憲法改正国民投票法案の強行採決に対する抗議及び慎重審議を求める声明
長崎県弁護士会
政府与党は,2007年4月13日,衆議院本会議において 「日本国憲法の改正手続に関する法律」 案 (以下「法律案」 という。) を,野党の反対を押し切って強行採決した。
憲法は国家の根本規範であるから,その改正手続を定める国民投票に関する法律案についても,国民的合意形成が不可欠であるにも拘らず,
政府与党の単独強行採決が行われたことは,国民不在の暴挙と言わざるを得ない。
我々はこのことについて強く抗議するものである。
加えて法律案には以下のとおりの重大な問題点が含まれている。
1. 国民投票は,国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以降180日以内の国会が発議した期日に行われる。
然しながら,このような短期間では国民が十分な議論を行うには不十分であり,国民の意思が十分に反映されない可能性がある。
2. 法律案には「前条の憲法改正原案の発議にあたっては,内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする」とあるが,
憲法の各条項は,互いに密接な関連を有するのであるから「内容において関連する事項ごとに区分」することが恣意的に行われた場合,
憲法改正の論点ごとへの国民の意思が正確に反映されないこととなる。
3. 法律案は,賛成及び反対の投票数をあわせたものを投票総数とし,「投票総数の2分の 1を超えた場合」を可決の要件としており,最低得票数の定めがない。
そのため投票率が低く,白票等の無効票が多い場合には極端に少数の国民の意見により憲法改正承認がなされる可能性がある。
4. 公務員及び教育者の地位利用による国民投票運動は禁止されている。
然しながら地位利用という要件は極めて不明確であり,罰則はないものの,国民が広く憲法改正へ向けての討論をすることについて萎縮効果を与える結果になりかねない。
以上のような問題を包含する法律案であるので,参議院においては十分な時間をかけ,広く国民の意見を聴くなど,慎重審議がなされることを強く望むものである。
2007 (平成19) 年4月25日
長崎県弁護士会
会長 山下俊夫