「武器輸出三原則」 の歯止めが揺らぐ

ジャーナリスト 池田龍夫 2013.12.10
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  安倍晋三政権は、野党、国民の多くが猛反対していた 「特定秘密保護法」 を、12月6日深夜強行可決した。 国会審議時間わずか60時間余で質疑を打ち切っての暴挙で、その責任をめぐって混乱が続いている。 この混乱のすきを狙ったように、安倍政権は5日、「武器輸出3原則」 に代わり、新たな 「武器輸出管理原則」 策定を決め、原案を与党に提示した。
  日本の非核三原則は1967年、佐藤栄作首相によって打ち出され、歴代政権が引き継いできた。

  佐藤政権以来、歴代政権が継承してきた
  非核三原則が定められた背景に小笠原諸島さらに沖縄が本土復帰する過程があったようだ。 当時、核を 「使用しない」 ことは核不拡散条約(NPT)の交渉時からかんかんがくがく議論されており、 日本政府は核を 「使用する、しない」 については何も言わず、ただ 「持ち込まない」 にして切り抜けてきた。 ところが核積載の米艦船の日本寄港問題をきっかけに、「核を持ち込まない」 という表現は核の抑止力維持の観点から問題があるので、 三原則を修正して二・五原則とか二原則にしてしまおうという意見が出てきた。

  当時の佐藤内閣は、@ 共産圏 A 国連安保理決議により武器輸出が禁止されている国 B 国際紛争の当事国またはそのおそれのある国 ――の武器輸出を禁止。三木武夫内閣は76年、三原則以外の国にも原則、輸出禁止を決めた。 ただ米国などへの武器技術供与などは個別に官房長官談話を出して 「例外」 を設けてきたという。

  日本版NSRが 「司令塔」 に
  朝日新聞12月6日付朝刊は、「安倍政権が示した原案では 『我が国の安全保障に資する場合』 は輸出できる文言を新しく設ける。 ただ、A と B の禁止条項は維持する。
  輸出の審査・管理基準も設けるが、三木内閣の原則禁止は撤廃の方向だ。武器輸出の品目や地域が大幅に広がる可能性がある。 新原則が決まれば、輸出の可否は外交・安保政策の 『司令塔』 となる国家安全保障会議(日本版NSR)などでの協議を経て判断される」 と分析しており、 武器輸出拡大にはずみがつくのが心配だ。

  三菱重工などの動きが気懸かり
  現に三菱重工など大手企業が武器輸出促進の体制を整えており、国民の知らないうちに本格的武器輸出につながることが懸念される。 このほか、原発輸出が気になる。原発は武器そのものではないが、悪用される心配なしとしない。
  無人機開発などで各国が鎬をけずっている現状からみて、戦乱の危険性が減るどころか、巧妙な戦術に切り替えられていると考えられる。 平和主義を国是とする日本は「武器輸出三原則」の理念の堅持に立ち返るべきだ。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。