原発輸出などもってのほか
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.6.13
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  6月7日の日仏首脳会談で、「原発をさらに推進するため、協力を強化する」 方針で一致した。 フランスと日本は、米国に次ぐ世界第2位、第3位の原発保有国である。2年前の福島第一原発事故の後始末が遅々として進まないのに、 積極推進≠フ声に驚かされた。
  安倍晋三首相は記者会見で 「世界の安全水準を一層高める観点から、日本の原子力技術への期待に応えていく。 日仏は世界最高のパートナーだ」 と誇らしげに述べた。

  日仏、核燃料サイクル推進でも一致
  朝日新聞8日付朝刊によると、「日仏の技術を合わせて、安全で廃棄物の少ない炉を共同開発することが世界への貢献につながる」 との認識で一致したという。
  安倍政権は民主党の脱原発政策を白紙に戻し、原発再稼働に積極的だ。 日仏覚書には 「使用済み核燃料を再び燃料として使えるようにする核燃料サイクル関連施設の技術協力を深める」 とも明記されている。 日本では核燃料サイクル実施に懸命だが、未だにトラブル続きで実現の見通しはまったくない。 これに対しても首相は 「我が国には高い技術がある」 となお未練を持っている。

  安倍内閣の成長戦略の一環
  さらに、日仏両国が原発輸出に積極姿勢を見せていることが心配だ。原発を成長戦略の一環に掲げた安部政権は、原発輸出にも積極的で、 中東諸国と原子力協定を結び、インドとも協定交渉を加速させている。
  毎日新聞9日付社説は、「廃炉や除染の日仏協力は歓迎だ。しかし原発輸出や核燃料サイクルはどうだろう。原発事故はまだ収束しておらず、 原因究明も終わっていない。そんな状況で首相は、原発などインフラ輸出を成長戦略の柱に据えた。 今月中には 「東欧を訪れてトップセールスを行う予定だ」 と述べている。

  米国では三菱重工製の機器に欠陥、2基を廃炉
  一方、米カリフォルニア州のサンオノフレ原発を運営する電力会社サザン・カリフォルニア・エジソン( SCE)は6月7日、2、3号機の廃炉を決めた (1号機は既に廃炉)。
  東京新聞8日付朝刊が報じたもので、異常のあった蒸気発生器を製造した三菱重工側と、保険の適用を含め損害賠償について協議する方針を明らかにした。 蒸気発生器は2009〜10年に交換されたばかりだったが、配管に多数の磨耗が見つかり、1年半も運転停止していたという。

  再稼働のメドが立たない上、住民の反対運動が強まってきたため、廃炉に踏み切ったという。米国では最大104基の原発が稼働していたが、 「シェールガス革命」 の影響もあって、原発依存からの脱却の動きが高まっている。
  いずれにせよ、安全性が万全でない原発を、開発途上国に輸出していいのか危惧される。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。