沖縄に新たな難題……オスプレイの直接配備
ジャーナリスト 池田龍夫 2012.5.15
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  普天間飛行場に新たな問題が浮上、沖縄県民の怒りが高まっている。日米両政府は、米軍・新型輸送機MV22オスプレイ12機を、 7月中旬に配備することを決定した。試験飛行や安全点検を実施したうえで、10月に普天間飛行場(宜野湾市)に実戦配備する方針という。

  事故続発の欠陥機
  両政府は当初、沖縄の地元感情に配慮し、本州に一時駐機させた後に普天間に配備することで大筋合意。 キャンプ富士(静岡県)、岩国基地(山口県)などを候補としていたが、地元自治体の反対によって計画を断念、沖縄直接配備に切り替えてしまった。
  そもそもオスプレイは開発段階から墜落事故を繰り返し、危険性が指摘されてきた。先月もモロッコで4人が死傷する墜落事故を起こしたばかりで、 欠陥機≠ニすら酷評されている。

  沖縄県知事・那覇市長も猛反発
  那覇軍港に持ち込まれて組み立て作業するとの決定に、翁長雄志・那覇市長は猛反発。 「人口密集地の那覇周辺で試験飛行するとは、もってのほか」 と厳しく抗議している。 仲井真弘多・沖縄県知事も11日に上京した際、「普天間飛行場は宜野湾市のど真ん中にある。 オスプレイは開発期間中にいくつかの死亡事故を起こし、最近も運用トラブルがあった。 人の良い沖縄県民でも分かりましたとは言えない」 と述べ、さらに「本当に安全な機種なら、日比谷公園か、新宿御苑みたいな所に持って来られるのか。 いくら同盟関係にあっても非常に無理がある」 と語気鋭く記者団に語っていた。
  仲井真知事は9日の記者会見でも、「米軍基地と自衛隊基地の違いを、本土の人は分かっておられない。 米軍基地は、基本的に日本の法律を守らなくてもいい。これを県民は40年以上も味わってきた。 沖縄が言い過ぎだと思っているなら、この違いを認識してほしい」 と訴えていたが、沖縄差別≠ヨの強い怒りと受け止めたい。

  日米安保体制が揺らぐ恐れ
  琉球新報5月13日付社説は、不条理なオスプレイ配備決定に、両首長と同様の問題点を指摘。 「オスプレイが安全とする科学的根拠を示さないまま、県民の意向を一切無視して配備を強行しようとする。 日米両国が掲げる民主主義や人権尊重が、それこそ聞いてあきれる。このままでは米軍基地の安定的運用が困難となり、 日米安全保障体制が大きく揺らぐのは目に見えている。普天間飛行場への配備計画そのものを即刻、撤回すべきである」 と主張していた。
  平板な取り上げ方しかしていない本土各紙に比べ、米軍基地重圧に悩む沖縄県民の怒りを痛感させられた。 それだけに、「オスプレイ問題」 の処理を誤れば、一大事になる可能性を孕んでいる。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。