「再生可能エネルギー」 への取り組みが鈍化
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.4.24
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  民間の有識者団体 「エネルギー・原子力政策懇談会」(会長・有馬朗人元東大学長)の有志が2月25日、 安倍晋三首相と茂木敏充経済産業相に 「緊急提言 責任ある原子力政策の再稼働」 との案を提出した。 「原発の必要性は自明で、再稼働を図るべきだ。同時に核廃棄物処理、再利用システム(核燃サイクル)の実用化を急ぐ必要がある」 などの内容も盛り込まれている。

  安倍政権になり、熱が冷めた?
  毎日新聞4月21日付朝刊によると、「エネ庁内部は2年前には 『福島事故を機に核燃再サイクルを改革しよう』 との熱気があったが、 安部政権誕生後急速に熱が冷めてしまった」 と、民主党政権瓦解後の急変を指摘していた。 原発推進≠掲げた安部政権の圧力を感じさせる動きではないか。

  「発送分離」 問題も進まず
  そう言えば、「再生可能エネルギー」 に関するニュースに関してのメディア報道がひと頃より萎んできたように思う。 太陽光や風力、その他潮力にせよ各企業は効率化を目指して努力しているはずだが、そのニュースの欠落が目立つ。 発送分離問題も喫緊の課題なのに、先送りされてしまった感が深い。原発再稼働がどの程度認可されるのか、推測できないが、 代替エネルギー開発のテンポを緩めてはならない。

  イスラエルでは、8割もの建物に太陽光パネル
  あれこれ考えていたところ、毎日新聞4月15日付朝刊コラム 「発信箱」 の一文を思い出した。 最近エルサレム特派員で赴任した女性記者からの報告だ。「イスラエルでは、建物の8割以上に太陽光パネルが設置され、 台所や風呂で使う温水を作っている。これとは別に、電気で温める装置もあり、曇りの日などはあらかじめ数時間前にスイッチを入れておけば、 足りない分を補える」 という。さらに 「資源の乏しいイスラエルは太陽光発電のパイオニアで、60年代から始めている。 中東の石油危機をきっかけに、80年代にはほぼ全ての新築建物にパネル設置を義務づけた。 太陽光発電の量は、現時点では需要の4%ほどだが、2020年までに10%達成を目指す」 というから、まさに国家的プロジェクトである。
  日本より小国で資源に恵まれないイスラエルの知恵に学ぶことは多い。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。