NHKの選挙報道に物申す

ジャーナリスト 池田龍夫 2014.2.12
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  東京都知事選挙は2月9日投開票が行われ、舛添要一氏が当選した。しかし、NHKの選挙報道に違和感を覚えた。
  まず、選挙速報の異常さにビックリした。午後8時投票締め切りを待ってましたとばかり、「舛添氏当確」 のニュースが流れた。 その根拠は出口調査に基づくもので、統計学的に根拠はあるようだが、投票終了直後に当確を打つとは酷すぎないか。 午後8時前に投票して帰宅した途端に当確テロップが流れるとは! 8時26分のNHKテレビによると 「開票率 0・1%。舛添氏500票、宇都宮健児氏・細川護熙氏各50票」 だった。この段階で、「舛添当確」 を速報したことに肝をつぶした人は多かったろう。
  投票率が極めて悪く、三つ巴の様相も予測されていたのだから、少なくとも投票率20〜30%くらいの段階までは速報すべきでなかったと思う。 NHKは 「勝った勝った」 と喜んでいるだろうが、清き一票に泥を塗った行為ではないか。 「そんなに急いで何処へ行く」 である。速報主義は結構だが、国民を愚弄するような予定原稿は慎んでもらいたい。
  もう一点苦情を申し上げれば、NHKは 「脱原発は争点にならない」 「各候補の意見が噛み合っていない」 などとの選挙選分析をたびたび報じていた。 有権者の中には 「原発問題こそ第一に論ずべきだ」 と思っていた人も多い。ある演説会場を覗いただけの印象で報じるのは、選挙妨害とも言えなくない。 新聞各紙は論点を整理し、社説欄で 「原発問題を論ぜよ」 と書いた社もあった。
  公共放送の在り方が厳しく問われている今、NHKは報道姿勢を正してもらいたく、物申した次第である。

(いけだ・たつお)
1930年生まれ、毎日新聞社整理本部長、中部本社編集局長などを歴任。
著書に 『新聞の虚報と誤報』 『崖っぷちの新聞』、共著に 『沖縄と日米安保』。