市長選が大きな辺野古代替案の是非を問う重大な局面になってきた。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。