「憲法改正国民投票法案」に反対する決議

青森県弁護士会

  憲法の改正手続きを定める 「日本国憲法の改正手続に関する法律案」 (いわゆる 「国民投票法案」) は、4月12日の衆議院憲法調査特別委員会、 翌13日の衆議院本会議でそれぞれ可決され、参議院に送られることとなった。

  国民投票法案は、国民が、主権者として、国の最高法規である憲法改正案を承認するかどうかの意思を表明する憲法改正国民投票の手続を定めるものではあるが、 単なる手続法案ではなく、その内容をどのように定めるかは、国民投票の結果に重大な影響を及ぼすものである。 そのため、その衆議院での審議には慎重な審議を求める声が多くの国民から寄せられていたのである。 しかるに、衆議院こおいて、中央公聴会が2回、地方公聴会が新潟、大阪で開かれただけで、 主権者である国民の広い意見をふまえた慎重かつ十分な審議がなされないまま、与党により強行採決されたことは極めて遺憾である。

 そして、衆議院における議論を経ても、衆議院で可決された 「日本国憲法の改正手続に関する法律案」 には、 日本弁護士連合会などが指摘をしてきた多くの問題点が解消されていない。

  すなわち、@最低投票率を定める規定が置かれていない。そのため、少数の賛成により憲法改正がなされるおそれがある。 A法案では、公務員・教育者について、刑事罰を科す規定は除かれたものの、「地位を利用」 した運動が規制されているのは、 公務員・教育者の意思表明を制約するとともに、萎縮効果を及ぼすことになり、表現の自由に対する不当な制約である。 B改正案の発議について 「内容において関連するごと」 とされているが、投票行為を通じて国民の意思が正確に反映されるためには、 一括投票ではなく、条文ごとの個別投票が原則とされなければならない。 法案では、どのような組み合わせになるのかの基準も曖昧であり、国民の意思を尊重するという憲法の趣旨に合致しないものである。 C法案は、憲法改正を発議した日から60日以後180日以内の日を投票日とするとしている。 投票にあたっては、国民が十分に情報の提供を受け、理解し、議論し、運動し、意見交換する機会が保障されなければならないが、 法案の定める期間では国民が意見を形成する時間として十分とは言い難い。 D 「国民投票広報協議会」 の構成が所属議員の比率により選任されるため、憲法改正を 「良し」 とするメンバーが多数を占めることから、 国民に対して反対意見が十分に広報されないおそれが強い。

  以上指摘しただけでも、今回衆議院を通過した法案には、極めて重大な問題点が存することは明らかである。

  この間題点について、参議院において根本的な修正がなされない限り、「国民投票法案」 の制定に反対する。

                  2007年 (平成19年) 4月21日
青森県弁護士会