公安情報流出事件
─原告の人たちはなぜ裁判を起こすのか─裁判の意義

2011.5.16 弁護団 梓澤 和幸


記者会見 2011.5.16

1  これは、全国29万1475人の警察官、首都4万3156人の警察官をそれぞれ指揮統制下に置く警察庁と警視庁による人権侵害である。 日本と首都の最大最強の公権力のあり方が問われている。しかも、宗教を信ずること、祈りを捧げることは、個人の内面奥深くの精神活動であって、 これほどの公権力が個人の内面に立ち入り、その尊厳を蹂躙した事例は類例がない。

2  テロ捜査の口実で、東京都では1万2677人のイスラム教徒(89%)、全国では7万2000人のイスラム教徒(出身国の98%)の信者の氏名と住所が特定され、 データ化された。加えて、外国人の相談にのる団体、難民支援の会、政府系の援助団体、中東各国の大使館も監視の対象に置かれ、 リスト化されている。イスラム教徒全体が監視の下に置かれ、少しでも関連があれば、この市民社会全体が警察の監視の下に置かれていることがはっきりした。

3  警察庁長官、警視総監からは被害者に対し、謝罪の動きはなく、 また市民社会に対してもイスラム教徒と市民社会への監視をやめるという率直な表明はない。

4  3月11日、大震災、原発人災以降従来の政治と社会の根本が問われ、この社会と自分の生き方を深く考える傾向が広がっている。 本件のように公権力が違和感を感ずればすぐに全面的に警察の監視のもとにおくことが放置されてはならない。 困難を承知で立ち上がる人々がおられること、その人々に連帯する青年法律家がいることは希望である。 裁判所が侵害された人権の回復と加害者の責任を明らかにする良心に基づく判断をされることを期待したい。