原発再稼働どころか、核燃料サイクル計画も破綻

ジャーナリスト 池田龍夫 2014.2.26
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  安倍晋三政権は9月25日、国の長中期的な 「エネルギー基本計画」 の原案をまとめた。@ 原発を 「重要なベースロード電源」 と位置づけ、 原子力規制委員会の規制基準に適合した原発再稼働を認める A 核燃料サイクルは、再処理ややプルサーマルなどを推進する  B 高速増殖炉 「もんじゅ」 研究計画に示された研究成果の取りまとめを目指し、実施体制の再整備などを検討する――等々の基本方針を明示している。

  「原発は重要なベースロード電源」 と位置づけ
  素案では、原発を 「基盤となる重要なベース電源」 としていたが、与党内の慎重論や 「脱原発」 の世論をかわすため 「基礎となる」 の文言を削除。 「重要なベースロード電源」 との表現に変えているが、原発再稼働推進の方針に変わりない。
  もんじゅは1995年の運転開始直後からトラブル続きでほとんど運転できず、福島第一原発事故後には、約1万件の機器点検漏れが発覚。 原子力規制委は放置できないとして、運転停止命令を出したほどだ。

  核燃料増殖のカラクリ
  増殖炉のカラクリは特に分かりにくいので、技術的コメントを借用(『知恵蔵』)して問題点を探ってみたい。
  「天然ウランの99.3パーセントを占めるウラン238は核分裂を起こしにくく、そのままでは核燃料として使えないが、 中性子を吸収すると核分裂するプルトニウム239になる。高速増殖炉は、炉内で発生する中性子を減速せず 『高速』 のまま使うことによって、 MOX燃料に含まれる燃えないウラン238を燃えるプルトニウム239に変え、燃料を増殖させる。 もんじゅの場合、消費する燃料の約 1.2倍の燃料を増殖できる。 高速増殖炉は、原発の使用済み燃料から回収したプルトニウムを燃料として再利用する核燃料サイクルの中核を担う技術として実用化が期待されているが、 ウランよりも放射能毒性が高く核兵器の原料にもなるプルトニウムを燃料として使用することや、 冷却材として用いる液体金属の取り扱いが難しいことなどから、実現を疑問視する見方もある。 米国・英国・ドイツなどはすでに開発を断念している」――。

  政府は夢≠捨てきれず
  毎日新聞2月22日付朝刊は、「自民党内でも増殖炉機能の棚上げを求める意見が出ている。 しかし、政府のエネルギー基本計画案によると 『これまでの取り組み反省や検証を踏まえ、徹底的な改革』 を前提に 『もんじゅ研究計画に示された研究成果を取りまとめることを目指す』 と、現状維持の方向性が示された。 (中略)これまでにもんじゅに投じられた国費は約1兆円に上る」 と指摘したが、かつて安全神話に支えられた夢のような 増殖炉計画の破綻を暗示しているように思える。
  この計画は使用済み核燃料処理とも密接に関連する問題で、プルトニウムを増殖炉で再利用しようとの遠大なものである。 石油に続きウラン資源の枯渇も指摘されている折、期待が大きかったことは確かだろう。 先進各国が挑んだことは理解できなくはないが、技術的に超えられない壁は厚い。 フランスはまだこだわっているようだが、米英独が開発を断念した背景の深刻さを感じる。 果たして日本の増殖炉政策推進に問題点はないのか、もっと厳密に再検証すべきである。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。