汚染水対策より 「五輪招致」 を優先させるとは…

ジャーナリスト 池田龍夫 2013.9.4
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  福島第1原発からの汚染水流出は、すべてが後手後手に回り、深刻さが拡大している。 一刻も早い対策を練るため、衆院経済産業委員会では閉会中審査をすることになっていた。 ところが8月30日、「9月中旬以降に先送りすることを決めた。経産省は汚染水対策を見極めてから審議日程を決める」 と説明しているが、納得できない。
  朝日新聞8月31日付朝刊によると、「9月7日の国際オリンピック総会前に、汚染水対策委員会の審議が紛糾すれば、 2020年の東京五輪招致に影響しかねない」 との懸念が浮上したためという。 安倍晋三首相は、アベノミクス効果を引き出すため 「東京五輪」 をテコにしたいとの思惑が強烈なのだ。
  汚染水対策が焦眉の急であるにも拘わらず、安倍政権の無神経な政策は本末転倒。 国際的批判が高まっている時だけに、日本の信用はさらに失墜するに違いない。 野党も国会審議先延ばしに、最終的に同調したというから呆れる。永田町、霞ヶ関の問題意識の欠如は目にあまる。 漂流する日本政治…五輪招致に却ってマイナスとなるかもしれない。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。