波乱含みの 「大飯原発再稼働」 問題
ジャーナリスト 池田龍夫 2012.2.22
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  「大飯原発3・4号機の再稼働に待った!」 をスローガンに、参議院議員会館講堂で2月20日午後1時から、緊急院内集会が開かれた。 環境保護団体 「FоE Japan」 と 「福島老朽原発を考える会」 主催で、全国の市民団体や一般参加者が多数集まり、 衆・参国会議員を交えての大集会となった。

  事故調査委員会の論議は紛糾
  「大飯原発再稼働」 の問題点について、後藤政志・芝浦工大非常勤講師(元東芝技術者)、井野博満・東大名誉教授(金属材料工学)が講演。 両氏は耐震設計の不備、原子炉構造の脆弱性など問題点を具体的に指摘し、「先に発表された原発ストレステストには疑問点が多く、 再稼働など認められない」 と熱っぽく訴えた。国会での 「事故調査委員会」 に対する提言も含めたコメントは適切で説得力があった。

  両氏は講演のあと退席、通産省で開かれた原子力安全・保安院の 「安全評価意見聴取会」 に臨んだ。 前回の意見聴取会は議論半ばで打ち切られ、大飯3、4号機の第一次ストレステストを 「妥当」 とする審査書をまとめたものの、最終合意に至っていない。

  「院内集会」 を伝えない新聞の無関心さに驚く
  参院議員会館での後藤、井野両氏が列挙した問題点は極めて重大な意味を持つと感じたが、21日付朝刊に詳報したのは、東京新聞 「特報面」 だけ。 朝日新聞第3社会面ベタ扱い以外には掲載もされなかった。政府・原子力安全委員会側に、4月の 「原子力規制庁」 発足を前に、 「大飯原発再稼働」 への道筋をつけておきたいとの思惑が推測されていた時期だけに、メディアが厳しく監視する責務は重い。 取材に最適な場所だったのに、「院内集会」 を無視するようなメディア側の姿勢は全く理解できない。 「国会論戦」 だけ伝えて事足れり≠ニする問題意識の欠如が感じられ、情けない気持ちになった。

  国会議員47人が 「再稼働急ぐな」 との文書提出
  また、この会合ではもう一つ重大な提案があった。市民団体の呼びかけに応じた国会議員47人が 「原発再稼働に当たっては、 事故原因を客観的・徹底的に究明しようとしている、国会の福島原発事故調査委員会の調査・結論を待つべきだ」 との文書をまとめ、 内閣府と通産省からの出席者に手渡した。福島瑞穂、川内博史、穀田恵二、照屋寛徳、馬渕澄夫議員らが署名した文書。 超党派≠フ動きであり、今後賛同者の拡大を目指すという。 再稼働の是非≠ノつながる問題提起を、新聞各紙はなぜ報じないのか、これまた理解に苦しむ。

  斑目春樹・原子力安全委員会委員長は20日の記者会見で、ストレステストについて 「安全性を高めるための資料として、 一次評価では不十分だ」 との慎重姿勢を表明した。これに対し、藤村修官房長官は 「斑目氏の発言が再稼働の妨げにはならない」 と釈明しているが、 再稼働論議の行方は、波乱含みである。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。