嘉手納基地へ 「オスプレイ」 配備計画に驚く
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.1.11
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  垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの沖縄への配備は、その後どうなっているだろうか。衆院選挙、安倍晋三内閣誕生などの政局報道に目を奪われて、 本土紙を見る限り進捗状況がよく分からない。
  普天間基地に12機配備されたオスプレイは、沖縄を縦横無尽に飛び、伊江島などは飛行回数・時間が増えて県民は騒音被害に苦しんでいるという。

  県民の不安が解消されていないのに…
  中国封じ込めのため、米軍は空軍兵力の増強に力を注いでおり、今度は嘉手納基地へのオスプレイ配備を日本側に伝えてきた。 仲井真弘多知事は 「オスプレイに対する県民の不安は全く解消されていない。 日米合同委員会で確認した事項も全然守られていない」 と怒りをあらわにしている。嘉手納町議会は1月11日に臨時議会を開き抗議決議するという。

  冷戦時代を思わせる米軍の機能強化
  沖縄タイムス1月10日付社説は、「軍事基地をめぐる最近の沖縄の動きは尋常でない。 負担軽減とは名ばかりで、冷戦時代を思わせる機能強化策が次々に表面化している。 オスプレイの嘉手納基地配備計画によると、嘉手納基地の第353特殊作戦群に2015米会計年度(14年10月〜15年9月)に5機、 16会計年度までにさらに4機を配備する予定だ。一方、 普天間飛行場には海兵隊のオスプレイを既に12機配備、夏には12機が追加配備される。 空軍の配備を含めると、30機超のオスプレイが配備されることになる。 那覇基地に配備されているF15飛行隊をさらにもう1つ飛行隊を増やし、戦闘機部隊を拡充強化する計画もある。 沖縄県民の平和的生存権が脅かされているというのに、政府は何一つ有効な手だてを打てず、全国紙の報道もいたって冷淡だ。 沖縄で顕著なのは、負担軽減ではなく、中国をにらんだ軍事要塞化の動きである。 冷戦後、沖縄がこれほど軍事緊張に包まれたことはない」 と 米軍基地拡充の悩みを強調している。

  米兵の乱暴狼藉は相変わらず
  沖縄県と市町村が昨年10月から11月末まで実施したオスプレイの目視調査では、確認された518件のうち、 61・5%に当たる318件が運用ルールに違反していたという。 また、夜間外出禁止令が出ているにもかかわらず、米兵の飲酒行動は続き、民間住宅への侵入事件が相次いでいることは、 治外法権の占領下と違いない様相だ。

  「沖縄差別解消なくして、日本再生はない」
  こんなイビツな沖縄の現状を何時まで放置するのだろうか。安倍政権の争点ずらしは目に余るが、東日本大震災復興と同様に、 「沖縄差別の解消なくして、日本の再生はない」 との決意で、対米折衝を進めてもらいたい。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。