こどもたちは見ている
―教育基本法改正反対を訴え、8000人が参加―


    教育基本法案をめぐって与野党の攻防が強まる中、東京で12日、「教育基本法の改悪をとめよう! 11.12全国集会」 が行われ、集まった8000人が改悪反対を熱く訴えた。 日比谷野外音楽堂 (千代田区) で行われたこの全国集会は 「教育基本法の改悪をとめよう! 全国連絡会」(www.kyokiren.net) が主催し、今回で7回目を迎えた。 集会では様々な立場の人が発言し、会場に入りきれない人が立ちながら見守るなど、参加者の熱気でつつまれた。




大内裕和さん
  まず、呼びかけ人の大内裕和さん (松山大学) は、「教育基本法改悪と格差社会」 をテーマに、「教育基本法の改悪は学校への市場原理導入につながり 、競争原理に基づいたふりわけが小さいときから行われる」 と話し、教育バウチャー制度や来年度から実施予定の全国学力テストの問題点を指摘した。 また、学校での格差と労働での格差の関連を示して 「若者は労働の現場で低賃金・無権利・不安定な状態に置かれており、 現在必要なのは規範意識や奉仕活動などではなく労働組合の結成だ」 と訴えた。




  次に、首都圏青年ユニオンの伊藤和巳さんが、「様々な矛盾に苦しめられながら働いているが、苦しみの中で学ぶこともある」 「人間として生活し働き続けられるように労働組合活動を続けていきたい」 と語った。
  呼びかけ人の二人目、高橋哲哉さん (東京大学) は教育基本法制定に寄与した南原繁が、「今後、いかなる反動の嵐の時代が来ようとも、何人も、 教育基本法の精神を根本的に書き換えることはできないであろう。なぜならそれは真理であり、 これを変えることは歴史の流れをせき止めることに等しい」 と語った言葉を紹介し、「歴史の流れが私たちの方にあることを信じて、改悪阻止に力を尽くそう」 と訴えた。

高橋哲哉さん

  埼玉県の高校生は、「小さいときから戦争に対する不安感があった」 「知らないということはとても怖い」と自分の言葉で語り、「周りの友人にこの問題を伝えて、 一緒に考えていきたい」 と話した。


三宅晶子さん
  呼びかけ人の三人目、三宅晶子さん (千葉大学) はドイツの教科書に出てくる 「抵抗の階段」 を例にして、「抵抗の一番低い階段は同調しないこと。 この一週間できるかぎりの良心と勇気をもって行動すれば教育基本法の改悪はとまる。人間の尊厳をかけて闘っている全国の仲間を信じて山場を乗り切ろう。 そして、みんなで自由の平野を見に行こう」 と話した。

  先の9月21日の東京地裁で、日の丸・君が代の強制を命じた職務命令は教育基本法10条の 「不当な支配」 にあたるとして、 教職員に対する処分を違法とした裁判の原告・近藤徹さんは、「この判決が教育基本法改悪を阻止するために闘っている人たちを励まし勇気と確信を与えた」 「教育基本法改悪を誘導するためタウンミーティングでやらせ質問をした政府・文科省こそ規範意識がない」として、 「子どもたちを再び戦場に送らない決意を胸に廃案に追い込もう」 と訴えた。

9月21日の東京地裁判決の原告たち


小森陽一さん
  呼びかけ人の最後、小森陽一さん (東京大学) は12日付けの毎日新聞が拙速な改正をやめるよう社説で主張したことを紹介して、 「私たちの草の根の運動が今マスメディアを動かしている」 「学習指導要領未履修問題やタウンミーティングやらせ質問での文科省の対応を見て、 世論は改悪反対に変わってきている」 と話すと、会場は大きな拍手で包まれた。

  またこの日の集会では、派手な衣装で教育基本法の改悪反対を訴えるパフォーマンスを行うなど、多様な手段で改悪反対を表現していた。





  集会終了後行われたデモ・パレードで、参加者たちは 「戦争に送るために子どもを産んだのではない」 「教育の自由と平等を守ろう」 「戦争をする国家を目指す教育基本法改悪を阻止しよう」 と訴えながら、2.5kmを軽快な音楽を交えるなどして歩いた。

  こどもたちは見ている。この日の集会広報ポスターに書かれていた言葉だ。そう、現在そして未来の子どもたちが、今私たちがいかに行動するか見ている。 彼らとともにこれからどのような社会を作っていくのかが過去に子どもであった現在の大人たちに問われているのだ。 【松井皇甫豊】