大飯原発の活断層調査難航、
「新安全基準」 来年に持ち越し
ジャーナリスト 池田龍夫 2012.11.26
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  国内で唯一稼動中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)直下の活断層の可能性について、 原子力規制委員会の調査団が11月2日に現地調査。4日と7日も調査して協議したが、結論に至らなかった。

  活断層調査で規制委委員会の意見も真っ二つ
  国の基準では活断層上に原発関連施設を作れないが、関電は独自調査で 「地層のずれは、地滑りによるもの」 などとしていた。 これに対し、規制委は関電が掘ったトレンチ(溝)のボーリング調査し、「地層のずれは12万5000年前以降のものと確認した。 しかし、規制委内部でも、その解釈で対立。渡辺満久・東洋大教授は 「原発の最重要施設の直下に活断層が存在する。走る方向も傾斜も同じ。 すぐに原発を止めて調査すべきだ」 と警告している。岡田篤正・立命館大教授は 「地形などから地滑り的に見える。 局地的な現象だけで結論づけるのは危険」 と反論、規制委内部の真っ向対立が気がかりだ。

  「濃いグレーなら、原発停止」 と言うが……
  このため規制委は11月22日、関電に追加調査を指示した。月内に再調査を始めるが、当初年内としていた最終報告は大幅にずれ込むことになった。 関電の再調査が出たところで、規制委はこれを鵜呑みにするわけにはいかず、独自調査しなければならない。
  田中俊一・規制委員長は 「黒や濃いグレーなら運転停止を求める」 と明言しているが、規制委が 「新安全基準」 を早急に公表できるか、心許ない。

  今後のボーリング調査も大変
  今後、具体的には、@ 敷地内北側のトレンチの幅を南に5メートル程度広げ、長さを東西に計40メートル余り延ばす  A 延長後の同トレンチの周辺13カ所でボーリング B 山頂トレンチを北に延長し、北側4カ所でボーリング調査――を実施し、 破砕帯の広がりの範囲や、地層の滑りと破砕帯との連動の可能性を確認するというが、日時を要する難作業となろう。

  これでは 「暫定基準」 によって再稼動させた大飯原発2基は、来年も稼動し続ける。規制委は、この難局を来年中に乗り越えられるだろうか。 「脱原発依存」 の社会的ウネリは日ごとに高まってきており、近づく総選挙の重要争点にもなってきた。

  毎日新聞11月25日付社説が 「追加調査をするにしても、運転を止めてから行うのが筋だろう。 規制委は稼動停止を関電に要請すべきだ」 と主張していた通りである。

  「脱原発」 の方針を鮮明にせよ
  野田佳彦政権は 「30年代に原発ゼロ」 政策を打ち出したものの、その後の実行を逡巡している姿勢は不可解だ。 政府は、規制委に難題を押し付けるだけでなく、「脱原発」 の方針を堂々と明示すべきではないか。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。