12年度版 「エネルギー白書」 の欺瞞
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.6.21
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  政府は6月14日、2012年度版 「エネルギー白書」 を発表したが、民主党政権が昨年進めようとした 「30年代に原発ゼロ」 の方針には触れないばかりか、 昨年8月に同政府が実施した 「討論型世論調査」 で原発ゼロ派が多数を占めた結果も記載していない。
  12年度版は昨年8月〜今年3月を対象にしたものなのに、「脱原発」 の世論を無視した白書には同意できない。 朝日新聞6月16日付社説は、「福島の事故は、国民の間に政治や行政への深刻な不信を招いた。どうしたら政策への理解が得られるか。 模索の中から生まれたのが、審議会の全面公開による検証、そして討論型世論調査などを含む国民的議論だった。 『原発ゼロ』 はこうして導かれた結果であり、エネルギー行政の軌跡を記録するうえで不可欠だ。 ここに目を向けない白書には、失望するしかない」 と批判している。
  経産省エネルギー庁が、安倍政権の顔色をうかがって、原発問題≠フ中身を変えてしまった 「12年度版白書」 は公正を欠く。 国民は、この欺瞞に騙まされてはならない。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。