菅元首相が、安倍現首相を名誉毀損で訴え
海水注入の是非をめぐって
ジャーナリスト 池田龍夫 2013.7.19
目次

  安倍晋三首相が野党時代のメールマガジン(2011年5月20日付)に、「菅直人首相(当時)の海水注入指示はでっち上げ」 と記載したことについて、 菅元首相は7月16日、ネット選挙が始まった今もなお、掲載し続けていることに激怒。 「海水注入の中断を指示した事実は存在しない」 と、記述の削減と謝罪、約1000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

  その背景を掘り起こすべきだ
  菅氏側によると、安倍氏側に記事の訂正と謝罪を求めていたが、全く応じないため止む無く提訴に踏み切ったという。 「元首相が、現首相を訴える」 とは前代未聞の一大事だ。各紙の報道は目立たず、事の真相に迫る背景説明が欠けていた。 事故当時の3月11日から数日間の記録が散逸しているため事実関係の再検証は難しいとは思うが、 改めて関係者の証言を求める作業は必要だったのではないか。

  東電本社と官邸のパイプが詰まっていた
  国会事故調査委員会の報告書には、東電と政府の情報の乱れが随所に指摘されている。 官邸に対策本部を立ち上げたが、現場への勧告・命令系統がバラバラだったという。 報告書によると、東京の東電本部が主な指令を出していたようで、官邸とのパイプが詰まっていたと指摘していた。 もしそうだとすれば、「安倍メール」 の具体的根拠は何かを明示してほしい。 インターネットの一部には、「自民党の原発推進派が仕掛けた陰謀説」 まで飛び交っているほどで、現状を放置しておけば、 ネット社会の中傷・非難合戦を加速する恐れを感じる。

  ネットでのつぶやき≠フ恐ろしさ
  いずれを是とするかの判断は、2年以上経った今ではムリかもしれないが、ネットでのつぶやき≠ノは、もっと監視の目を光らせないと、 とんでもない社会になりかねない。
  2回にわたって 「あまちゃん国家・日本」 を告発してきた理由はそこにある。日本の情報が外国に盗みとられるようでは、この国の将来は危うい。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。