絶対多数が武器…独断的な自民党の危うさ

ジャーナリスト 池田龍夫 2014.1.8
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  安倍晋三首相の強引な国会運営は目に余る。昨年の参院選で圧勝した結果、国会のねじれ′サ象が解消。 両院で絶対多数を握った自公両党は、特定秘密法案強行可決などの独断的姿勢を見せ付けた。 国会論議を軽視した独善的姿勢は度を越しており、国民からの批判が高まってきた。

  「国民が主人公」 の民主主義を賑やかに
  年末・年始の各紙社説は 「国のかたち」 に関するものばかりで、特に強権的安倍政権への批判が目立った。 北海道新聞は元日から連続して 「憲法から考える」 との社説を掲げており、琉球新報や沖縄タイムスも 「沖縄と本土の認識のズレ」 に警告を発していた。 朝日、毎日、東京3紙は時代状況を危惧して問題点を指摘し続けており、元日付朝日、毎日社説は民主主義の価値を論じ、 市民の異議申し立て≠ナ民主主義を賑やかなものにし、選挙や国会頼りでなく、底辺の 「枝葉」 を活性化させようと主張していた。 「国民が主人公」 の政治を実現する民主主義の根幹だからである。
  異色の社説は、「日本浮上へ総力を結集せよ」(読売元日付) 「国守り抜く決意と能力を」(産経元日付)で、 日米同盟の強化と集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の変更」 などの主張を展開していた。

  自民党の得票率はかなり低い
  2012年12月16日に行われた衆院選挙の結果、自民党は294議席(改選前119)を獲得し、単独で絶対安定多数(269議席)を確保。 これに公明党の31議席を加え、衆院再可決が可能な議席も確保した(民主党は改選前の230議席から57議席と惨敗)。
  そもそも自民党は小選挙区制の恩恵≠受けて当選議員を増やしたのに、多くの国民に支持されたと誤解している。 2012年衆院選での得票率は、比例代表27%、小選挙区43%に過ぎなかった。 膨大な 「死に票」 を生む小選挙区比例代表制の悪例である。 昨年3月総務省が明らかにした数字によると、一昨年の総選挙で落選者の獲得した得票総数は53・06%で、当選者のそれを上回っている。 死に票が50%以上の選挙区が6割の188に及び、長野3区や東京1区では死に票率70%を超えた。(参院選の死に票℃Z出は難しい)

  「一票の格差」 是正に真剣に取り組め
  各党の得票数を精査すれば、自民党支持は5割を下回っていることが明白。もちろん 「51対49」 でも多数決に違いないものの、 このようなケースの累積が多すぎる自民党議員を生み出したと分析できるのだ。 この冷厳な事実を自民党は謙虚に受け止め、慎重な国会運営に臨んでいるとは、とても思えない。 「絶対多数」 で押しまくる驕りが、最近の国会運営で目立つ。
  国会は公正な選挙で選ばれた議員が、国民のために熟議する場である。 少数党の批判・意見にじっくり耳を傾け、民意を幅広く採り入れた法案づくりこそ肝要。 一票の格差を司法に相次ぎ断罪されても、選挙無効でなければ受け流す。 ――「三権分立とはどこ吹く風=v と、是正策を示さない国会の怠慢も許せない。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。