厚木基地で、オスプレイ飛行訓練とは…
ジャーナリスト 池田龍夫 2012.11.7
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  米軍の計画に従っていれば、日本の空は安全というのだろうか。沖縄での垂直離着陸陸輸送機オスプレイの飛行訓練が問題化している折、 本土での訓練計画に厚木基地(神奈川県)を加えることが明らかになった。 キャンプ富士(静岡県)、岩国(山口県)などを使って今月中に実施すると日本側に通告していたが、その中に厚木基地も含まれていたという。
  毎日新聞11月5日付夕刊だけが1面トップに報じた情報で、「米計画に明記」 と記している。

  母港・横須賀―厚木基地に頻繁に飛来する米軍機
  厚木市は人口20万人を超す大都市。厚木基地に飛来する米軍機の大部分は、横須賀を事実上の母港とする。 艦載機は通常、空母が横須賀に入港する前に洋上から大挙して厚木基地に飛来し、出港後洋上の空母に帰還している。 艦載機の騒音で生活環境は極度に悪化、市民の反発は年毎に高まっている。
  1977年9月27日13時過ぎ、ファントム墜落事故を思い出す。離陸直後にエンジン火災を起こし、乗員2名は緊急脱出したが、住宅地に墜落。 周辺の家屋を炎上。市民9名が負傷、うち3歳と1歳の男児2名の兄弟が全身火傷で死亡した大事故である。
  全国の基地の中で最も危険性の高い厚木基地。森元敏防衛相が11月2日の全国知事会で厚木でのオスプレイ訓練に言及しなかったのは、 「突然公表すれば、地元の強い反発を招くため、控えたのではないか」 と勘ぐる向きもある。

  米軍に物申せぬ政府の弱腰が悲しい
  オスプレイの飛行訓練に関し、米軍は反発を警戒して計画を小出し≠ノしている印象を受ける。 今回のことも同じで、米軍の常套手段だ。政府は、米側の強引なやり方に何故異議を示さないのか。抗議どころか、追従の姿勢が悲しい。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。